監督:成島出 2023年5月にキノフィルムズから配給
銀河鉄道の父の主要登場人物
宮沢政次郎(役所広司)
主人公。岩手県花巻で質屋を営み、跡取り息子の賢治に期待しますが、家を継ぐのを拒み自分で選んだ道を進む賢治を支えます。
宮沢賢治(菅田将暉)
主人公・宮沢正次郎の長男。稼業の質屋を継ぐのを拒み、農業、人造宝石の事業、宗教などの道に進み、父の支援を受け続けますが、全て失敗します。妹の死がきっ かけで、物語を書き始めます。
宮沢トシ(森七菜)
主人公・宮沢正次郎の長女。賢治の妹。成人した後は女学校の教師になり、兄の賢治を支え、励まし、物語を書くことを勧めます。
宮沢イチ(坂井真紀)
主人公・宮沢正次郎の妻。賢治の母。自由に自分の好きな道に進む賢治を政次郎と共に支え、静かに見守っています。
宮沢清六(豊田裕大)
主人公・宮沢正次郎の次男。賢治の弟。兄の代わりに父の力になって稼業を守っています。
銀河鉄道の父 の簡単なあらすじ
質屋を営む宮澤家に男児が誕生し、賢治と命名されます。
賢治は跡取り息子なのですが、稼業を継ぐ事を拒み、農業や人造宝石の仕事に携わり、さらに宗教にまでのめり込む始末です。
そんな賢治をたしなめつつも、両親は賢治への援助を続けます。
やがて妹・トシが結核で死亡してしまい賢治は悲しみにくれます。
政次郎の勧めもあり、妹との約束でもある物語を書くことに没頭しますが、やがて、妹と同じ結核で世を去ります。
賢治の死後も、家族は作品を世に送り出し続けました。
銀河鉄道の父 の起承転結
【起】銀河鉄道の父 のあらすじ①
宮沢家は喜助が一代で成功させた裕福な質屋で、現在の家長は喜助の息子・政次郎です。
宮沢家に跡取りの男児が誕生し、賢治と命名されます。
政次郎は家長たるものは常に威厳を保たなければならないと思いながらも、積極的に子育てに加わります。
子供の賢治が病気で入院した時も、看病は女達にさせるのが当たり前なのですが、父親としての気持ちが勝り、看病を母親に任せず自分がすると言い張って入院中の賢治から離れず、わらべ歌を歌って寝かせつけるほどでした。
明治時代では珍しい父親の姿です。
小学生になった賢治は成績優秀でしたが、悪ガキでした。
悪友達と遊んでいて火事を起こしてしまった事もありましたが、政次郎は自分ではないと否定する賢治を深く追求することも厳しく叱る事もしませんでした。
賢治の将来に傷がつくことを避けたのです。
政次郎は賢治の下の子供達にも子煩悩な父親で宮沢家は温かい家庭でした。
賢治は小学校を卒業後、中学校に進学しました。
「質屋に学問は必要ない」と進学に反対する賢治の祖父・喜助を制して政次郎は許可したのです。
【承】銀河鉄道の父 のあらすじ②
政次郎は中学校を卒業して花巻に戻った賢治に稼業の質屋を継ぐように言いましたが、質屋は農民から搾取していると反発し、農民を助けたいと思っていた賢治は農業学校への進学を希望しました。
政次郎は中学校の成績が良くないことを理由に渋りましたが妹・トシが進学させて卒業してから質屋をつがせればいいのではないかとの助言で森岡高等農林学校に進学しました。
トシは高等女学校を卒業して、東京の日本女子大学校に進学しました。
夏休みに帰省した賢治は人造宝石の事業に携わりたいなどと言い出し、政次郎は驚いたり怒ったり呆れたりしましたが、結局は許して援助しようとします。
母・イチは賢治は政次郎に褒めてもらいたいのではないかと思っていました。
何時ものように二人を静かに見守っています。
冬になり、トシが帰省してきましたが喜助は認知症が進み程なくして他界しました。
宮沢家は浄土真宗でしたが賢治は日蓮宗にのめりこむようになり、入信して東京に家出してしました。
