「元彼の遺言状」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|新川帆立

「元彼の遺言状」

著者:新川帆立 2021年1月に宝島社から出版

元彼の遺言状の主要登場人物

剣持麗子(けんもちれいこ)
山田川村・津々井法律事務所に勤務する女性弁護士。気が強く、高圧的。頭も切れて仕事も出来るが、トラブルを起こしがち。

森川栄治(もりかわえいじ)
麗子の大学時代の元彼。奇妙な遺言状を残して亡くなってしまう。実は森川製薬の創業者一族の御曹司だった。

篠田(しのだ)
栄治の幼馴染で、貿易会社の御曹司。麗子とは大学のゼミが同じだった。森川家とは家族ぐるみの付き合い。

元彼の遺言状 の簡単なあらすじ

「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」と奇妙な遺言状を残して亡くなった大手製薬会社の御曹司、森川栄治。

大学時代に3ヶ月だけ付き合った「元カノ」である剣持麗子の元にも知らせが届く。

森川家主催の「犯人選考会」に参加することに。

元彼の遺言状 の起承転結

【起】元彼の遺言状 のあらすじ①

最恐女弁護士、剣持麗子

日本最大級の大手法律事務所に勤める剣持麗子は、やり手弁護士。

同期の弁護士と比べても2倍、3倍の働きをしていました。

でも気が強く、周りと協力する気はゼロ。

チームで動く法律事務所のやり方に合わないこともありました。

意気揚々と参加したボーナスを提示される面談では、減給が決定。

仕事ぶりは評価するけれど、チームプレイが出来ないと評価が落ちてしまいます。

自分の働きっぷりと自分が事務所に与えた利益に見合わないと激怒した麗子は、勢いのまま事務所を辞めてしまいます。

そんなとき麗子の携帯電話に一通のメールが届きます。

差出人は元彼の森川栄治。

そこには栄治が亡くなったこと、葬儀が済んだことの知らせでした。

驚いた麗子はすぐに大学のゼミが一緒だった篠田に連絡をします。

後日篠田と待ち合わせをして会うことに。

そこに現れたのは少し小太りになった篠田です。

篠田から聞かされたのは栄治が不思議な遺言状を残したこと、弁護士としての意見を聞きたいとのことです。

創業者一族の御曹司だった栄治が残した遺産はなんと約60億。

60億を自分を殺した犯人に譲ると言うのです。

【承】元彼の遺言状 のあらすじ②

犯人選考会

麗子に相談を持ちかけた篠田は、もしかしたら自分が犯人なのかもしれないと言い出します。

自分はインフルエンザが治ったばかりだったが、パーテで会った栄治にうつしてしまったと言うのです。

麗子は栄治の死因とは直接関係あるとは考えられないものの、篠田を犯人に仕立て上げて大金を受け取ることを目論みます。

篠田の代理人として、そして栄治の元カノとして麗子は犯人選考会に参加するのです。

犯人選考会ではそこで森川製薬の上層部の人たち、すなわち栄治の親族たちと麗子は面談をすることになります。

麗子は上層部の人々に自分が財産を受け取ったときのメリット、会社に与える利益などを説明して一次選考をクリアしたのです。

森川製薬が再来年に発売予定の新薬について、経営戦略を交えながらプレゼンしたことで好感触を得ます。

栄治の遺言状には歴代の元カノたちに軽井沢の土地と別荘を分配するとも書かれていて、その手続きをするために麗子は軽井沢に向かいます。

そこで森川家の人たちや栄治の愛犬の主治医の堂上先生、元カノたちと出会ったのです。

軽井沢から帰ってきた夜、遺言状や元カノリストが入っていた金庫が突如盗まれます。

さらに栄治の顧問弁護士だった村山が何者かに殺されるという事件まで発生するのです。

【転】元彼の遺言状 のあらすじ③

事件の真相に迫る

警察の調べによると村山は死の直前にタバコを吸っていて、タバコ本体に毒が塗られていたと報告が。

さらに栄治の遺体には注射痕が見つかり、直接の死因はインフルエンザではないとハッキリします。

調査を進めるとどうやら栄治は森川製薬が開発中だった新薬を飲み、その副作用で亡くなってしまった可能性が出てきたのです。

また注射痕は栄治自身が打ったように偽装されていたことまで判明します。

殺人の可能性が出てきたこともあり麗子の依頼人である篠田は、依頼を取り下げてしまいます。

数億という遺産が自分のもとには入ってこないと分かり、落ち込む麗子。

一方で盗まれた金庫を血眼になって探していたのは、栄治の叔父である銀治でした。

麗子は銀治に協力し、なんとか金庫を見つけ出します。

金庫の中を除くと栄治が残した遺言状、そして2通の親子鑑定書があったのです。

鑑定書から判明したのは銀治と副社長の平井が親子であること、栄治には血の繋がった子どもが居たことです。

【結】元彼の遺言状 のあらすじ④

真犯人

亡くなった被害者の栄治は自分の愛犬である獣医師の奥さんと不倫をしていたことが分かります。

主治医の堂上先生は妻との不倫、自分が育てている息子が実は栄治の子どもだと既に知っていました。

ところが栄治の命が限られたものであること、栄治が遺言状を残そうとしていることを知ります。

元カノリストには自分の妻の名前もあり、妻の不倫が公になることを恐れて栄治を殺してしまうのです。

死体の解剖をしても見つかりにくい塩化カリウムを静脈注射し、栄治が自分自身で新薬を打って副作用で亡くなったと見せかけたのです。

遺言状が発表されたあとにも元カノリストを所有していた村山を殺していたのです。

栄治がなぜ奇妙な遺言状を残したのかというと巨額の遺産を受け取った相手に罪悪感を抱かせ、自分の復讐を達成したいという思いからでした。

栄治の遺産の半分ほどは国庫に帰属され、残り半分は実の息子である亮のものになりました。

当然麗子のもとには1円も残りません。

幼い亮には一連の事実や事件はまだ伏せられ、養子として引き取られた先で徐々に説明していくということで落ち着きます。

元彼の遺言状 を読んだ読書感想

2021年の「このミステリーがすごい」の大賞作品というだけあって読みやすく、面白いです。

エンターテイメントに振り切った作品で、人を喜ばす楽しませるように工夫されています。

しっかりと構成が練られているので、最後まで読んでも飽きません。

伏線も散りばめられていて、読み進めるのが楽しくなりました。

何より奇妙な遺言状の存在が読者の興味をそそり、そこからどのようにしてストーリーを展開させるのか気になる作品です。

またはじめは主人公の麗子はお金ばかり気にかける嫌な女の人という印象でしたが、実は愛情深く思いやりもある。

直接的な表現はありませんが、文章て麗子の性格を上手く表現しているのは関心しました。

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