監督:清水崇 2020年2月に東映から配給
犬鳴村の主要登場人物
森田奏(三吉彩花)
臨床心理士として病院で働いている。幼少期から“この世ならざるもの”が見えてしまう体質。
森田悠真(坂東龍汰)
奏の兄。恋人・明菜と犬鳴村に行ってから明菜がおかしくなってしまい、犬鳴村の謎を解こうと再び村に向かう。
森田綾乃(高島礼子)
奏たちの母。実は犬鳴村の出身で、そのためか夫・晃に冷たく接されている。
遼太郎(笹本旭)
奏が担当する少年。実の母親は身寄りのない女性で、生まれてすぐ養子に出されている。よく「もう一人のママ」と発言する。
優子(奥菜恵)
遼太郎の母。本人は知らないが、実は遼太郎とは血のつながりはない。
犬鳴村 の簡単なあらすじ
清水崇監督による村シリーズ第1弾で、恐怖シーンに加工を入れて怖さをマイルドにした「犬鳴村 恐怖回避ばーじょん」が公開されたことでも話題になりました。
日本で最も有名な都市伝説の一つ「犬鳴村。」
そこは日本政治の統治が及ばないとされる地図にもない集落で、立ち入ったものは決して戻ってこれないと言われています。
動画配信のために恋人・明菜と犬鳴村を訪れた悠真は、戻ってからずっと正気を失っている明菜のために妹・奏の力に頼ろうとします。
奏は幼いころから“この世ならざるもの”を見てしまう能力を持っているのでした。
犬鳴村 の起承転結
【起】犬鳴村 のあらすじ①
森田悠真は恋人・明菜と心霊スポットの動画配信のために訪れた、とある公衆電話にいました。
「2時になりました」明菜はカメラに向かってスマホ画面を見せます。
少し遅れて公衆電話が鳴りだしました。
午前2時に鳴る電話を取ると、犬鳴村に行くことができると伝えられているのです。
受話器からは何も聞こえませんが、明菜は「今からそちらに向かいます」と言って電話を切ります。
旧犬鳴トンネルを抜け、村に到着。
明菜はノリノリで建物の扉をノックしていきます。
しばらくして明菜は廃屋のトイレへと入っていきました。
悠真は外で使えそうな素材を撮影しています。
見つけた鏡には筑紫電力という文字がありました。
その時自分の背後に人の気配を感じます。
用を足し終えた明菜が外に出ようとすると扉が開きません。
悠真のいたずらかと思いましたが、扉をひっかく音やうなり声のようなものが聞こえてパニックになります。
明菜はそのまま走って逃げていきました。
なんとか追いついた悠真は、明菜の体に無数の傷があるのを見つけます。
その後明菜をなだめ、2人は村を後にしました。
悠真の妹・奏は臨床心理士として病院で働いています。
悪夢にうなされる少年・遼太郎を担当していますが、詳細を尋ねても「ママが言っちゃダメだって」と答え、話そうとしません。
ママの許可をもらっていると伝えても、「あっちのママ」と言います。
奏は遼太郎の周辺に霊の存在を感じ始めます。
悠真から呼ばれ奏が家へ戻ると、悠真が「犬鳴村から戻ってから明菜がおかしい」と言います。
弟の康太が「犬鳴村」という言葉に食いつきました。
小学校の自由研究で調べていて、興味津々なのです。
その様子を見ていた父の晃は怪訝な顔をして、「お前の卑しい血筋だな」と母の綾乃に冷たく言い放ちました。
明菜は不気味な歌を歌いながら紙に絵を描いています。
そして「犬を見た」と言いました。
悠真は霊感がある奏に、明菜を助けてほしいと頼み込みます。
【承】犬鳴村 のあらすじ②
2人が話している隙に、康太が悠真のカメラからこっそりSDカードを抜き取りました。
外では明菜が失禁しながら庭を歩いています。
悠真は明菜を探し回りながら、明菜に電話をかけました。
明菜は「もうすぐ行くから」とつぶやき、その直後、鉄塔から飛び降りて悠真の目の前で亡くなってしまいました。
明菜の葬儀が営まれました。
明菜の父親は悠真と晃に怒りをぶつけます。
明菜の検死もした医師の山野辺は、晃に明菜の死因が溺死だったとささやきます。
そしてこの死因が昔、この辺りでは多く見られたとも告げました。
さらに明菜は妊娠していて、奏は勘が鋭いから警戒しろと助言します。
奏は山野辺とすれ違う際、「この犬殺しが」との声が頭に聞こえますが、意味はわかりません。
家に戻った悠真は、明菜のバッグから母子手帳を見つけて全てを察し、悲しみに暮れます。
康太は部屋で自分で作った村のジオラマを見ながら奏に村の話をしていました。
その時外から悠真の声がし、康太は部屋を飛び出していきます。
一人残された奏の背後にハンチング帽をかぶった男が佇んでいました。
しかし気配を感じて振り返るとその姿はなくなっていました。
悠真は犬鳴村を燃やすため、仲間を集めて村に向かいます。
しかしトンネルには高いバリケードがありました。
悠真はわずかな隙間から中に入っていきます。
呆れた仲間たちはその場を後にしますが、車に潜んでついてきた康太が悠真の後を追います。
康太に気づいた悠真は、絶対に中に入るなと注意しますが、康太が中に落ちてしまいました。
すると2人は和服を着た人々に囲まれ、そのまま?み込まれます。
