監督:松本壮史 2021年8月にハピネットファントム・スタジオから配給
サマーフィルムにのっての主要登場人物
ハダシ(伊藤万理華)
ヒロイン。勝新に憧れたのがきっかで映画部に入る。いつも背中を丸めていて歩く時はがに股。
凛太郎(金子大地)
映画フリークの少年。ハダシと同年代だが会話がかみ合わない。
月島花鈴(甲田まひる)
ハダシの部活仲間。現役高校生監督として期待されている美少女。
小栗(篠田諒)
帰宅部であまり登校していない。校則違反の自転車を乗り回す。
駒田(小日向星一)
万年補欠の野球部員。聴覚だけは優れている。
サマーフィルムにのって の簡単なあらすじ
古き良き時代劇の面白さを同世代に伝えたいハダシは、高校の文化祭での公開を目指して撮影をスタートします。
主役に起用したのは映画館で意気投合した凛太郎ですが、彼はタイムスリップで現代に到着した未来人です。
映画は未完成のままで終わりますがハダシは体を張って上映会を盛り上げて、凛太郎は彼女の意志を受け継いで未来へ帰還するのでした。
サマーフィルムにのって の起承転結
【起】サマーフィルムにのって のあらすじ①
三隅高校3年のハダシは部活で自主映画を作っていましたが、台本をあっさりと没にされてしまい毎年恒例の「蒼涼祭」まで時間がありません。
採用されたのは月島花鈴による王道のラブコメで、彼女は高校生映画監督として専門誌でも注目されていました。
前々から花鈴をライバルとしていたハダシは、剣道部の友人に殺陣を指導してもらいつつ別行動を取り始めます。
タイトルは「武士の青春」、主人公は猪太郎、切れ長の目、黒く太いまゆ毛、古風な声、はかなげで美しく… 学校内では条件に合う俳優が見つかりません。
アイデアに行き詰まった時にハダシが向かう先は街中の名画座で、特にお気に入りなのが勝新太郎主演「座頭市」です。
上映が終わってから劇場の明かりが付いた時に、前の方の座席で涙を流して感激している男の子がいました。
まさに彼こそが猪太郎のイメージにピッタリだと確信しますが、ハダシと目線が合った瞬間に逃げ出してしまいます。
何とか追い付いて必死に出演交渉をしてみると、凛太郎と名乗る彼は明日の放課後に高校に来てくれるそうです。
【承】サマーフィルムにのって のあらすじ②
映画部では毎年1本しか部費が下りないために、ハダシは凛太郎と一緒にヤドカリ引っ越しセンターでアルバイトをしていました。
スレンダーな体形に似合わず体力のあるようですが、「人力」で引っ越しをするのは初めてだという彼に違和感を覚えます。
それなりの金額になりましたが花鈴が使っているようなドローンには手が届かないため、撮影はすべてスマートフォンで済ませるしかありません。
スクリーンでしか映画を見たことがないという凛太郎のために、ハダシが紹介してあげたのはネット配信サービスです。
「座頭市」シリーズはもちろん、椿三十郎の三船敏郎の名演が光る「椿三十郎」や円月殺法で有名な「眠狂四郎」まで。
カスタム自転車で通学している小栗は照明を、野球部でレギュラーを取れないものの耳がいい駒田は音響を。
天文学にいる幼なじみも部室を自由に使わせてくれたうえに、特撮技術でサポートしてくれます。
寄せ集めのメンバーに少しずつ一体感が芽生えてきたのは、この夏のあいだだけ青春を預けてほしいというハダシの言葉に心を動かされたからでしょう。
【転】サマーフィルムにのって のあらすじ③
凛太郎がポロリとこぼした「この時代」という言葉から、彼がタイムマシンに乗ってやって来たことが判明しました。
凛太郎が生きる世界ではハダシは巨匠として名を揚げているそうですが、デビュー作の「武士の青春」はお蔵入りになっています。
映像は5秒がスタンダード、1分をこえると長編、シネコンも劇場もすべて閉館… 人々は自分のことだけで精一杯で、他人の物語に使う時間などないそうです。
近い将来に映画がなくなるという予告を聞いたハダシは、すっかり落ち込んでしまいモチベーションも湧いてきません。
一向は最大の見せ場である決闘シーンを撮るために海辺にある「でぐち荘」で合宿を開始しましたが、ハダシは現場に顔を出さなくなってしまいました。
たまたまハダシ監督の作品を見て感動したこと、未来に映画を残すために過去にきたこと。
凛太郎の説得に心を動かされたハダシは、もう1度監督としてメガホンを取るためにチャンバラシーンを入念に練り直します。
【結】サマーフィルムにのって のあらすじ④
近くの民宿には花鈴たちのグループも泊まり込みをしていて、高価な機材を無償で提供して協力してくれました。
ついにハダシは「武士の青春」の決定稿を書き上げて、何とかクランクアップにこぎ着けて蒼涼祭の当日です。
お化け屋敷にクレープ屋さん、射的に手相占い… 今日を最後に未来に帰るという凛太郎の送別会も兼ねて思う存分に楽しみます。
映画部の上映会は午後2時から体育館で2本立て、ハダシの記念すべきデビュー作は花鈴の話題作にも負けていません。
いよいよ映画は終盤に差し掛かかりますが、ここにきて発生したのはタイムパラドックスの問題。
凛太郎はもともとこの時代に存在しない人間、映画に出演した記録が残れば歴史の流れに影響を及ぼしてしまうでしょう。
ハダシは映写機をストップさせて、この場にいる観客だけに自らが主役となってラストシーンを実演します。
この光景を胸にしっかりと焼き付けた凛太郎は、フィルムを未来に持ち帰って完成させることを約束するのでした。
サマーフィルムにのって を観た感想
泣けるラブストーリーよりも血と汗がほとばしる大活劇、最先端のシネコンよりも昔ながらのミニシアター。
見た目はいかにも今どきのティーンエイジャーといったハダシですが、そのチョイスは相当にシブイですね。
演じているのがアイドルグループに所属しつつ芸術系の大学に通っていたという逸話のある、伊藤万理華だというのも運命的です。
ハダシと凛太郎が映画愛をぶつけ合う直球勝負の学園ドラマかと思いきや、後半にはSFタッチの急展開も用意されていてビックリです。
「スクリーンを通して過去と今をつなぐ」というハダシのセリフ通りに、1本の映画が時をこえて奇跡を起こす瞬間に感動しました。
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