いろいろな事に挑みますが結局何も身につかず、何もできなかったのです。
そんな中、トシが病に倒れたのですぐ帰れと実家から電報が届きました。
【転】銀河鉄道の父 のあらすじ③
常に賢治の才能を信じ、励まし、応援し続けてくれた妹・トシが結核になったのです。
急いで実家に帰る途中原稿用紙に目が留まり沢山の原稿用紙を買い、トシのための物語を書きはじめました。
トシは卒業後女学校の教師になっておりましたので周囲との隔離の為に辞職し、一人で別荘に移り住みましたがトシの病状は思わしくなく、日々弱っていきます。
ある日の別荘には病床の妹・トシの為に物語「風の又三郎」を書いてそれを読んで聞かせる兄・賢治と嬉しそうに物語を聞く妹・トシの姿がありました。
賢治はトシを喜ばせたい思いで物語を書き続けましたが、トシの病状は悪化していきます。
トシは生まれ変わったら強い体で人の幸せのために生きたいと言い、政太郎は自慢の娘だと褒めました。
雪の降る寒い日、トシの容態は急変します。
家族が見守る中、淡雪をとって欲しいと賢治に頼みます。
庭の松の木に積もった雪をお椀にすくって与えます。
トシは息を引き取ります。
トシの葬儀で賢治は題目を唱えながら泣き崩れました。
妹の死後打ちひしがれている賢治に物語を書く事を勧めた政次郎は「俺が宮沢賢治の一番の読者になる」と言い、賢治を見守り、支え続けます。
【結】銀河鉄道の父 のあらすじ④
妹・トシの死後、賢治は作家の道を歩き始めますが、作品は高い評価は受けますが、売れることはなく、本屋に大量に売れ残っていました。
政次郎はそれらの作品全て買い占め、トシの願いでもあるからと、家族全員で賢治を励まし支え続けます。
その後賢治は地元農民と農業についての勉強会の傍ら創作活動を続け、政次郎は質屋をたたみ、清六が店を受け継ぎ「宮沢商会」を創業しました。
本当はお父さんの様になりたかったがなれなかったので、子供の代わりに物語を生んだのだという賢治に、政次郎はだからお前の物語が好きなんだろう、孫だものと言葉を返しました。
この頃から賢治は体調を崩すことが多くなり、政次郎は吐血した賢治を病院に連れていき、診察を受けさせました。
トシと同じ結核と診断されましたが政次郎はどうしてもその事実が受け入れられませんでした。
賢治の病状は悪化していきます。
そんなある日、農民が肥料のことで相談に来ました。
賢治は病の身で面会し助言しましたが、その農民が帰った直後に倒れました。
危篤状態になった賢治の枕元には、政次郎、イチ、清六がおりました。
賢治は弟・清六にこれまで書き溜めた作品を世に出して欲しいと頼み、息を引き取りました。
生前に書かれた作品を託された家族は世に送り出し続けました。
銀河鉄道の父 を観た感想
宮沢賢治の父・政次郎の物語というよりは、宮沢家の物語だと思います。
家族の結びつきや温かさを感じました。
親バカの父とわがままなダメ息子の親子喧嘩のなかにも温かい親子関係が感じられます。
似た者親子だと思って笑えました。
賢治は自由に我が道を行くように見えますが、全ての行動は地域や人の為に働くという精神から成り立っています。
父・政次郎は子供達の心に寄り添い、導き、育てていたのです。
賢治の作品が生まれた背景にはこの父と母に育てられ、この温かい家族で育った事があり、これらの作品が多くの人々に愛され指示されているのも家族が世に出し続けたからです。
トシと賢治はあまりにも短い生涯でした。
賢治が結核と診断されても受け入れられない政次郎の姿を見るのは辛かったです。
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