映画「ほとりの朔子」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|深田晃司

映画「ほとりの朔子」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|深田晃司

監督:深田晃司 2014年1月に和エンタテインメントから配給

ほとりの朔子の主要登場人物

吉野朔子(二階堂ふみ)
ヒロイン。有名大学を目指す浪人生。成績は優秀だが集中力がない。

若林海希江(鶴田真由)
朔子の母・幹子の妹。地域研究で東南アジアを飛び回り翻訳家としても活動中。仕事と恋愛はきっちり分ける。

若林水帆(渡辺真起子)
海希江の姉。地元の芸術家たちとグループ展を開いている陶芸家。

亀田兎吉(古舘寛治)
水帆の元恋人。偽装ホテルの支配人。金のためには何でもやる。

亀田孝史(太賀)
兎吉の兄の息子。高校生だが現在は不登校。シャイで優柔不断。

ほとりの朔子 の簡単なあらすじ

第一志望の大学に落ちた吉野朔子は気分転換のために、おば・若林海希江と一緒に海辺町で過ごすことにします。

模試の成績と大学に合格することしか頭になかった朔子が知り合ったのは、被災地から疎開してきた男子高校生の亀田孝史です。

孝史や彼のおじとの交流を通して少しだけ成長した朔子は、夏の終わりとともに東京へと帰るのでした。

ほとりの朔子 の起承転結

【起】ほとりの朔子 のあらすじ①

都会の浪人暮らしを海と花でリフレッシュ

8月26日の日曜日、大学受験に失敗した吉野朔子は母親の妹に当たる若林海希江に誘われて海辺の町へとやって来ました。

海希江の姉・水帆がオランダやフランスへの観光旅行で家を空けるために、1週間くらい留守番役として滞在する予定です。

水帆は以前にお付き合いをしていて別れた後もたまに呼びつけてこき使っている、亀田兎吉の運転する車で空港まで送ってもらいます。

この町に来てから朔子は音大を受ける訳でもないのにキーボードを弾いたり、持ってきた水着に着替えて海水浴をしたりとほとんど受験勉強はしていません。

海希江はインドネシアの小説の翻訳に取り掛かっていて、物語の中には節黒千翁という珍しい花が登場します。

この近くのセタ川のほとりに咲いているという話を聞いた海希江は、朔子を誘って見に行くことにしました。

途中でサイクリングをしていた兎吉から紹介されたのはおいの孝史で、ひとつ年下の高校生ということもあって朔子は親近感を抱いていきます。

【承】ほとりの朔子 のあらすじ②

故郷から逃げてきた少年

兎吉がほとりに置き忘れた麦わら帽子を拾った朔子は、カワカミ建設という不動産屋が経営しているホテルまで届けに行きました。

表向きはビジネスホテルという名目で営業していますが、実際にはラブホテルとして援助交際や売春の温床になっているために評判は良くありません。

ほとんど高校に行っていない孝史もここでアルバイトをしていて、兎吉に言われて朔子を家まで送っていきます。

この町に住んで1年ほどだという孝史は、生まれた場所に関しては「嫌いで戻りたくない」と言葉を濁すだけです。

孝史の故郷が福島県であること、両親は仮設住宅に入居していること、原発事故の影響を心配してひとりだけ避難してきたこと、兎吉に怪しげな仕事を手伝わされていること。

好き勝手に孝史にまつわるうわさ話をしているのは、普段から水帆の家に出入りしている芸術家仲間のひとりです。

孝史が苦労していることを知った朔子はランチをごちそうしようとしましたが、学校のクラスメート・松下知佳が割り込んできたために邪魔されてしまいました。

【転】ほとりの朔子 のあらすじ③

ほろ苦いバースデーケーキ

9月1日、兎吉の娘・辰子のバースデーパーティーに海希江と朔子も招かれましたが孝史の姿だけがありません。

千佳とデートの約束があってパーティーに出席できそうにないという兎吉の言葉を聞いて、朔子は落ち込んでしまいました。

普段は間借りしているアパートから女子大に通っている辰子は、兎吉と一緒にカラオケを歌うほど親子の仲はうまくいっています。

兎吉が風営法に違反してまでホテルの回転率を上げるのに躍起になっているのも、辰子の学費を稼ぐためです。

喫茶店でアルバイトをしたり詩を書いて自費出版をしたりとアクティブな彼女を見ていると、朔子は世間知らずな自分が恥ずかしくなってしまいました。

悪酔いした辰子が眠りこけたためにお開きになった頃、バスがないために歩いて帰ってきたという孝史がようやく顔を見せます。

明日の午後1時に倉野坂下中央公園で開催されるイベントに千佳と一緒に行く約束をしたと嬉しそうな孝史は、朔子の気持ちに気がついていません。

【結】ほとりの朔子 のあらすじ④

ひと夏の締めくくりはプチ家出

前々から脱原発のための市民運動に熱中していた千佳の目的は、福島からの避難者である孝史をシンボルとしてデモ集会に引っ張り出すことです。

詳しい説明もなしにステージに設置されたマイクの前に立たされた孝史は居心地が悪くなって会場を脱走してしまい、インターネット中継で一部始終を見ていた朔子も家を飛び出して追いかけました。

兎吉のホテルの前で合流した朔子は、どこか遠くの土地に行きたいという孝史の家出に一晩限定で付き合うことにします。

線路に沿って歩き続けていたふたりがようやく小さな無人駅のホームへとたどり着いたのは、日付が変わった9月3日のことです。

朔子はフェンスに寄りかかったままで眠りこけてしまい、孝史も疲れ果てて動けません。

朝日が射し込み始めた頃には孝史も心配をかけた兎吉に謝ることを決意し、別れ際に朔子とキスを交わします。

東京に戻って本格的に受験勉強を再開すること、いつかまたこの町に遊びに来ることを約束するのでした。

ほとりの朔子 を観た感想

オープニングで都心から田園へと向かう電車の座席で、日射しを浴びながら微睡む吉野朔子役の二階堂ふみに魅せられてしまいました。

異性とのコミュニケーション能力がいかにも低そうな亀田孝史が、初対面で言葉を失ってしまうほど見とれてしまうのも無理はありません。

滑り止めの大学もすべて不合格になって自分のことを「空っぽ」と皮肉る朔子に対して、励ましのメッセージを贈る孝史のふところの深さも伝わってきます。

大学のランキングや模試の結果だけで他人の全てを判断していた朔子の小さな世界が、少しだけ広がっていくかのようなラストも心地よかったです。

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