映画「国東物語」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|村野鐵太郎

映画「国東物語」

監督:村野鐵太郎 1985年にエキプ・ド・シネマから配給

国東物語の主要登場人物

隆大介 (大友義鎮)
主人公 のちの大友宗麟

貞永敏 (菊池武治)
義鎮のいとこで親友

滝田裕介(大友義鑑)
義鎮の父

井川比佐志(安順)
武治の師 僧侶

藤真利子(お葉)
義鑑の後妻

国東物語 の簡単なあらすじ

キリシタン大名として知られる戦国時代の若き武将大友義鎮と、質として府内に送られ、同年の義鎮と兄弟のように育った従弟菊池武治の理想・宗教・国を思う気持ちの違いからの愛憎と別離が描かれる。

原作・脚本は「遠野物語」の高山由紀子、監督も同作の村野鐵太郎、撮影も同作の吉岡康弘と高間賢治がそれぞれ担当。

音楽は南こうせつ。

国東物語 の起承転結

【起】国東物語 のあらすじ①

義鎮と武治

 天文15年(1546年)豊後(大分県)の沖の浜にポルトガル人の一行を乗せた頭目八幡の船が漂着しました。

時の領主大友義鑑と交易していた明の商人はポルトガル人を邪教の輩と呼び殺すように義鑑に進言しましたが義鑑の子・義鎮は遠方から来た人々は友としてもてなすべきだと彼らの命乞いをし、そのためポルトガル商人は殺されずに済みました。

ポルトガル商人たちは義鎮に、命を助けてくれた礼として鉄砲を贈りそして宣教師パオロは義鎮にロザリオを手渡しました。

その大友義鎮(のちの宗麟)は実の父義鑑に疎まれ心を赦せるのは従弟である菊池武治ただ一人だけでした。

一方武治も人質として幼い頃から親と離れて隣国菊池家から大友家に差し出されています。

もし菊池家が義鑑に反旗を翻せば粛清されてしまう立場です。

孤独な二人は寄り添いあい、青臭い理想の政治を語ったりして先の見えない自身たちを慰め、かけがえのない無二の親友として育っていきました。

【承】国東物語 のあらすじ②

義鎮領主になる

義鎮の父義鑑は若い後妻にぞっこんでこの妻が閨房で「私の(子供)塩市丸を世継ぎに」と頼み込みそしてその気になる義鑑です。

そして武治の生家菊池家は塩市丸側につき義鎮を亡き者にしようと計ります。

それを知った義鎮派の家臣はお家の為と領主の義鑑、後妻、幼い塩市丸を殺害します。

なおかつ主殺しということでそのあと自分達も切腹します。

大友家21代の領主となった義鎮ですが胸中を暗くしたのは菊池家が義鎮廃嫡に加担したことにより幼少から兄弟のように育った従弟菊池武治が大友の敵となって追われてしまったことでした。

このままでは命が危うい武治を菊池家の密偵が出奔させます。

無二の親友だった二人が自分の意思に関係なく敵味方になっていきます。

僧に身をやつした武治は急な逃避行に辛酸をなめます。

安順という僧が武治を庇い導いての旅路ですがただ僧衣を纏っただけの偽僧侶の自分に善意を施すにゆきづりの人達に武治の心は動きます。

乏しく貧しい自らの食い扶持から経さえも読めない武治のために布施し、崇拝する市井の人々。

長く苦しい旅の間に人々の安寧を心から祈り、師である安順を尊敬した武治は仏の道に進む決意をします。

【転】国東物語 のあらすじ③

袂をわかつ二人

天文20年、はるばる海を越え豊後の国を訪れたのはイエズス会の宣教師フランシスコ・ザビエル。

それは義鎮にとって運命的な西洋文明との出会いであり、キリスト教との出会いでもありました。

義鎮はザビエルの語った理想の王国を夢見、新しい国造りとへ進んでいこうと思います。

一方、領主義鎮は今や敵となった菊池家の武治を生かしておけない立場です。

家臣にも菊池の息子である武治をこのままにしてはのちの憂いになると諫められ千燈寺に潜伏していることをつきとめ追手をかけるのですが心は今でも昔のままでありどうしても武治を討つことができません。

八幡を使者としてつかわせ秘かに武治を呼びだし「武治…一緒に国を作ろう」と自分と一緒に来てくれることを願います。

が苦行の末に僧として生きるという自らの道をみつけた武治は「私は武器を捨てました」と言って義鎮の申し出を断り二人は袂をわかちます。

結局大友軍は武治の潜む千燈寺を焼き討ちし立てこもる僧兵たちと激しい戦闘になりました。

【結】国東物語 のあらすじ④

千燈寺焼きつくし

千燈寺には僧兵のほかに逃げてきた女子供老人たちもいますがなさけ容赦なく大友軍は攻め入っていきます。

刀を捨てた武治を仏門に導いた師である僧の安順ですが、丸腰の武治を守ってバッタバッタと大友軍を斬り倒していきます。

鬼のような安順のさまにびっくりする武治ですが、実は安順は菊池家の間者で最初から武治を守るために遣わされていたのでした。

菊池家再興の為にどうか逃げのびてくれと懇願する安順をおいて、もう刀はとらないと決めた武治は自ら燃え盛る炎の中に消えていきます。

そして大友軍は屈強な僧兵も罪のない女子供老人も焼き尽くし敵対する千燈寺を焼き滅ぼします。

千燈寺を焼きつくし力づくで領土の平穏を手に入れた義鎮はキリシタン大名として国を治めることになりました。

ザビエルの語った理想の王国、若き日の義鎮が武治とともに語りその胸に抱いた理想の王国、そして現実にこれから義鎮が築き上げる国は果たしてどんな国になるのでしょうか?

国東物語 を観た感想

親に愛されず不遇な幼少期を送った義鎮と武治。

自分のゆくべき道がみえないときには青臭く理想の政治を語って自分たちなら平和な幸せな国を作れるのにと思っていました。

実際権力を手に入れたら結局自分の保身や逆らうもののの制圧、若き日に自分が嫌だと思ったことをやらざるを得ない義鎮の立場。

同じ志だと思っていた武治は武治の正義をみつけて別々の道を歩むことになります。

武治もまた師と仰いだ安順が僧ではなく手練れの間者で自分を守るためにバッタバッタと人を切るのをみて絶望します。

理想と現実、そして幼いころ大事だったものの喪失みたいな話で映画館で見たときとても心揺さぶられました。

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