監督:三木孝浩 2022年8月に東宝から配給
アキラとあきらの主要登場人物
山崎瑛(竹内涼真)
この作品の主人公。幼い頃、父親の経営する町工場が倒産に追い込まれ、銀行員に嫌悪感を持っていたが、親身になってくれた銀行員・工藤のように、人を救うために銀行員を志した。
階堂彬(横浜流星)
この作品のもうひとりの主人公。大企業・東海郵船の御曹司だが、次期社長の椅子を捨て、瑛と同期入社で産業中央銀行に就職した。冷静沈着な現実主義者で、瑛とは真逆のタイプ。
階堂龍馬(高橋海人)
彬の弟で、優秀な兄にコンプレックスを持っている。彬の代わりに東海郵船の社長になるが、叔父の崇と晋に翻弄される。
不動公二(江口洋介)
瑛の直属の上司で、産業中央銀行の上野支店副支店長。確実性が口癖で、人情に流される瑛に厳しく当たる。
羽根田一雄(奥田瑛二)
産業中央銀行の融資部長。新人研修の時から瑛と彬の実力を高く評価していた。
アキラとあきら の簡単なあらすじ
『半沢直樹』『下町ロケット』シリーズなどで知られる池井戸潤さんの人気小説の実写化作品です。
2017年にも向井理さん、斎藤工さん主演で実写化されていました。
父親の倒産を経験し、過酷な幼少期を過ごした山崎瑛と、大企業の御曹司という恵まれた環境で育ちながらも、家業を捨てて銀行員の道を選んだ階堂彬が、奇しくも同期入社で産業中央銀行に入社します。
ふたりの銀行員としての信念は真っ向から対立し、出世と左遷という真逆の道を辿りますが、彬の実家・東海郵船の経営危機をきっかけに、ふたりは協力し合うようになるという、銀行組織や会社経営の裏側を暴いていく、社会派ヒューマンストーリーです。
アキラとあきら の起承転結
【起】アキラとあきら のあらすじ①
産業中央銀行の行員として働く山崎瑛は、数年ぶりに実家のあった場所を訪れていました。
瑛の父・山崎孝造は「山崎プレス工業」の社長で、ベアリングを製造していました。
ですが、銀行に融資を断られた孝造は、工場の経営が行き詰まり、倒産してしまいました。
瑛達家族と従業員の保原茂久は、孝造を残して夜逃げ同然で引っ越しすることになりましたが、その途中、瑛は工場の機械がトラックに乗せられて運ばれていくのを目撃しました。
トラックから転げ落ちたベアリングを拾った瑛は、そのトラックを必死に追いかけますが、つまずいて転んでしまい、見失いました。
それでも夢中で走っていると、瑛は車に轢かれそうになり、ベアリングを落としてしまいました。
道に這いつくばってベアリングを探す瑛を見かね、車から階堂彬が降りてきました。
そして、あっさりとベアリングを見つけると、ポケットからハンカチを取り出し、綺麗に拭くと、「大事なものなんだろ」と瑛に手渡しました。
瑛がお礼を言うと、彬は何事もなかったように車に乗り込み、そのまま去っていきました。
その後、孝造は親族の会社に再就職し、ある日、銀行員の工藤武史から融資資料のアドバイスを求められました。
その頃、瑛は受験生で東大を目指していましたが、家計の苦しさを知り、受験を辞めようか迷っていました。
工藤は深夜まで孝造と話し合い、瑛にも将来のために大学受験を勧めました。
銀行員に嫌悪感を持っていた瑛でしたが、父親に親身になってくれる工藤の姿に感動し、自分も人を救う銀行員になりたいと思うようになりました。
一方、大企業・東海郵船の御曹司として育った彬は、父・一磨から将来は弟・龍馬と共に東海郵船を盛り立てていくよう教えられてきました。
ですが、激しくいがみ合う一磨と叔父の崇と晋の姿にうんざりしており、東海郵船と距離を置くために、銀行員になる道を選びました。
一磨は驚きましたが、応援することにしました。
【承】アキラとあきら のあらすじ②
偶然にも同じ東大に進学していた瑛と彬は、就職先も同じ産業中央銀行でした。
ふたりは新人研修のファイナルで対決することになりましたが、会社役の彬は倒産寸前の経営状況に愕然とし、何とか融資を通すため、粉飾決算を作り出し、7000万円の借り入れを申請しました。
自信を持っていた彬でしたが、銀行役の瑛はその粉飾を見事に見破り、融資見送りを宣言しました。
その様子を見ていた融資部長の羽根田一雄はふたりを絶賛しました。
その後の彬は順調に実績を積み重ね、出世コースまっしぐらでした。
一方、瑛は担当の町工場が倒産危機にあると知り、何とか助けたいと上司の不動公二に直談判しましたが、同情だけで融資を懇願する瑛を「確実性がない」と突っぱねました。
工場長・井口の娘は難病で、海外でしか手術を受けられないため、井口は別の銀行でその費用を貯めていました。
産業中央銀行がその預金を狙っていると知った瑛は、すぐに井口に別の銀行に移すようアドバイスしました。
その口添えがバレた瑛は、福山支店に左遷されてしまいました。
かねてから人情重視の瑛のやり方に疑問を持っていた彬は、彼に冷たい視線を投げかけましたが、瑛は「自分のやったことは間違っていない」とポリシーを曲げようとしませんでした。
