映画「his」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|今泉力哉

his 今泉力哉

監督:今泉力哉 2020年1月にファントム・フィルムから配給

hisの主要登場人物

井川迅 (宮沢氷魚)
都会から田舎に移り住み、自給自足の物々交換で生活している。

日比野渚 (藤原季節)
迅の元カレで、空を連れて迅の元を訪れる。

日比野玲奈 (松本若菜)
渚の元妻で、空の親権を争っている。

吉村美里 (松本穂香)
移住サポート課の美里は迅の世話をして、だんだん迅に惹かれていく。

日比野空 (外村紗玖良)
渚の娘。

his の簡単なあらすじ

日比野渚にフラれた井川迅は都会を離れて田舎に移り住み、自給自足で生活しています。

ある日、渚が娘の空を連れて迅に会いに来て、動揺を隠せない迅に渚は友達として会いに来たと言うのでした。

渚は迅と別れたあと女性と結婚し、忙しい妻に代わって空を育てていましたが、実は男性が好きだということを打ち明けてしまい別居となり、今は空の親権をめぐり離婚調停中です。

子どものことはよくわからない迅でしたが、空に懐かれてだんだん家族のようになっていきます。

そして、今まで隠してきた互いの気持ちを打ち明けて、迅と渚は元のような関係に戻っていくのでした。

his の起承転結

【起】his のあらすじ①

昔の恋人との再会

恋人同士だった井川迅と日比野渚でしたが、渚は迅とセーターを取りかえっこした後別れを切り出しました。

あれから時が過ぎ、迅は都会を離れ白川町で田舎暮らしをして、作った野菜を猟師に分ける代わりにイノシシの肉をもらう自給自足の生活をしています。

猟師の緒方は、若いのにどこか達観した迅のことをいつも気にかけてくれていました。

迅が家に帰ると、小学生くらいの女の子と渚がいて、その女の子は渚の娘・空でした。

渚は、オーストラリアで知り合った通訳の女性・玲奈と仲良くなり空を授かりました。

ゲイの渚は自分が子どもを持つなんて夢にも思ってなかったため、玲奈に産んでもらい結婚したのです。

なんで来たと言う迅の問いかけに、渚はなんとなく会いたくなったとだけ言うだけでした。

これからどうするんだと聞く迅を、渚ははぐらかします。

町では、迅の家に子連れの親子が来て訳アリなのではとすぐに噂が広まってしまいました。

移住サポート課の美里は移住してきた迅に対して、ここで暮らすコツを教えてくれたりととても親切でした。

人懐っこい空は、町の人たちに馴染んで空のおかげで迅も町の人と交流するようになります。

家庭裁判所に行く渚は空を迅に預けて東京に行き、最初子どもに興味なかった迅も空と一緒にいるうちに子育ての大変さや喜びを感じるのでした。

渚は美里に送ってもらい帰宅し、迅は美里から食事の誘いを受けますが、戸惑う迅を見た美里は、渚も空も一緒にと言い直します。

酔っぱらった渚を起こした迅に、どさくさまぎれに渚はキスしますが蹴とばされてしまうのでした。

はっきりしたことを言わない渚に対して迅は、自分はどの立場で子育てをすればいいのかと聞きますが答えてくれません。

互いの気持ちを打ち明けないまま、迅は渚と空と月日を重ねていきましたが、いきなり玲奈が空を迎えにきて、空を連れて行ってしまいます。

【承】his のあらすじ②

渚の過去

家に二人きりになってしまった迅と渚でしたが、迅は渚に玲奈とやり直せと言います。

渚は、玲奈や空を愛して生活を守ることで一人前の普通の男になれたと感じていましたが、やっぱりゲイということを告白すると、玲奈は騙されたと怒ってしまったのでした。

結婚しながらも男性と浮気していた渚でしたが、男性なら誰でもいいというわけでなく迅を求めていたと迅に告白します。

勝手なことを言う渚に迅は怒り、謝る渚を突っぱねますが、結局二人は元の関係に戻ります。

玲奈と暮らし始めた空は、子育てと仕事の両立が難しくなり、まとわりついてくる空に厳しく接し、ワガママをいう空に手をあげてしまうのでした。

母の手を借りたくない玲奈でしたが、やもおえず母に空をみてもらうことにしました。

ストレスからだんだん酒量が多くなり、玲奈は空の世話をしなくなります。

空は、迅に書いてもらった住所を頼りに渚の元へ一人で向かうのでした。

渚は弁護士から、たとえ同性愛者のカップルだとしても子どもに良い影響があれば大丈夫だからとにかく定職につくことをアドバイスされます。