病院では奏が遼太郎の父・圭祐と会い、遼太郎が圭祐と母・優子の実子ではないと聞かされ、遼太郎が度々「あっちのママ」と言う意味を理解します。
遼太郎のそばには女性の霊が寄り添っていて、遼太郎は「先生、ママ怖くないよ」と言いますが、奏は「やめて!」と大声を出してしまいました。
【転】犬鳴村 のあらすじ③
悠真の仲間が呼んだ警察と、晃、綾乃、奏がトンネルの入り口にやってきました。
綾乃は晃に?みつくほどに暴れて半狂乱になります。
結局捜索は警察に任せることになりました。
遼太郎がパニック発作を起こし、奏は病院に戻ります。
すると山野辺が自宅で溺れて危篤状態で運び込まれたと伝えられました。
奏が居眠りした間にいなくなった遼太郎を探していると、山野辺の病室から不気味な歌が聞こえてきました。
部屋に入ると、山野辺は「水が来る。
逃げろ」と繰り返しつぶやきます。
奏はたくさんの人の影に囲まれてしまいました。
奏は遼太郎の手を取って逃げ出し、影が追いついたところで目が覚めました。
するとそこへ、山野辺が亡くなったとの知らせが入ります。
数日後、バイクが故障した悠真の仲間のリュウセイと、それを助けに行ったヒロとユウジが、犬鳴トンネル近くの赤い橋にある公衆電話ボックスの中で溺死体となって発見されました。
奏は晃に、自分の家系について質問します。
晃は「俺はお前らが怖いんだよ。
混ざっちゃいけない血だったんだ」と答えるだけでした。
奏は祖父・隼人の元へも行き、話をききます。
そしてそこで、祖母・耶英が家の前に捨てられていた赤子だったことを聞きます。
近くの村の子かもと言いましたが、その村はもうダムの底に沈んでいるとのことでした。
ダムを見つめる奏の背後に、青年が立っています。
それは奏が幼少期から見ていた青年、成宮健司でした。
健司は奏に犬鳴村の記録映像を見せます。
かつて犬鳴村は山犬をさばいて生活しており、そのため「犬殺し」と呼ばれ迫害されていました。
しかしある時から外部の人間が入り込みます。
彼らは電力会社の回し者で、ダムを作るために村人に暴虐の限りを尽くしました。
村の娘を監禁し、「女は犬と交わっている」と言いふらしたりもしたのです。
その電力会社の人間の中に、晃の家系の人間・森田源次郎がおり、綾乃は犬鳴村の出身でした。
【結】犬鳴村 のあらすじ④
奏が自宅に戻ると、家の壁にはたくさんの落書きがありました。
中に入ると綾乃が食べ物を床から貪っており、晃は綾乃を必死で止めようとしています。
康太の部屋で見つけたSDカード内の明菜と悠真が犬鳴村へ行く映像を見て、奏は村へ行くことを決意します。
午前2時。
鳴り出した公衆電話の受話器を取ります。
すると悠真と康太の声が聞こえました。
トンネルにバリケードはありません。
健司が現れ、奏を案内します。
そこに広がる犬鳴村は昔の時代でした。
ある檻に悠真と康太がおり、奥には健司の恋人・籠井麻耶と生まれたばかりの赤ん坊もいました。
健司は「この村の血を絶やしたくない」と奏に赤ん坊を託し、奏は悠真と康太も助けて逃げ出します。
トンネルまで逃げましたが、後ろから唸り声をあげる麻耶と村人の幽霊がたくさん追ってきました。
健司と悠真が麻耶を押さえ込んでいる間に、奏は康太とトンネルを抜け出します。
そして一軒の民家の庭で倒れてしまいました。
そこに幼少期の祖父・隼人が現れ、赤ん坊を手に取ります。
そして時代は現代に戻り、2人は現在の隼人に介抱され、病院で目を覚ましました。
後日、悠真の遺体がダムで見つかったと連絡が入ります。
奏が悠真にかけられた白い布をはぎ取ると、悠真の足元には健司と麻耶の骨がしがみついていました。
—隼人に事情を話し、健司と麻耶の骨を耶英の墓に入れてもらいました。
「耶英がやっと両親に会えた」と隼人は喜びます。
微笑みながら立っている健司、麻耶、耶英の姿が奏の目に入りました。
綾乃も落ち着きを取り戻し、晃と穏やかな時間を過ごすようになりました。
そして遼太郎が退院する日、遼太郎が「お友達によろしくってママが」と奏に呟きます。
奏は遼太郎の実の母親が身寄りのない女性だったことを考えていました。
去っていく奏を見つめる遼太郎の瞳が巨大化し、唸り声のようなものが聞こえます。
さらにその口元からは牙のようなものがのぞいていました。
犬鳴村 を観た感想
「樹海村」「牛首村」に続く村シリーズ第1作目である本作、もちろん3作のストーリーに関連性はありませんが、清水崇監督が「血縁3部作」と言うだけあって要素や構造は共通になっています。
「心霊スポット」というのが最大の共通点ですね。
本作は呪われた犬鳴村の謎と、その出身者や関係者に降りかかる恐怖を描いています。
行くだけでも呪いをもらうのですが、その村の血縁者ともなるとまた違った呪われ描写があり、それがなかなか見ごたえがあって良い感じです。
実際人間と犬の血は交じっていないのですが、「犬殺し」と迫害され死んでいった人たちの強い恨みが、狂暴な犬に変化しています。
怖さよりも切なさを感じた作品でした。
コメント