「虚栄の市」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|中原弓彦

虚栄の市(中原弓彦)

【ネタバレ有り】虚栄の市 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:中原弓彦 1964年1月に河出書房新社から出版

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虚栄の市の主要登場人物

有賀俊介(ありがしゅんすけ)
ハードボイルド作家。

菊池昌作(きくちしょうさく)
有賀が通っていた大学の教授。

天野健(あまのけん)
コラムニスト。有賀の後輩

中野優子(なかのゆうこ)
推理小説雑誌の編集者。

植木清(うえききよし)
推理小説雑誌の編集長。

虚栄の市 の簡単なあらすじ

有賀俊介は処女作の「餓狼の街」によって、華々しく文壇デビューを果たします。有賀の二番煎じを目論む天野健や、師匠でありながら弟子の社会的成功を妬む大学教授の蓮池昌作の企みによって予想外の事態が勃発していくのでした。

虚栄の市 の起承転結

【起】虚栄の市 のあらすじ①

デビュー作が一大センセーションを巻き起こす

1年半ほど前のある日の午後に大学で英文学を教えている菊池昌作の研究室を訪ねてきたのは、ガリ版刷りの自作小説を抱えたひとりの青年です。

「餓狼の街」とタイトルが付けられた過激な描写が持ち味のその作品に、菊池教授はたちまち夢中になってしまいました。

知り合いの文芸雑誌の編集長に原稿を持ち込んで発表した途端に、一流出版社からの版権申し込みと大手配給会社からの映画化オファーが殺到します。

一躍時の人となった有賀でしたが、取り立ててくれた恩人に挨拶に来ることもなくハガキ1枚寄越しません。

一連の非礼に怒り心頭に発した菊池教授は、それ以降様々なメディアに教え子の悪口を並べ立てます。

この騒動にも我関せずを決め込んだ有賀は、大ヒットした「餓狼の街」の印税で三浦半島のリゾート地・長者ヶ崎に別荘を購入して悠々自適の日々です。

そんな有賀を6月の暑い盛りに訪問してきたのは、大学の2年年下の後輩で今では細々と執筆活動を続けている天野健でした。

【承】虚栄の市 のあらすじ②

ポスト有賀を目指せ

後輩と言っても天野は経済的な事情によって大学の文学部を中退していたために、有賀とは直接的な面識はありません。

学生時代から新進気鋭の小説家として注目を集めていた有賀に一歩でも近づくために、天野は週刊誌から出版社までありとあらゆるメディアに自身を売り込んでいました。

現在ではコラムニストとしてようやく食べていけるようになっていて、雑文の片手間に中編小説を書いています。

完成した作品「殺す風」を有賀宛に郵送しましたが、2〜3ヶ月たった後もなしのつぶてです。

バス停から延々と続く石段を登った先で、天野は中野優子に出迎えられます。

彼女は元々は推理小説雑誌の編集者で有賀を担当していましたが、今では別荘にまで押しかけて口述手記や原稿清書はいうに及ばず掃除や洗濯までやってくれて至れり尽くせりです。

優子に案内されて念願の有賀との対面を果たした天野でしたが、送り付けた自信作は散々貶されて体よく追い払われてしまうのでした。

【転】虚栄の市 のあらすじ③

一夜にして立場が逆転

野心溢れる天野に目を付けたのは、雑誌「ミステリー・ダイジェスト」の編集長を務めている植木清です。

編集部には植木とアシスタントのふたりしかいないために、企画・原稿依頼・回収・レイアウト・校正の全てを自分たちでこなさなければなりません。

有賀が見向きもしなかった「殺す風」の連載に踏み切り、コネのある出版社にポケット・ブックとして刊行する契約を取り付けます。

ミステリーの専門誌ばかりでなく大手新聞紙のトップ記事で取り上げられたことがきっかけで、たちまちベストセラー作家の仲間入りをしました。

自分の作風と甚だ近いものがありながら天野の文章にある種の新しさを感じた有賀は、当然ながら面白くありません。

「殺す風」が海外のミステリーと似通っていることを調べ上げてネガティブキャンペーンを試みますが、かえって有賀の方が叩かれてしまいます。

更には自身の新作に盗作疑惑が浮上したために、有賀は作家として窮地に追い込まれるのでした。

【結】虚栄の市 のあらすじ④

全ては夢のように

菊池教授は近所を散歩中にぶらりと書店に立ち寄って、「新鋭推理作家十人集」という大衆雑誌の別冊を見つけました。

手に取ってパラパラと捲ってみましたが、あれ程話題になった有賀の名前はそこにはありません。

有賀の盗作の悪評は日増しに高まっていく一方で、原稿の注文は次から次へとなくなり連載小説も打ち切られていきます。

経済的にも逼迫してきた有賀が決意したのは、自らの成功の証でもある長者ヶ崎の別荘の売却手続きです。

いつか天野を招き入れた時に700万円の購入金額を盛んにアピールしていましたが、土地斡旋業者に足元を見られて250万円程度にしかなりません。

遂には日々の暮らしにも困るようになった有賀が泣きついたのは、手のひらを返したかのように寄り付かなくなった中野優子です。

40枚ほどの書きなぐりの原稿を紙袋に入れて、待ち合わせ場所のデパートへと急ぎます。

原稿料を受け取った有賀は優子から喫茶店に誘われますが、お茶代さえ惜しいために足早に退散するのでした。

虚栄の市 を読んだ読書感想

ストーリーの舞台に設定されている、神奈川県三浦半島の北西に位置する葉山町の街並みや風景が美しさ溢れていました。

中でも主人公の有賀俊介が別荘を構える、長者ヶ崎の雄大な佇まいも味わい深かったです。

一見すると華やかなムードに包まれている文学界の、知られざる内幕やドロドロの人間ドラマを垣間見ることが出来ました。

やたらめったら我が儘な小説家、他人のスキャンダルに目がない編集者、プライベートな恨みを公に持ち込む評論家。海千山千のキャラクター造形に圧倒されました。

出版業界に纏わる蘊蓄からこぼれ話までが満載になり、高校や大学で文芸部に所属している皆さんにはお勧めな1冊になります。

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