監督:城定秀夫 2022年2月にSPOTTED PRODUCTIONSから配給
愛なのにの主要登場人物
多田浩司(瀬戸康史)
主人公。古本の出張買取と店頭販売で生計を立てている。アパートにひとり暮らしで自炊もマメにする。
矢野岬(河合優美)
多田の店の常連。プラトニックな恋愛に憧れている。
佐伯一花(さとうほなみ)
多田のバイト仲間。披露宴は一世一代のイベントとして妥協したくない。
若田亮介(中島歩)
一花の婚約者。会話がおもしろく何でも知っている。
熊本美樹(向里祐香)
一花たちを担当するウェディングプランナー。新郎の疲れを癒やすために体を張る。
愛なのに の簡単なあらすじ
自らが経営する古本屋で万引き犯を捕まえた多田浩司、その矢野岬からプロポーズをされて付きまとわれることに。
多田の意中の人はずいぶん前にフラれた佐伯一花、遊び好きな未来の夫・若田亮介のせいで無事に結婚式を迎えられるのか怪しくなっていきます。
一花と若田は何とか挙式に臨んで、多田と岬は少しずつ距離感を縮めつつも健全なお付き合いを心がけるのでした。
愛なのに の起承転結
【起】愛なのに のあらすじ①
春先のある日に多田浩司が「古書買取 上々堂」で店番をしていると、100円均一文庫のコーナーにいた女の子が夢野久作の「少女地獄」をつかんで走り出しました。
なんとか追いついて名前と年齢を聞いてみると、何度もこの店に来ているうちに好きになってしまい同じ本を読んでみたかったとのこと。
矢野岬・16歳からいきなり求婚されてしまった多田はもうすぐ31歳になる独身、とりあえずはお引き取りを願います。
その日から岬は高校が終わってから足しげく通ってきてはラブレターを渡してきますが、多田には前々から気になっている佐伯一花が。
レンタルビデオ屋でアルバイトをしていた時に知り合った女性で、1度だけ告白をしましたがお断りされてしまいました。
その一花は6月に若田亮介と結婚式を挙げる予定ですが、彼が式場スタッフの熊本美樹と浮気をしていることを知りません。
美樹が言うには式を控えているカップルの多くがナーバスになっていて、円満に進めるためのオプションだそうです。
【承】愛なのに のあらすじ②
カウンターでレイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」を読んでいる多田でしたが、何度も同じページを行ったり来たりしていて集中できません。
昼間から上々堂に入り浸っている岬が、同じクラスの男の子・岡沼正雄からデートに誘われたと自慢気にしているからです。
ご飯を食べたり、映画を見たり、悩みを相談しあったり… あくまでも女子高校生らしい清らかな交際を望んでいる岬。
そんな彼女に執着するようになった岡沼は、コッソリと後を付けて多田のことを恋敵だと勝手に思い込みました。
無精ヒゲにさえないメガネの30男のどこがいいのかサッパリわからない岡沼、腹いせにパンチをお見舞いして逃走します。
相変わらず美樹とはホテルで密会を繰り返している若田、一花とはずいぶんとご無沙汰に。
ウェディングドレスにお色直し、招待客のリストアップ、引き出物の値段、花の種類… まだまだ決めなければならないことは山積みになっていますが、転職して忙しいことを理由に全てを一花に丸投げです。
さらにはクリーニングに出すつもりだった彼のスーツから、ラブホテルのロゴが入ったライターを発見しました。
【転】愛なのに のあらすじ③
ライターを頼りに一花はホテルへ、部屋の中には前もってスマートフォンで呼び出しておいた多田が。
多田に「協力」してもらいこれで相子になるはずでしたが、虚しさと罪悪感ばかりが募ってきます。
あれやこれやと熱心に注文をつけていた美樹との打ち合わせの時にも、ボンヤリとしてしまい身が入りません。
たまたま目についたのは式場に併設された小さな教会、祭壇の前にはオルガンで「いつくしみ深き」を弾いている神父様が。
これまでの経験人数は若田を含めて2人、誰とも快感を得られなかったこと、3人目の多田の時にはじめて愛する喜びを知ったこと。
キリスト教徒でもないのに見よう見まねで十字を切って告解を始めた一花、御心に正直になればすべては救われるそうです。
そんな最中に多田が岬から突き付けられたのは真っ白な紙、幾度となく手紙を出しても音沙汰がなかったためこれを最後にするつもりでした。
口ではなく文章で答えてほしいという岬でしたが、まったく言葉が出てきません。
【結】愛なのに のあらすじ④
この不適切な関係を清算することを宣言した若田、若田との行為からは満足が得られなかったと打ち明けた美樹。
一方の一花は結婚後もたまに会ってほしいと迫ってきますが、このままでは彼女のメンタルが持たないでしょう。
本当に愛しているのは誰なのかもう1度考えるようにアドバイスをすると、しばらくしてから多田宛の結婚式の招待状が送られてきます。
学校が休みの日に岡沼とふたりで出掛けてみた岬でしたが、頭の中に浮かんでくるのは多田のことばかりです。
先日の白紙にようやくメッセージを完成させた多田、岬は受け取った途端にその場で音読し始めます。
今はまだ過去を引きずっていて好意に応えられないこと、気が向いた時に手紙を書いてほしいこと、いつか心から好きになれる日が来ること。
ようやく多田が「長いお別れ」の最終章までたどり着いた頃、夏服に衣替えをした岬が来店します。
多田が読み終わるまで待つために、レジの横に用意されていたイスにそっと腰かけるのでした。
愛なのに を観た感想
朝日がのぼると同時にシャッターを上げて開店準備、お昼休みには常連客ではなく常連猫のカンタに餌付け、真っ暗になる頃に閉店… 30歳にしてセミリタイアのような暮らしを送っている主人公の多田浩司を、瀬戸康史さんがユーモラスに演じていました。
貴重な若さと青春時代をムダ使いするかのように転がり込んでくる矢野岬も、まさに古書街に舞い降りた天使のようにキュートですよ。
年の差にして実に14歳というふたりの間柄に、世間から厳しいまなざしが飛んできて疑いが持たれてしまうのは無理もありません。
せめてあと2年、18歳になるのを待ってから岬には思う存分にアタックしてほしいですね。
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