一方、階堂家では、崇と晋が一磨を見返すため、伊豆に高級リゾートホテルを建設すると宣言し、メインバンクを産業中央銀行から三友銀行に変更して、彬にも口出しできないように根回ししました。
一磨は反対しましたが、ふたりは強引に計画を押し進めました。
そんな中、一磨が仕事中に突然倒れ、すぐに亡くなりました。
彼の遺言書で、東海郵船の株を全て引き継ぐことになった彬に、叔父と龍馬は不満を露わにしましたが、遺言を尊重するよう、一磨の妻・聡美に一喝されました。
何とかホテルの赤字を挽回したい崇と晋は、東海郵船を巻き込もうと画策し、まだ若い龍馬を新社長に抜擢しました。
【転】アキラとあきら のあらすじ③
福山支店での功績が認められた瑛は、無事に本社に復帰することになりました。
新しく東海郵船の担当になった水島カンナは、伝説の新人研修の話を聞いてから瑛を崇拝しており、東海郵船の収支表に不明な点があると相談しました。
ふたりが調べていくと、龍馬が叔父達に嵌められ、50億円の連帯保証人にされていたことがわかりました。
ふたりはそのことを彬に報告し、彼は龍馬のところに向かいましたが、東海郵船を捨てた人間だからと聞く耳を持ちませんでした。
その後も、リゾートホテルの赤字は膨れ上がり、東海郵船の経営にまで暗雲が立ち込めてきました。
思い悩む龍馬は、昼夜を問わず働きづめになりますが、打開策が見い出せず、ついに過労で倒れてしまいました。
心配してお見舞いに訪れた彬を邪険にする龍馬でしたが、ずっと守ってくれた優しい兄の姿を思い出し、彬に助けを求めました。
それに応えるため、彬はこれまでのキャリアをあっさり捨て、産業中央銀行を退職すると、その直後に東海郵船の社長に就任しました。
一方、瑛は専務から新規プロジェクトチームへの参加を打診されていましたが、その誘いを断り、水島と共に東海郵船を助ける道を選びました。
彬は「後悔するぞ」と呆れましたが、「絶対に東海グループ全員を助ける」と言い張る瑛を、密かに頼もしく思うのでした。
【結】アキラとあきら のあらすじ④
東海郵船の社長になった彬は、早速リゾートホテルの実態を探り、叔父達が粉飾決算をしていたことを見破りました。
瑛と水島はリゾートホテルの売却を提案しましたが、0円でも引取先は見つかりませんでした。
次に瑛は、晋の東海商会本体とセット売りをしようと、大日麦酒に買収を持ちかけましたが、東海商会だけが欲しいと言われてしまいました。
悩みぬいた末、瑛は彬に東海グループの合併を提案しました。
彬は驚きましたが、叔父達に土下座をし、力を貸して欲しいと懇願しました。
その真摯な姿に胸を打たれた晋は涙を流し、崇も合併に合意するのでした。
その経緯を経て、瑛は退職覚悟で不動に稟議書を提出しました。
それは東海郵船に140億円を融資し、三友銀行に負債を返済した上で、東海商会を50億で大日麦酒に売却し、それを全額返済してもらい融資額を90億に減らすという、突飛なものでした。
不動は「確実性がない」と高をくくっていましたが、瑛からすでに合併は済んでいると聞き、稟議書に目を通しました。
不動は「読むだけだ」とそっけない対応をしていましたが、稟議書は頭取の羽根田の手に渡っていました。
彼はこの稟議書を瑛が作ったと知り、感心してすぐに承認しました。
さらに、稟議書にすでに不動のハンコが押されていたことを知った瑛は、うれし涙を流しました。
そこへ瑛の退職を撤回させようと、彬が銀行にやって来ますが、瑛から稟議書が通ったことを聞かされ、心から喜びました。
その後、「決着が着いたら瑛の故郷を見たい」と約束していた彬は、彼の育った地を訪れました。
瑛は先に到着していましたが、背後から声をかけられた瑛は、うっかりお守りのベアリングを足元に落としてしまいました。
彬はそれを拾い上げ、ハンカチで綺麗に拭くと、「大事なものなんだろ」と手渡しました。
そして、ふたりはふと、このやり取りが過去にもあったことを思い出したのでした。
アキラとあきら を観た感想
銀行が舞台だと聞いて、最初は正直、半沢直樹のようなストーリーを想像していました。
ですが、瑛と彬は全く相容れない関係ではなく、お互いに実力は認め合っていて、戦友のような関係になっていく過程に胸が熱くなりました。
父と叔父達の確執と、彬と龍馬の関係がリンクしているのも印象的だったし、金持ちだから幸せとは限らないということがよくわかりました。
瑛は過酷な過去を背負っているけれど、身内のドロドロした部分とは縁遠く、純粋に育ったという意味で、彬が「お前は育ちがいいんだな」と言ったのも深いと思いました。
最初は自由な瑛が羨ましくて、嫌味を込めて言っている感じでしたが、最終的には彼に感化されて、心から親しみを込めて言っているのがわかってホッとしました。
同じ名前、そして過去に一度出会っただけのふたりが、同じ目標に向かって共闘するという流れは、実は必然で宿命だったと最後にわかるところも、とても三木監督らしくて良かったです。
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