【ネタバレ有り】ジ、エクストリーム、スキヤキ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:前田司郎 2013年10月に集英社から出版
ジ、エクストリーム、スキヤキの主要登場人物
洞口(ほらぐち)
つい最近退職したばかりで現在は無職。
大川(おおかわ)
洞口の大学時代の後輩。映画監督志望。
村田京子(むらたきょうこ)
洞口の大学時代の彼女。会社員。
遠藤楓(えんどうかえで)
京子の後輩。
ジ、エクストリーム、スキヤキ の簡単なあらすじ
大学卒業以来疎遠になっていた洞口と大川は、久しぶりに連絡を取って再会を果たします。ほんの気まぐれから高価なすき焼き鍋を衝動買いしてしまったふたりは、かつての洞口の恋人・京子を誘い小旅行に繰り出していくのでした。
ジ、エクストリーム、スキヤキ の起承転結
【起】ジ、エクストリーム、スキヤキ のあらすじ①
洞口は仕事中に些細なトラブルを起こしてしまい、自主退職という形で長年の勤め先を去ることになりました。
再就職先も見つからないまま無為な時間が流れていく中で、ふとした気まぐれから大学時代の1つ年下の友人・大川に連絡を掛けます。
ふたりが仲良くなったきっかけは、映画研究会という同じサークルに所属していたからです。
今でも居酒屋でアルバイトをしながら映画監督を目指している大川は、12年ぶりの対面となりますが大きな変化はありません。
秋葉原で待ち合わせをして食事をとった後に、調理器具や食品サンプルの問屋が立ち並んでいるかっぱ橋の道具街をぶらぶらします。
ふたりが心惹かれたのは、銅色に輝く美しい28500円のすき焼き鍋です。
【承】ジ、エクストリーム、スキヤキ のあらすじ②
大川の実家には父親の親族たちが転がり込んでいたために、10人近くがひとつ屋根の下で暮らしている大家族でした。
経済的な事情もあり質素な食生活を送っていた中で、1番のご馳走は牛肉ではなく豚肉を代用したすき焼きです。
すき焼きへの並々ならぬ想いを語る大川に触発されて、洞口は無職にもかかわらずすき焼き鍋を購入してしまいます。
男だけで鍋を囲むのも味気ないために、ふたりの旧友であり一時期洞口がお付き合いをしていた村田京子に電話をかけました。
彼女は会社の年下の同僚・楓の看病をしているために、品川区大崎のアパートにいるようです。
洞口の赤いマツダに乗り込んで駅前まで向かいに行くと、京子とすっかり熱が下がった楓が待っていました。
【転】ジ、エクストリーム、スキヤキ のあらすじ③
「すき焼きを超えるすき焼き」が食べたいと言い出した洞口に、他の3人が提案したのはドライブ旅行でした。
いつもとは違う風景の中で食べるすき焼きは、格別の味わいがあるはずです。
東名高速道路から小田原厚木道路に乗り入れて、当面の目的地である小田原を目指します。
小田原城で観光を楽しんだり海辺を散策した後に、箱根の温泉施設でリフレッシュするのも乙なものです。
今日が土曜日で京子と楓は明日は仕事休みになり、フリーターの大川や無職の洞口も特に予定はありません。
何時しか不思議な名残惜しさが湧いてきた4人は1泊することに決めて、オフシーズンのためにガラガラな素泊まりの4人1部屋を予約し温泉街の外れにひっそりと佇む宿へ辿り着きました。
【結】ジ、エクストリーム、スキヤキ のあらすじ④
パーキングエリアで見つけた地元野菜、酒屋で購入した地酒に砂糖をトッピングした自家製みりん、コンビニに売れ残っていた豚小間肉。
有り合わせの材料を大枚をはたいた鍋の中に投入し器はないために客室の湯呑みを代わりにしますが、こういう不便さも4人にとっては気になりません。
食後には4組の布団を並べて敷いて、大川と楓は早々と熟睡状態です。
洞口は数センチ先にある京子の指先に手を伸ばして、静かに絡め合ったまま眠りにつきました。
翌朝帰りの車内では大学生の頃に洞口たちが聴いていた、ムーンライダーズのナンバーが流れています。
10年以上前の思い出がそれぞれの胸のうちに甦りますが、自分たちが年を取って変わってしまったことを痛感するのでした。
ジ、エクストリーム、スキヤキ を読んだ読書感想
大学時代から実に12年ぶりに再会した3人の男女と、偶然にも同行することになった1人の女性の旅が不思議な味わいでした。
ある日突然に勤め先を辞めてしまった洞口と、未だに夢を追い続けている大川のモラトリアムぶりに笑わされます。
卒業・就職・結婚と着実にステップアップしていく、堅実派の京子とのコントラストも印象深かったです。
一見すると純真無垢なイメージの楓も、京子と温泉の中でふたりっきりになった時に「付き合うならフリーターより正社員」と本音をポロリとこぼしてしまうシーンが何ともほろ苦いものがありました。
やがてはそれぞれの道を歩んでいく4人が、手作り感満載のすき焼きを前につかの間の休息を楽しむ様子が微笑ましかったです。
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