「黒うさぎたちのソウル」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|木村紅美

「黒うさぎたちのソウル」

著者:木村紅美 2011年2月に集英社から出版

黒うさぎたちのソウルの主要登場人物

島袋麻利(しまぶくろまり)
ヒロイン。両親ともに沖縄の出身だが都内で育つ。ビジュアル系に夢中。

昇奈保子(のぼりなほこ)
麻利の幼なじみ。奄美地方の血を引いている。民謡教室に通っているが最新のヒット曲にも詳しい。

敬太(けいた)
麻利の部活仲間。陽気で軽音楽部の人気者。

佐山(さやま)
麻利の元彼。とつぜん理由もなく暴力を振るう。

SUGIちゃん(すぎちゃん)
麻利たちが応援していたグループの元メンバー。現在ではソロ活動中。

黒うさぎたちのソウル の簡単なあらすじ

沖縄2世の島袋麻利は奄美大島にルーツを持つ昇奈保子と、共通の趣味がきっかけで意気投合していきます。

ふたりの良好な関係にヒビが入ったのは高校3年目の夏がすぎた頃、それぞれの出身地を侮辱して傷つけ合ったことが原因です。

以前の交際相手・佐山から襲われそうになった際に助けてもらった麻利は、奈保子との友情を取り戻すのでした。

黒うさぎたちのソウル の起承転結

【起】黒うさぎたちのソウル のあらすじ①

少女たちの心をつなぐメロディー

東京の沖縄県人会で知り合った父と母の間に生まれた島袋麻利は、血統的にはウチナーンチュでしたが23区外に住んだことはありません。

小学校から毎日のように連れだって登校していた昇奈保子は、祖父母の代で鹿児島県から移住してきました。

近所にオープンしたのは居酒屋「黒うさぎ」、天然記念物のアマミクロウサギがモチーフになっています。

小さな巻き貝を煮たトビンニャ、薄塩味のスープをかけてさらさらと食べる鶏飯、ソテツの実から作った黄土色の味噌に漬け込んだ豚レバー… お座敷の隅っこに用意してもらった席で郷土料理をつつきながら麻利と奈保子は、大好きなミュージシャン「SUGIちゃん」の話題で大盛り上がりです。

あでやかに化粧をして赤く染めた髪をダイナミックに振り回すところ、顔は女性的でも体には適度に筋肉がついているところ、エレクトリックギターもバイオリンも弾きこなすところ。

ふたりが中学を卒業する年、SUGIちゃんがリーダーをしていたバンドもラストコンサートを迎えます。

【承】黒うさぎたちのソウル のあらすじ②

方向性の違いから絶交

高校に通うようになった麻利は軽音楽部に入部して、楽器には触らないけどスタジオを予約したり照明係を任されたりしていました。

部長の敬太は爽やかなギタリストで、2回ほど告白されましたが丁重にお断りしておきます。

島出身の祖父から奄美民謡を習っている奈保子は、初出場したコンクールで入賞したほどの腕前です。

普段はおとなしいが大好きな音楽の話になると、自分の思い入れや知識ばかりをまくし立てるためクラスメートとはうまくいっていません。

入学と同時に麻利はウェーブをかけた茶髪に、奈保子は相変わらず黒髪におかっぱ頭のまま。

自然と疎遠になっていたふたりが決定的な仲たがいをしたのは3年生になった時、SUGIちゃんが奄美を代表する歌手のアルバムに楽曲提供をしました。

とうとう奄美が沖縄に勝ったと自慢気な奈保子、海の透明度でも文化の豊かさでも断然に沖縄の方が優れていると麻利。

下校時刻に校門の側で平手打ちを浴びせあったふたりは、それ以降は口をきこうとしません。

【転】黒うさぎたちのソウル のあらすじ③

堕ちたパンカーに立ち向かうソウル

敬太の前に軽音部長をしていた佐山はハイトーンが魅力的なボーカリストで、麻利とは恋人同士となりました。

付き合ってすぐに性行為を強要された揚げ句に、特に思い当たることもなく殴られたり蹴られたりします。

通っていたはずの美容師の専門学校は半年ももたずに中退、作詞作曲をこなしていたパンクバンドも空中分解。

逃げるように佐山と別れた麻利のもとには、1日に何度も嫌がらせのメールが送られてくるほど執念深いです。

夜道をひとりで歩いていたある日、後ろから音もなく近づいてきた1台の自動車が。

車内には佐山の他にもたちの悪そうな2〜3人ほどの男たちが乗っていて、引きずりこまれそうになりました。

金切り声をあげて走り寄ってきたのは奈保子、携帯電話で車のナンバープレートを撮影してくれたために暴行未遂と立件できるでしょう。

沖縄も奄美も同じ島、上も下もないことを認め合います。

次の日に黒うさぎでランチをごちそうになった麻利、奈保子は最近ではソウルミュージックにはまっているそうです。

【結】黒うさぎたちのソウル のあらすじ④

わたしたちのネクストブレイク

あの夜の事件を境にして佐山は家から1歩も出れなくなったために、麻利へのストーカ被害はピタリと止みました。

もともと大学への進学を希望していなかった麻利はネイリストの勉強、敬太はガソリンスタンドでアルバイトをしながらメジャーデビューを目指します。

その敬太と文化祭で「黒うさぎセッション」と名付けたライブを成功させた奈保子、ふたりはしばらく親密になりましたが4年ほどしか続きません。

その後も定職に就こうとしない敬太は公務員をやっている年上女性に食べさせてもらう生活で、いつまでも夢を捨てられないのでしょう。

SUGIちゃんはロックとだとか民謡だとかジャンルの境界線をこえて、バンドという枠組みも関係なく今でも活躍中です。

奈保子との再会は高校を卒業してから7年後、待ち合わせ場所はライブハウスの最寄り駅。

トップバッターはこれから売れると評判の新人で、会場が真っ暗になって演奏が始まった瞬間に麻利と奈保子は両腕を振り上げて飛び跳ねるのでした。

黒うさぎたちのソウル を読んだ読書感想

純粋な沖縄人を自称しながらも、小中高とこれといった目標もなく都立通学を続けている島袋麻利が主人公です。

そんな彼女にとっての大切なお友だちが、おじい・おばあが切り盛りしている奄美居酒屋の娘さんだというのも運命的ですね。

年齢を重ねるごとにお互いへの生理的な嫌悪感、競争心が芽生えていくのは思春期女子ならではなのでしょうか。

1度は離ればなれになってしまったふたりを結び付けていく「SUGIちゃん」、直接的にその姿を現さないものの物語全体のキーパーソンとも言えます。

1990年代のJ-POPに慣れ親しんだ世代の皆さんであればおよそ見当はつくはずなので、その正体を推理してみてください。

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