映画「ストックホルム・ケース」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|ロバート・バドロー

映画「ストックホルム・ケース」

監督:ロバート・バドロー 2020年11月にトランスフォーマーから配給

ストックホルム・ケースの主要登場人物

ラース・ニストロム(イーサン・ホーク)
主人公。ならず者を気取っているが根は優しい。

ビアンカ・リンド(ノオミ・ラパス)
銀行で働きながら1男1女を育てる。メガネをかけていて地味だが情熱的な一面もある。

グンナー・ソレンソン(マーク・ストロング)
ラースの悪友。突発的に暴力に訴え出る。

マットソン(クリストファー・ハイアーダール)
地元警察の署長。職務に忠実で地域住民との交流にも熱心。

クリストファー・リンド(ソルビョルン・ハール)
ビアンカの夫。愛妻家だが料理も家事も苦手。

ストックホルム・ケース の簡単なあらすじ

1973年のストックホルム、武装したラース・ニストロムは銀行を襲って服役中のグンナー・ソレンソンと立て籠ります。

たまたま出勤日だったために巻き込まれたビアンカ・リンドは、一向に交渉が進展しないこともあって次第にラースたちに同情的に。

事件が解決して日常生活へと戻った後でも、リンドが犯人をうらむことはありません。

ストックホルム・ケース の起承転結

【起】ストックホルム・ケース のあらすじ①

平和な街に鳴り響く銃声

7カ月前に脱獄したばかりのラース・ニストロムは、かつらで変装してボストンバッグの中にはライフル銃を忍ばせていました。

スウェーデンでも最大手の「クレジット銀行」にタクシーで乗り付けると、天井に向かって発砲します。

机の下の警報ボタンを押して地元警察に通報したのは、窓口業務を担当していたビアンカ・リンドです。

ただちに現場に駆け付けたマットソン署長でしたが、これまでに国内で人質事件が発生したことは一切ありません。

カルマル刑務所にいるグンナー・ソレンソンを連れてくること、印のない米ドル札で100万、拳銃2丁に逃走用のマスタング、食べ物にビール、シガレット… 超法規措置によって釈放されたグンナーと再会したラースは、3人の人質を残して銀行内の客を次々と外に追い出しました。

ビアンカ、彼女の同僚のクララ・マード、備品室に隠れていたために逃げ遅れたエロヴ・エリクソン。

ビアンカの夫・クリストファーは自らが身代わりになると申し出ましたが、犯人側には受け入れられません。

【承】ストックホルム・ケース のあらすじ②

金庫室に響くメロディでお近づきに

人質のうち男性ひとりは殴られて大ケガを、女性ふたりは性的な被害を。

マットソンはヨーロッパ中の報道陣に偽の情報を流すことによって、ラースとグンナーを徹底的な悪者に仕立て上げるつもりです。

実際にはラースは3人に食事とお酒を振る舞いつつ、ボブ・ディランの「明日は遠く」を歌っていました。

この曲が大好きでラジオでよく聞いていたビアンカは、不思議な親近感を抱いてしまいます。

生まれはスウェーデン南部のヘルシングボリ、育ちはアメリカ、老夫婦の家に押し入ったのが5〜6年ほど前。

夫が心臓発作を起こしたために薬を渡してその場を立ち去っただけで、金品も奪わずに一切の危害を加えていません。

お互いに身の上話を打ち明けて金庫室で一夜を明かしたラースたちに、次の日の朝早くにオロフ・パルメ首相の直通電話がかかってきました。

受話器越しにクララの殺害をちらつかせたラースですが、パルメは逃走車両の用意を認めません。

車で人質ごと非常線を突破されて、フランスにでも密入国されてしまっては元も子もないからでしょう。

【転】ストックホルム・ケース のあらすじ③

情報戦からだまし合い、仲間割れまで

スキをついて脱出を試みたビアンカは背後から撃たれてしまいましたが、防弾チョッキのおかげで命に別条はありません。

しばらくはショックで気を失っていた彼女が目覚める頃に、差し入れの品の中からラースが発見したのは小さな集音マイク。

ビアンカは死んだことにして盗聴にも気がついていないフリをしていると、マットソンが外からカギを掛けてしまいました。

上の階からドリルで穴を空けて催涙ガスを散布して、武装部隊を突入させて一気にカタを付けるつもりです。

密室となった金庫室は蒸し風呂のような暑さのために、人質たちはもちろんラースとグンナーもすっかり参ってしまいます。

ささいな事から言い争いに、ついには武器を放り出して素手で殴り合いに。

ビアンカはいつでも銃を手に取ってふたりを射殺することもできましたが、何とかその場を収めて仲直りさせました。

一部始終はマイクを通して筒抜けで、警察によって協力を要請された精神科医も聞いています。

彼の分析によると犯人によって洗脳された人質は、不可解な行動を取ることも珍しくないそうです。

【結】ストックホルム・ケース のあらすじ④

消えない傷と忘れられない人

事件発生から3日目の朝、完全にお手上げとなったマットソンは要求どおりに逃走車を銀行の入り口に横付けしました。

ラースはクララを羽交い締めにしながら運転席へ、グンナーもエロヴの背中に銃口を押し付けながら後部座席へ。

ビアンカはうつぶせになって死体を装っていましたが、警告のアナウンスとともに催涙ガスが注入されます。

彼女の首にはロープが巻き付けてあるために、ガスを吸った場合は意識を失って窒息死してしまうでしょう。

ビアンカを助けるために金庫室に引き返したラースはあっけなく身柄を拘束、警官隊は固く抱き合ったふたりを引き離すのにひと苦労です。

クリストファーとふたりの幼い子どもの待つわが家に無事に帰ることができたビアンカ、自由の身となったグンナー、再び服役することとなったラース。

1度だけ面会にやって来たビアンカに、ラースは出所後にアメリカに移住する計画を立てていることを打ち明けます。

ラースに撃たれた時の傷あとはいつまでも背中に残ったままで、ビアンカはあの出来事を忘れずに生きていくことを約束するのでした。

ストックホルム・ケース を観た感想

1970年代前半のスウェーデンが舞台になっていますが、有名なロックフェスティバルが開催されているようで実ににぎやかで。

現場となった銀行に詰めかけてきたレポーターや地元民たちには、どこかお祭り騒ぎのような不謹慎さがあります。

不運にも人質となってしまったビアンカ・リンドの横顔にも、それほど悲壮感は漂っていませんでした。

突如として主役に起用されてステージに立った、無名の女優さんのような浮わつきがあるのかもしれませんね。

監禁・誘拐など特殊なシチュエーションにおいて、善人が悪人にときめいてしまう心理状況がうまく再現されている映画です。

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