監督:大友啓史 2013年3月に東宝から配給
プラチナデータの主要登場人物
神楽龍平(二宮和也)
本作の主人公。科学者。警察庁特殊解析研究所に属する。「リュウ」という別人格を有している。
浅間玲司(豊川悦司)
警視庁捜査一課の警部補。表面上は容疑者である神楽を追っているが、真犯人は別に存在すると考えている。事件の真相解明のため、密かに神楽と手を組む。
蓼科早樹(水原希子)
数学者で、DNA捜査システムの開発者。本作の主たる事件の被害者。兄・蓼科耕作と共に殺害された。
水上利江子(鈴木保奈美)
神楽龍平/リュウと蓼科早樹の主治医。
プラチナデータ の簡単なあらすじ
国民のDNAデータ、通称「プラチナデータ」を国が管理する近未来の日本が舞台です。
DNA捜査システム導入により、検挙率向上・冤罪ゼロの社会の実現を目指していました。
主人公の神楽龍平は、捜査機関のメンバーでありながら、ある事件の容疑者としてマークされたことにより、逃亡しながら真相に近づこうとします。
やがて、プラチナデータを巡る国家の陰謀や、信頼を寄せていた水上の猟奇性、そして神楽のもう1つの人格であるリュウにまつわる新事実も明らかになります。
本作は東野圭吾の同名小説が原作です。
キャッチコピーは「この愛さえも、DNAで決まるのか。」
アジア諸国でも上映された大ヒット作品です。
プラチナデータ の起承転結
【起】プラチナデータ のあらすじ①
国民をDNAで管理する法案が可決された近未来の日本では、事件捜査に「DNA捜査システム」を導入し、犯人の検挙率向上を図り、冤罪の無い社会を実現しようとしていました。
主人公である神楽龍平は、捜査機関のメンバーです。
神楽らの間では、国民のDNAデータを「プラチナデータ」と呼んでいました。
ただし、現場に残された犯人の検体と一致するデータがないために、犯人を割出せない未解決事件、通称「NF13」(NOT FOUNDの略)が存在していました。
DNA捜査システムは、国民全てのDNAデータが揃っていないため、まだ発展途上のシステムと言えました。
神楽の持論は、「DNAは人間の全て」というものです。
DNAは身体的特徴だけでなく、感情さえも決まるものであるという見解でした。
この信念に基づき、国民のDNAデータを収集し、国家で管理することを推奨し、完璧なシステムを作り上げることに尽力していました。
DNA捜査システムを構築したのは、天才数学者である蓼科早樹です。
早樹は、外部との接触を好まず、研究室にこもって開発に熱を注いでいました。
心を許していた相手は、兄の耕作と主治医の水上だけです。
仕事の都合上、神楽も蓼科兄妹と関わりがありましたが、特に早樹は神楽に心を開きませんでした。
そんなある日、蓼科兄妹は遺体として発見されます。
【承】プラチナデータ のあらすじ②
蓼科兄妹の事件現場に残された検体を、神楽はDNA捜査システムにかけました。
ところが、解析結果が犯人として示したのは、神楽自身でした。
もちろん、神楽自身は身に覚えがありません。
いわゆる冤罪です。
自分自身が犯人であるという自覚があれば、解析にかける必要はありませんから、それが何よりの証拠と言えました。
しかし、神楽は「自分が犯人ではない」と自信を持って断言できない事情がありました。
それは、神楽が多重人格者だからです。
神楽は、「リュウ」という別の人格を持っていました。
神楽とリュウは別人格ではありますが、DNAデータ上は同一人物です。
したがって、神楽は、罪を犯したのがもう1人の自分である可能性を捨てきれませんでした。
この人格が現れたキッカケに、神楽の父の存在があると、神楽は考えていました。
神楽には、陶芸家だった父がいました。
しかし、 父は神楽が幼い頃に自殺してしまいます。
その ショックで別人格が現れたというのです。
リュウは、陶芸家だった父と同じく芸術を好み、アトリエにこもって絵を描き続けます。
一方の神楽は、 科学的に説明がつかない芸術を理解できません。
同様に、神楽にとってリュウは、科学的に説明ができない、理解し難い存在です。
真犯人かもしれないリュウという存在を抱えた神楽は、自ら事件の真相を確かめようとします。
そして、警察の追っ手を振り、逃亡生活を始めました。
【転】プラチナデータ のあらすじ③
