前話のあらすじはこちら
エミの噂の収束
2週間後の5月上旬、ポルノ画像流出事件以来ずっと授業を休んでいたエミは、アツシに連れられ大学に行きます。アツシの計らいで画像はコラージュだったと、噂は収束していました。
不安でいっぱいのエミでしたが、周囲の友人達から被害に遭って大変だったねと、声を掛けられ少し安心した様子を見せます。
2人が授業へ向かう途中、すれ違う男子学生が総額3億1200万円の被害が出た現金輸送車襲撃事件について話していました。それを耳にしたアツシは冷や汗を流し、動揺を隠せません。突然の事にエミはアツシの体調を心配しますが、朝から汗を流したくなってしまった等と嘘をついて誤魔化しました。
サクラが起こした現金輸送車の襲撃事件
2週間前、アツシがユメノを自宅に招き入れると、知らぬ間に運び込まれた段ボール箱に気が付きます。中身は数えきれない程の大金でした。『あいをこめて、あつしくん おかねもち』というメッセージと拙いイラストが描かれた紙が同封されており、アツシはサクラの仕業であると確信しました。
ユメノもテレビのニュース速報で、現金輸送車襲撃事件を知り、この部屋にあるお金が盗まれたものだと察します。しかし、アツシが盗んだ訳ではないと信じていました。そこで警察へ相談の電話を掛けようとします。
運び込まれた強奪金の隠滅
アツシはユメノを制止し、思考を巡らします。サクラの仕業であれば、憑依の能力を使った事は明白。警察が異能を持つサクラの犯行を見破る事は難しい。アツシの潔白が証明されても真犯人が見つからなければ、お金が家から出てきたアツシへの関心は高まる。マスコミや週刊誌が両国アツシの私生活を暴き始め、それを見た世間はアツシに『私刑』を下す。そのように考えたアツシは警察に相談しないという選択をします。
アツシはユメノにこの件を見なかった事に出来るかと聞くと、ユメノは戸惑います。続けてアツシは、犯人ではないのにお金が出てきた事が知られれば、疑いの目が向けられユメノにも会えなくなる、余計なしがらみは望まないと説得します。それを聞きユメノは、『アツシくんがそうしたいなら、私はそれに従う』と、内々で処理する事に同意しました。
アツシはユメノの飲み込みの速さに、流石は”好意90オーバー”と安堵します。女がいてお金に困らない『平穏な日常』を守る為、強奪金の隠滅を決意しました。それと同時に、サクラを放って置けば今後も生活を脅やかされると考え、見つけて捉える決断をします。
サクラを誘き出す作戦
エミが久しぶりに大学へ出た日の授業後、アツシはエミのマンションに立ち寄ります。目的はサクラを誘き出す事でした。部屋の窓を開け、エミと何度も交わる事で嫉妬心の強いサクラが止めに来ると考えたのでした。
予想に反してサクラが現れる事はなく、夜にアツシはエミの部屋を後にしました。アツシは自分のマンションに帰る道中、何故サクラが来なかったのか考えていました。近くにいなかったのか、あるいは何か制約があるのか。そう考えて、まだ警察の聞き込み一つ受けていないのだから焦る必要はないと思い、明日別の女で誘い出す事にします。
アツシは女の安全の為にも、アツシの話をすっと信じる好意90オーバーを明日呼び出そうと考えながら、マンションに着き自分の部屋のドアを開きました。
意表を突かれた更なる被害
足元に水の感触を覚え、息を呑みます。水回りの蛇口が開け放たれ、部屋は水浸しでした。リビングの壁には見覚えのある字で『あいをこめて あせながしてね』と、メッセージが残されています。
サクラが何故こんな事をするのか、考えようとしてはっとします。今朝のエミとのやりとりを思い出しました。『朝から汗でも流したくなっちまったぜ』と言ったアツシを、サクラは近くで見ていたのでした。鍵は変えたばかりなのにまた部屋に入られた事でアツシは焦ります。
アツシの手の中で、スマートフォンが鳴ります。『警視庁、ドライブレコーダーの動画公開へ』というニュースの通知でした。第5話へ続きます。
コメント