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死の淵で扉を開く者
死の縁を垣間見た生き物がより強靭になる事を無惨は知っています。それは死を回避する為、通常生きていく上で不必要な感覚や力の扉が開かれるからでした。扉を開けない者は死んでしまうのです。
丹次郎が妹・禰豆子の力を借りずに刀身を赫くした事について、無惨は死の淵で扉を開いたと称賛します。他の柱達についても各々のやり方で刀身を赫くしていました。けれど無惨は皆が”あの男”緑壱には遠く及ばない事を実感していました。戦いの渦中、無惨は丹次郎と刀を交えながら、緑壱の赫刀による斬撃は今丹次郎がもたらすものと比にならなかったと緑壱の姿を思い起こします。
丹次郎は六つ目の型『日暈の龍・頭舞い 火車(にちうんのりゅう・かぶりまい かしゃ)』を繰り出します。やっと半分だと丹次郎は必死に食らいつきます。脳も心臓もぐるぐると動き、丹次郎の身体は限界を極めました。激しい攻撃に押されて、丹次郎の刃は無惨の胴に届きません。速すぎる動きに、丹次郎は肺を殴られているかのような感覚を覚えます。また、四肢が引き千切られる様に痛み、心臓は破裂してしまいそうです。
今この瞬間の一秒に集中する丹治郎
丹次郎が夜明けまで一時間だと考えたその時、身体のバランスを崩して一気に無惨に攻められます。丹次郎は今この瞬間の一秒だけに集中するよう自分に言い聞かせました。そうでなければ剣が鈍り、手足が鈍ってしまうと身に染みて分かります。夜明けまで一秒を繰り返し繋ぐ事に集中しました。そして丹次郎は『幻日虹 灼骨炎陽(げんにちこう しゃっこつえんよう)』を放ちました。
無惨はその技を受け、丹次郎の技の精度が落ちてきていると感じます。丹次郎のすぐ元に戻ってしまう赫い刃を見ながら、所詮はこの程度だと考えました。無惨はまた緑壱の姿を思い起こして、”あんなもの”そうそうに生まれてなるものかと畏怖します。
無惨の身体を蝕む薬の効果
決着がつかない戦いの中、無惨は異変に気がつきました。丹次郎の動きが精彩を欠いている今、本来なら無惨が止めを刺していておかしくない状況です。接戦を強いられている理由は、無惨の動きも遅くなっている事でした。
無惨は珠世が原因だろうと考えます。珠世は無惨の身体に何を施したのか、無惨に用いた薬は”人間帰り”の効果を持つものではないのか、と取り込んだ珠世の細胞に問いただします。
珠世の細胞は、無惨に使った薬は人間に戻す効果のものだったと答えます。『それと…』と他の効能があるかのように続きをほのめかして、『無駄に増やした脳味噌を使って考えたらどうだ?』と無惨を挑発するのでした。
苛立った無惨は珠世の細胞を握り潰し、今度は珠世の細胞に残る記憶を読み始めます。
薬は複数の薬の掛け合わせでした。人間に戻す薬が効かない可能性を考慮した上で、一分で五十年老いる老化の薬が使われていました。
珠世の細胞から記憶を漁り、無惨は自分の身体に老化の薬が作用していると確信します。また、丹次郎やその他の柱程度に決着をつけられないのは、身体が老化の進行を食い止める為にエネルギーを使ってしまっているからだと推測しました。
無惨は投薬から経過した時間を数え、自分の身体が九千年も老いていると気づき衝撃を受けます。頭髪の色が戻らない等の兆候からもっと早くに気がつくべきだったと悔やみました。
ついに繋がった日の呼吸十二の型
かすがいガラスが夜明けまで五十九分と告げます。そして丹次郎はついに『飛輪陽炎(ひりんかげろう)』から始め『陽華突(ようかとつ)』で日の呼吸十二の型を繋げることに成功しました。十二の巡りを夜明けまで繰り返せと、自らに命じました。第194話に続きます。
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