DNA捜査システムが完璧過ぎると困る人がいました。
それは、国家の上層部や特殊階級など、社会的地位の高い人間たちです。
これに属する本人やその家族は、捜査の対象にならないように、予めシステムに手が加えられていたのです。
今までの未解決事件、いわゆるNF13とされた事件は、細工されたデータ内に犯人が潜んでいたためでした。
そのNF13の真犯人を暴くシステムこそが「モーグル」でした。
早樹が命をかけて開発したものです。
モーグルがあってこそ、真のプラチナデータが完成します。
浅間は逃亡中の神楽と接触し、「リュウが犯人であるとは思えない」と告白します。
そして、浅間は神楽と手を組むことになりました。
浅間と神楽は、リュウが描き残した絵に答えがあると考え、浅間はリュウのアトリエに潜入します。
そして浅間は、リュウが早樹をモデルに描いたとされるキャンバスの裏に、 モーグルを発見します。
しかし、そのモーグルの中身を確認するには、DNA捜査システムにかける必要がありました。
浅間はモーグルを携えて研究所へ向かい、研究所員を脅してモーグルを起動させました。
蓼科兄妹殺害事件の犯人のDNAデータを解析にかけた結果、DNA捜査システムが示したモンタージュは、早樹や神楽の主治医である水上利江子でした。
【結】プラチナデータ のあらすじ④
蓼科兄妹を殺害した真犯人は水上でした。
水上は神楽や早樹が信頼を寄せていた人物である故に、浅間と神楽にも衝撃が走ります。
真相を知った神楽は、水上に直接会いに行きました。
水上は、優れた遺伝子を持つ人間だけの世界を作ろうと企んでいました。
そのためには、劣った遺伝子を持つ欠陥品の人間と、水上の考えに反対する人間を排除、つまり、殺害する必要があったと白状します。
早樹は水上の行動に気づき、モーグルの作成に着手していました。
モーグルを完成させ、NF13を解決しようとする早樹は、水上にとって排除の対象でした。
「早樹は真相に近づきすぎた、だから殺害した」と水上は神楽に告白します。
水上の告白を聞いた神楽は、水上の意見に賛同できない旨を伝えました。
この時点で、水上にとって神楽は排除の対象となりました。
水上は「遺伝子さえあれば肉体は必要ない」と断言し、神楽に銃口を向けます。
しかし、実際にその銃の引き金を引くことになったのは神楽でした。
水上はその場で倒れました。
後に取り調べを受けることになった神楽は、浅間から衝撃の事実を知らされます。
それは、主人格は神楽ではなくリュウだった、という内容でした。
水上は、リュウから現れた別人格が水上自身に似ていることに興味を覚え、人格を反転させる薬を用いて、リュウを別人格に、神楽を主人格としてすり替えたと言うのです。
「DNAは人間の全て」という信念のもと、DNA捜査システムに携わっていたはずの神楽でしたが、実際は水上の意のままに操られていたのです。
真相を知った神楽は、力なく俯くばかりでした。
そして神楽は、リュウに最初で最後の手紙をしたためます。
神楽は、リュウとは同じDNAでありながら、心の動きは異なるものだったという自らの経験を認め、「人の運命や可能性は決して遺伝子や科学の領域ではない」「大切なことに気付けて良かった」とリュウに伝えるのでした。
プラチナデータ を観た感想
人気作家の東野圭吾の小説を原作とした、近未来の日本が舞台のサイエンスミステリーです。
主人公の神楽/リュウ役に二宮和也、共に事件を追う警部補の浅間役に豊川悦司と、豪華キャスト陣によって彩られた本作は重厚感がありました。
DNAデータの活用によって社会の利便性が向上していく一方、その裏に国家の陰謀が隠されているという二重構造にリアリティを感じ、終始ハラハラしました。
神楽とリュウのように、世の中はDNAデータのように科学的に説明ができることばかりではありません。
無駄をなくして効率の良さを重視するあまり、本当に大切なことを見失ってはいないか? と問われているように思えました。
フィクションの世界ですが、実際に私たちが生活する現代社会にも通じる部分が多々ありました。
スピード感のある怒涛の133分を過ごした後は、じっくりと考えさせられます。
味わい深く、何度でも楽しめる作品です。
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