警察に保護された空を迎えにいくと、空は自分がママの邪魔になると言って泣くのでした。

それから渚は、パイプオルガンの工房で働きはじめ、それは地味な仕事ながら空のために頑張るのでした。

一方、美里に告白された迅は断りますが、その後の迅と渚の様子を見て美里は何かを勘付くのでした。

【転】his のあらすじ③

キス

家で迅と渚がキスするところを空が目撃してしまい、そのことを空は友達に話してしまうと嘘つき呼ばわりされムキになり、町の人たちにも知られ場が凍りつきます。

渚は自分の勝手な行動のせいで、迅の居場所を奪ってしまうことを詫びましたが、せっかく仕事が決まった渚のためにもここで暮らしつづけます。

以前の迅は、ゲイであることがバレそうになるとヘラヘラと笑ってごまかし、渚との関係を否定していました。

猟師の緒方は迅がゲイだと知っても今までのように接し、白川町の人は噂好きだけど根っからの悪人はいなくて昔から外から来た人に優しいから気にするなと励まします。

さらに「誰を好きになったって勝手や、好きに生きたらええ」と言ってくれて、渚や空とも交流を続けてくれましたが、優しかった緒方はぽっくり亡くなります。

空は、自分がキスの件を話したから迅がどっか遠くに行っちゃうと不安になりますがそんなことは無いと分かると「パパは迅が好きで迅はパパが好きで何も変じゃない」と迅に言いました。

迅は緒方の葬儀の席で、町の人を前にして同性愛者だという事を告白し、ここに来て緒方や美里に優しくしてもらい、優しくないのは世界じゃないくて自分だと気付かされ自分が優しくなれば世界も優しくなると思ったと話します。

みんなの前で渚を愛していると言うと、町の人は歳をとると男も女も訳わからんからどっちでもいいと笑い飛ばしてくれるのでした。

【結】his のあらすじ④

シンプルな和解

迅は空と三人で生きていきたいと渚に打ち明けます。

空の親権を得るための裁判は佳境を迎え、裁判官が同姓愛への偏見があり、明らかな差別を感じる渚でしたが、渚の弁護士には同性愛者ということを特別視させないように裁判を進めていくだけと言われます。

美里が証人尋問を引き受けてくれて、空が二人と暮らしていても笑顔で過ごしていることを証言してくれましたが、空が二人がキスをしていたのを見た話を向こうの弁護士につつかれてしまいます。

空は謝ればママは許してくれると言い、仲直りしてみんなで一緒に住もうというと空をみて渚は空はママがとても好きなのだと改めて思います。

裁判で渚が不利になって、渚の弁護士は玲奈には子育てと仕事の両立が厳しいことを責めます。

さらに空が家出をした時、警察にママはお酒を飲んで寝ているからパパに迎えに来て欲しいと言ったという証拠を提出し、さらに玲奈が泣くまで責めます。

いたたまれなくなった渚は、裁判をやめ和解を申し立て、今までの自分の非を認めた上で空とのかけがえのない時間をくれた妻に感謝の気持ちを述べ謝罪しました。

そして、玲奈に空のことを託すと決めるのでした。

渚の弁護士は、もう少しで勝てたと悔しがりましたが、あなたの決めた答えが最善の答えだと言ってくれました。

「ママにごめんなさいって言えば許してくれたでしょ?」と空に言われ、空と別れる渚は号泣し、迅に抱きしめられるのでした。

小学校に上がった空は、環境の変化と祖母の厳しい教育により不安定になり学校になじめず、甘やかして欲しいと祖母にお願いしても理解してくれません。

結局玲奈は、渚と迅の元へ空を連れて行くのでした。

his を観た感想

ラスト、自分の母と上手く行ってない玲奈が自分は自転車に乗れないと告白し、その玲奈の言葉で、特に語らず玲奈の心情を伝えるのは秀逸だと感じます。

玲奈は結局、自分が母にされてきたことを空にしようとしていることと、空には自分と違って自転車の練習に付き合ってくれる父親がいることに気が付いたのでしょう。

渚は同性愛者だけど、それは子育てのハンデにはなっていなくて、むしろ厳しい母親に育てられた玲奈の方が子育てのハンデになっているのだと感じます。

この映画は、大きな意味での愛情の物語だと感じました。

玲奈と渚と迅は、みな空の近くに住んで協力し合うことが一番ベストだと思います。

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