「ビール・ストリートの恋人たち」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|ジェイムズ・ボールドウィン

ビール・ストリートの恋人たち(ジェイムズ・ボールドウィン)

【ネタバレ有り】ビール・ストリートの恋人たち のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:ジェームズ・ボールドウィン 2019年1月に早川書房から出版

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ビール・ストリートの恋人たちの主要登場人物

アロンゾ・ハント(あろんぞ・はんと)
彫刻家志望のアフリカ系の青年。愛称は「ファニー」。

クレメンタイン・リヴァーズ(くれめんたいん・りう゛ぁーず)
デパート店員。愛称は「ティッシュ」。

シャロン(しゃろん)
ティッシュの母。

アーネスティン(あーねすてぃん)
ティッシュの姉。ソーシャルワーカー。

フランク(ふらんく)
ファニーの父。仕立て屋。

ビール・ストリートの恋人たち の簡単なあらすじ

ニューヨークのハーレムで生まれ育ったアフリカ系の青年・ファニーは、間もなく恋人・ティッシュとの間に子供を授かる予定です。幸せ一杯なカップルでしたが、突如としてファニーが婦女暴行の容疑で逮捕されて拘置所に収監されてしまいます。ティッシュは恋人の身の潔白を証明するために家族と力を合わせて奔走していきますが、人種差別や社会の不条理に苦しめられるのでした。

ビール・ストリートの恋人たち の起承転結

【起】ビール・ストリートの恋人たち のあらすじ①

ハーレムで生まれ育った恋人たち

クレメンタイン・リヴァーズは、商船の乗組員・ジョーゼフとウェイトレスのシャロンとの間にニューヨークの下町・ハーレムで生まれました。4つ年上の姉・アーネスティンや地元の友達からは、「ティッシュ」というニックネームで親しまれるようになっていきます。ティッシュが初めてハーレムの大通りで3歳年上の男の子・アロンゾ・ハントと出会ったのは、6歳くらいの時です。仕立て屋をしている父親やふたりの姉たちからは年がら年中「ファニー」と呼び掛けられているために、彼のフルネームを言える人はほとんどいません。

同じ学校に通い出したティッシュとファニーは、ある日の放課後にクラスメイトの喧嘩に巻き込まれてしまいます。

釘の突き出した棒で顔面を殴打されたファニーを心配して、ティッシュは自宅までお見舞いに行きますが思いの外軽傷で済んだようです。この小さな事件がきっかけになって、ふたりの関係性は単なる幼馴染みから恋人同士へと変わっていくのでした。

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【承】ビール・ストリートの恋人たち のあらすじ②

突如として引き裂かれるふたり

学校を卒業したティッシュはデパートの香水売り場で働き始めて、ファニーはアルバイトに励みつつ彫刻家を目指していました。

21歳になったファニーはティッシュとの結婚を彼女の両親に報告した後で、ふたりで一緒に住むロフトを探していましたがなかなか見つかりません。

1970年代のニューヨークでは、年若いアフリカ系アメリカ人のカップルが部屋を借りるのは難しいようです。

ようやくレヴィーという理解ある大家さんから、カナル・ストリートにある部屋を貸してもらえます。

新婚生活をスタートさせて暫くすると体調の異変に襲われたティッシュは、自身の妊娠に気がつきました。

順風満帆だったファニーとティッシュに突如として悲劇が訪れたのは、3月5日のことです。

ヴィクトリア・ロジャースという女性が自宅の玄関で暴行を受ける事件が発生して、犯人としてファニーが逮捕されてします。身に覚えのない容疑に対して終始一貫して否認し続けますが、拘置所に入れれてしまうのでした。

【転】ビール・ストリートの恋人たち のあらすじ③

墓場に閉じ込められたファニーを救うために

ニューヨーク市拘置所は「墓場」と呼ばれているほどの陰気な建物で、面会室にたどり着くには幅の広い廊下を幾つも通らなければなりません。

面会人は板切れのような台の前の長椅子に腰掛けて、ガラスの壁を挟んで小さな受話器を使って収監者と話すことになります。

ファニーは今のところ最上階にある独房にいましたが、間もなく階下にある雑居房に移される予定です。

ケチなこそ泥からがめつい詐欺師、不気味な薬物中毒者に凶悪な殺人犯まで。これからファニーに待ち受けている過酷な運命に、ティッシュは胸を痛めていました。

その一方で家族は一致団結して、ファニーの無罪放免を目指して動き始めます。アーネスティンは福祉施設で働いているために、弁護士の知り合いが多いです。シャロンは事件以来生まれ故郷に帰ってしまったロジャースを追って、プエルトリコにまで足を運んでいます。

ジョーゼフとファニーの父・フランクは、力を合わせて保釈金集めに奔走していくのでした。

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【結】ビール・ストリートの恋人たち のあらすじ④

幕を開ける裁判と新しく誕生する命

臨月が近づいてきたティッシュは勤め先のデパートを退職しましたが、毎日午後6時の面会だけは欠かしません。

いつものように差し入れに行くと、ファニーは雑居房で乱闘騒ぎを起こしたようで歯を1本折られて片方の目も潰されかけていました。

ロジャースがアメリカに戻ってこないために公判の日取りがなかなか決まりませんでしたが、ティッシュの出産前には何とか開廷できそうです。

ロジャースの証言は二転三転していて信憑性に乏しく、優秀な弁護士であれば崩せる見込みがあります。

不安材料としては、唯一ファニーのアリバイを証明できる人物が別の事件で逮捕されて法廷で陳述できないこと、白人の巡査が事件当夜ファニーが現場から逃走するのを見たと宣誓証言していること、裁判を担当する地方検事が人種差別主義者であること。

お腹の赤ちゃんの蹴り方が今までとは全く違っていることを感じていたティッシュは、いよいよその時が迫っていることを確信するのでした。

ビール・ストリートの恋人たち を読んだ読書感想

ニューヨークの下町で生まれ育った恋人たちに降りかかってくる、数多くの試練が痛切です。

アフリカ系アメリカ人に対する根強い差別には憤りを感じました。

この小説の時代設定は1970年代になっていますが、分断と対立が深まっていく一方の21世紀のアメリカにも繋がるものがあります。

無実の青年を救うために、ふたつの家族が力を合わせて巨大な権力や法律の壁に立ち向かっていく姿が感動的です。

果たしてファニーは無罪になるのか、それとも有罪を宣告されてしまうのか。読者自身に判断を任せるような、多くを語らないラストも印象深かったです。

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