「秒速5センチメートル」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|新海誠

秒速5センチメートル(新海誠)

【ネタバレ有り】秒速5センチメートル のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:新海誠 2016年2月にKADOKAWAから出版

秒速5センチメートルの主要登場人物

遠野貴樹(とおのたかき)
本作の主人公。東京から鹿児島に引っ越し、大学から東京に戻る。
篠原明里(しのはらあかり)
元同級生。遠野の初恋の相手。
澄田花苗(すみだかなえ)
遠野を好いている女子。中高の元同級生。
水野理紗(みずのりさ)
貴樹と3年間付き合った女性。

秒速5センチメートル の簡単なあらすじ

”あなたはきっと大丈夫”朝の電車で別れ際に、文通の相手はそう言った。きっと僕らはずっと一緒にいることはできないのだと分かってしまった。“ずっと好きだったの。今までずっとありがとう”H2Aロケットの打ち上げ成功のニュースを観たとき、その映像に映る風景に懐かしを感じた。島の空港で見慣れない私服姿の同級生は泣きながら笑顔を向けていた。離れていく恋を描く、3篇連作小説。

秒速5センチメートル の起承転結

【起】秒速5センチメートル のあらすじ①

満開の桜の思い出

「ねえ、まるで雪みたいだね」もう17年も前のことなのに明里の声が鮮明に思い出すことができます。

その頃、まだ小学校の6年生になったばかりの四月です。

ランドセルを背負った僕たちは学校の帰り道の雑木林の脇を歩いていました。

満開のが並んだ雑木林の空間を、無数の花びら舞っていました。

それはまる絵に描いたような春の一場面でした。

宙を舞う桜の花びらは明里は雪のようだと言いました。

二歩ほど先を行く明里は、くるりと振り返り、再び謎めいた言葉を口にします。

「秒速5センチなんだって」何が?と問いかけると、明里は少しは自分で考えなさいよと答えませんでした。

素直に分からないと零すと、明里は答えを教えてくれました。

「桜の花びらの落ちるスピードだよ」秒速5センチメートルと言葉が、不思議な響きでした。

ふふ、と明里は嬉しそうに笑いました。

他にもあるよと明里は雨や雲の落ちる速度を教えてくれました。

唐突に走り出した明里を、慌てて追いかけました。

【承】秒速5センチメートル のあらすじ②

雪の落ちる速度と初恋の温度

明里からの手紙が届いたのは、本格的に夏の暑さが始まろうとする頃でした。

ポストの中に薄いピンク色の手紙が明里からだと気づいた時、嬉しさよりもまず戸惑いが先行したのを覚えています。

離れ離れになってから半年の間、一度の連絡も取らず、明里のいない生活に馴染んでいたところでした。

それから明里との手紙のやり取りが月一ほどのペースで始まりました。

文通が始まってから、以前より今の生活を素直に受け入れるようになったと思います。

会うこともなく三学期に入った頃、鹿児島への引っ越しが決まりました。

引っ越す前に明里に会いたいと伝えました。

学校が終わると新宿駅に向かいました。

不慣れな新宿駅で、一度も乗った事のない埼京線のホームに迷いながら辿りつきました。

吹きさらしのホームには雪が舞い込んでいました。

明里に会いに行く当日は、昼過ぎから空を埋め尽くす黒い雲から雪が舞い降りていました。

構内放送のアナウンスが電車の遅延を知らせます。

?

【転】秒速5センチメートル のあらすじ③

雲の落ちる速度と片想いの距離

朝日がまだ水平線にちょこんと乗っかっている朝、澄田花苗は海で漂っていた。

水面に反射する朝日が眩しく感じました。

雲一つない快晴の空を眺めながら、幸せだなーと花苗は能天気に思いました。

サーフボードに体を滑り込ませ波に乗ろうとするが、バランスを崩して倒れました。

花苗はこの一年間、波に乗れていませんでした。

パンという気持ちの良い音が、鳥のさえずりに混じって聞こえます。

校舎の陰に隠れた花苗は、そっと弓道場を覗き見していました。

彼がいつも通りにひとりで弓を引いていました。

彼が朝からサーフィンに出掛ける理由の要因でした。

気合を入れると、おはようと彼に挨拶をしました。

がんばるんだねと海に行っていたことを褒められると花苗は顔を赤くして照れました。

花苗は彼に片想いをしています。

もう5年間も。

彼がこの島に引っ越してきたときからです。

そして、彼と一緒に過ごせる時間は、高校卒業までの半年しか残されていませんでした。

【結】秒速5センチメートル のあらすじ④

桜の落ちる速度と生きる速度

ソフトウェア開発企業で遠野貴樹はSEに従事しています。

プログラマという仕事は彼に合っていました。

忍耐と集中力を必要とする仕事だったが、何千行にもおよぶコードを創り出すことは今までにない喜びでした。

深夜に帰宅する最終電車の窓から見えるビルのシルエットに灯る光や奇妙に明るい街に浮かぶ航空障害灯の景色が、彼の好きな時間だった。

自分は今でも遠く美しい何かに向かって進んでいるのだと感じました。

就寝しようと携帯電話を持ち上げた時、メールが届いているのに気づきました。

それがきっかけで、かつて手紙のやり取りをしていたこと、そして宛てのないメールを打つ癖があったことを思い出しました。

きっとニュースで観たH2Aロケット打ち上げの映像に写っていた懐かしい風景のせいだと思いました。

見慣れない私服姿の彼女が涙を流しながら、笑顔を向けて言った言葉を思い出しました。

“ずっと遠野くんのことが好きだったの。

今までずっとありがとう”

秒速5センチメートル を読んだ読書感想

秒速5センチメートルを初めて観たとき、どうせ最後に再開してハッピーエンドで終わるんだと高を括っていました。

けれど、見終わったときに、良い意味で裏切られたと思いました。

恋をテーマにした作品で、まさかこんな終わらせ方をする監督がいるんだと驚いたのを覚えています。

アニメーションでは描かれなかった、登場人物それぞれの心情や物語が織り交ぜられていました。

何を感じ、どこを目指して歩んでいたのかを、繊細な言葉で紡がれていて、無心に読み進めました。

見る人・読む人によって、特に男女で意見の分かれる作品も珍しいと思います。

コメント