監督:荻上直子 2012年5月にスールキートスから配給
レンタネコの主要登場人物
サヨコ(市川実日子)
ヒロイン。副業の収入があり経済的にゆとりがある。やたらと猫に好かれるが彼氏はいない。
吉岡寿子(草村礼子)
マンションでひとり暮らしをする高齢女性。お菓子を作るのが趣味で得意メニューはゼリー。
吉田五郎(光石研)
勤め先の都合で転勤が多い。妻は猫アレルギーで娘は反抗期。
吉川恵(山田真歩)
レンタカー店に勤めて12年。大学も就職先もランキングで選んできた。
吉沢茂(田中圭)
サヨコの中学生の時のクラスメート。口から出任せが多く手癖も悪い。
レンタネコ の簡単なあらすじ
長年いっしょに暮らしていた祖母が亡くなってからサヨコに遺されたのは、1軒の家とそこに住み着いたたくさんの猫たちだけです。
毎日の生活や心の奥底に物足りなさを感じている人たちのために、「レンタネコ」というサービスを開始します。
利用者のさまざまなニーズに応えていくうちに、サヨコ自身にも充実感とやりがいが芽生えていくのでした。
レンタネコ の起承転結
【起】レンタネコ のあらすじ①
自宅から小学校までの通学路、公園でブランコにのっている放課後、お使いに行った帰り道、河原を散歩している夕暮れ時… 子供の頃からサヨコの周りには猫が寄ってきましたが、特殊なニオイを発している訳ではありません。
猫だけでなく人間にも寄ってきてもらいたいお年頃になったサヨコは、今年こそ結婚できるようにと紙に書いて壁に貼っておきます。
寂しい人に猫を貸すレンタル業を思いついたのは、祖母が死んで2年がたった頃。
いつものように猫たちを連れて外回りをしていると、話し掛けてきたのは吉岡寿子です。
元気に走りまわるミケは1歳、力持ちのサバトラは7歳。
寿子が選んだのはおだやかな茶とらで14歳、おばあちゃん同士で仲良くなりたいそうです。
動物虐待を防ぐために、レンタルに当たっては審査を受けてなければなりません。
寿子のお宅にお邪魔したサヨコは、猫が気持ちよく過ごせる環境かチェックをしました。
窓際のスタンドには1枚の写真が、モモコという名前の飼い猫で夫と死別してからはずっと一緒だったとのこと。
前金がたったの1000円だと知った寿子は、商売としてやっていけるのか心配しています。
【承】レンタネコ のあらすじ②
レンタル猫屋の他にも株の仕事をしているサヨコは、億単位を動かしているためにお金には困っていません。
売り時か買い時か、デイトレードで迷った時にはパソコンの前に1匹の虎猫を座らせて前足でクリック。
ことごとく正解を導き出すこの猫を「師匠」と頼りにするサヨコは、占い師として成功して「多摩川の母」と評判になるほどです。
その多摩川の河川敷でため息をついていた吉田五郎、「レンタネコ」と聞いた途端に相談事を持ち込んできました。
見ず知らずの中年男性のアパートを訪問することになったサヨコでしたが、ひと目顔をみただけで悪いことをする人ではないと確信します。
ずっと単身赴任だという吉田はようやく来月には家に帰ることが決まりましたが、不安なのは6年ぶりに会う娘のマリとうまくやっていけるか。
7歳〜13歳という大切な時期を一緒に過ごせなかったために、先日の一時帰宅の際には「クサイ」と言われてしまう事態に。
加齢臭を気にしない猫・マミコを紹介してもらった吉田、彼女とは家族のような固い絆で結ばれていきます。
【転】レンタネコ のあらすじ③
外に出ても炎天下ため誰も寄ってこないために、サヨコはクーラーの効いた「ジャポンレンタカー」でひと休みすることに。
カウンターに座っていた吉川恵によると、抽選で1名にハワイ旅行が当たるキャンペーンを開催しているそうです。
対物対人の自賠責保険付きの1泊2日、AランクはベンツやBMWなどの高級外車で1万2000円、Bランクは7000円、Cランクは5000円。
料金表によると3種類あるようですが、何でもかんでもランク付けをする風潮にサヨコは違和感がありました。
外車もブランド猫も見た目こそ格好いいものの、持ち主に愛されていなければ意味はありません。
入社以来ここの支店を仕切ってきたという恵ですが、自らのことはCランクに位置付けています。
めったにこないお客さんを待ち続ける毎日ですが、帰宅しても恵のことを待っていてくれる人はいません。
そんな彼女はサヨコが抱いているミケにひとめぼれをしてしまったようで、今回は審査免除の一発でOKです。
支払いは現金ではなくくじ引き1回、ハズレ券と引き換えにピンクのマーチをレンタルしたサヨコは後部座席に猫たちを乗せてドライブに出発します。
【結】レンタネコ のあらすじ④
ミヤモト中学で同じクラスだった吉沢とバッタリ再会したサヨコでしたが、当時からハッタリが多かったために良い印象はありません。
20年前に行方不明となったおじを探している、精密検査を受けたら白血病と診断された、明日インドに向けて出発する… 適当に聞き流してその場を立ち去りますが、勝手につけてきた揚げ句に縁側に集まっている猫たちの品定めをしているようです。
最後の夜を女の子と過ごしたいという吉沢、お土産のクラフトビールで乾杯をすると思い出話に花が咲きます。
とにかく眠くていつも保健室にいたサヨコ、授業を抜け出してベッドまでアイスキャンディーを届けてくれた吉沢。
別れ際に「またね」と交わしたふたりでしたが、もう2度と会うことはないでしょう。
後日写真を片手に訪ねてきたのはパトロール中の警察官、窃盗の常習犯として手配されているのはまさしく吉沢。
サヨコとしてはもらったアイスやビールが、万引したものではないことを祈るばかりです。
どうしようもなく寂しい人たち、救われないたくさんの悲しみ、心にポッカリと空いた穴。
その穴を埋めるための手助けをするために、サヨコはこれからも猫を貸すことを決意するのでした。
レンタネコ を観た感想
オープニングの舞台となるのは遠くに東京タワーを臨むのどかな土手、スピーカーを片手にリアカーを引くひとりの若い女性が。
「レンタ〜ネコ」という独特な呼び声が心地よく響き渡っていますが、側を通り掛かった小学生の一団から「猫ばばあ」などと暴言を浴びせられるのがほろ苦いですね。
競争社会から解脱したかのようなマイペースな主人公のサヨコには、市川実日子の配役がズバリ的中していました。
三毛猫からしましま、クロネコに斑模様までと登場する猫たちがどの子もかわいらしくて癒やされます。
一歩間違えると多頭飼育や保健所からのクレームといったネガティブなイメージになりそうなところを、うまく人情話としてまとめ上げているのは荻上監督の真骨頂です。
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