著者:安達瑶 例)2019年7月に祥伝社から出版
報いの街 新悪漢刑事の主要登場人物
佐脇耕三(さわきこうぞう)
本作の主人公。T県鳴海署の巡査長で、地元の元ヤクザの鳴龍会の元若頭の伊草智洋とは、盟友の仲。部類の女好きで、警察官にはあるまじき行為が多く、警察内部から要注意人物として扱われている。
伊草智洋(いぐさともひろ)
鳴海市の弱小ヤクザ鳴龍会の元若頭。佐脇とは盟友だが、現在逃走潜伏中の身である。
入江雅俊(いりえまさとし)
かつて鳴海署長として佐脇と対決したが、警察庁に栄転して現在は警察庁ナンバー3の警視監となる。
磯部ひかる(いそべひかる)
東京で活躍するフリージャーナリスト。巨乳にしてナイスバディの持ち主。
館林いずみ(たてばやしいずみ)
伊草の愛人で華奢な美女。
報いの街 新悪漢刑事 の簡単なあらすじ
大人気シリーズの19巻目で、暴力団排除条例の為に困窮しているヤクザに手を差し伸べようと、奔走する佐脇でしたが、半グレや関西の暴力団等の妨害に遭い、どんどん追い詰められます。
最後の頼みと伊草は関西の大物ヤクザに助けを申し入れても、組長との因縁が有り思いは通じないのでした。
関西の組長が鳴海に来て乱行の数々を繰り広げ、煮立った伊草は組長と対決します。
大物ヤクザが現れて組長を始末する男気を見せるのでした。
報いの街 新悪漢刑事 の起承転結
【起】報いの街 新悪漢刑事 のあらすじ①
入江の推進する暴力団壊滅作戦により、鳴龍会は解散に追い込まれ、元ヤクザは人間として扱われない待遇で、日々の暮らしに困る状況に陥ったのです。
ヤクザ誠三の息子で小学生の諒汰は、誠三が稼ぎが無い事と父がヤクザで、いじめられていたのです。
諒汰クラスメートの未桜は父親からDVの仕打ちを受け、境遇の似た二人は仲良くなり、諒汰の家ですき焼きを食べていると、未桜の父三上義彦が未桜を連れ戻しに現れ、誠三と諍いを起こしたのです。
そんな誠三に佐脇は情けの10万円を手渡します。
大多は市営住宅の空き地で、老人達にたこ焼きを焼いて振舞っていると、県警の唐古刑事が現れ、団欒の場を踏み荒らし、大多に難癖をつけ老人達と口論に発展します。
佐脇が現れ、唐古を追い払うと大多のしのぎのデリヘルに同行して、客とのトラブルを目の当たりにします。
何処にも稼ぎ場所の無いデリヘル嬢に生活出来る様に稼がせる為の必要悪だと吹聴する大多の言葉に佐脇は納得せざる負えなくなるのです。
暴力団排除条例に抵触しない為に元やくざ達は老人相手のよろず相談&問題解決センターの様な申請書の書き方等を教えたり事もがいじめに遭っているシングルマザーに救いの手を差し伸べる様な弱者を守るビジネスを始め出したと説明したのです。
そして事務所になって居る雑居ビルの奥には、国債指名手配されている盟友伊草の姿が在ったのです。
伊草はこの困っている人の役に立つ為の新規事業の事務所を鳴海興産の上原社長のバックアップで立ち上げ、「私学校」と命名していたのです。
その名前には明治維新で失職したぶしたちの不満を吸収して手に職を与え、指導統御する為に設立させた学校の名で、西郷隆盛の崇高な意志を引き継いでいると説明されたのです。
警察官である佐脇は、指名手配半の伊草を捕まえなければならない立ち場を乗り越えて盟友として字訳者を救おうと言う気持ちに打たれ、伊草の逮捕を見逃すのです。
【承】報いの街 新悪漢刑事 のあらすじ②
学校を休みがちになって居る未桜の元に担任から連絡プリントと休職のパンを預かり、諒汰は未桜の家の前に訪れたが、またしても中からいつもより大きな悲鳴と怒声を聞く事になってしまうのです。
ドアを開けて中に飛び込んだ諒汰は未桜を殴りつけている義彦に「止めろ!」と叫び、激しい口論の末、義彦に組み伏せられてめった打ちにされたのです。
「殺される」と思った瞬間に義彦は諒汰の上にぐったりと倒れ込み、義彦の下から這い出すとフライパンを握り震えている未桜が居たのです。
未桜を殺すと義彦が言った言葉で、諒汰はフライパンを奪い取り、義彦の頭を何度も打ち据え未桜の父親を殺してしまいます。
誠三が息子からの電話で駆けつけて、状況を確認していると通報を受けた警察がなだれ込み、したいを確認したのです。
未桜と諒汰は病院に入院する事になり、誠三は佐脇の取り調べを受け、以前に未桜の家のDVを生活安全課に相談する約束を忘れていた事で事件に発展したと言う事実に気付かされるのです。
しかし、誠三は息子の罪を被ろうとして嘘の供述を始め出すのです。
一方病院でも子供達は自分が犯人だと供述していたのです。
鳴海署を一歩出た佐脇は詰めかけたマスコミの取材班に取り囲まれて、元ヤクザが殺人を犯したのかと問い詰められます。
現場に子供が同行していたと言う事で子供にも嫌疑がかかっているのでは無いかとキンキン声の女性リポーター萩前千明が攻撃的な質問を繰り返し、溜らなくなった佐脇は、捜査中だと言い乍ら包囲網から逃げ出したのです。
気を落ち着かせる為に近くの酒場で飲み始めた佐脇に入江からの電話が入り、伊草が鳴海に切る様な事が在れば潰せと言う高圧的な指示が出されます。
かつては良きライバルとして、助け合う事も有った入江の態度は、余りにも変わり果てて、佐脇は腑に落ちない思いをするのです。
【転】報いの街 新悪漢刑事 のあらすじ③
翌日、半グレが老夫婦の家に入り込んで、勝手に金目りものを持ち出す現場に急行した佐脇は半グレを力づくで追い払い、老夫婦を救います。
元鳴龍会のやくざ達が真面目に老人達の面倒を見る見ている私学校では、半グレが現れて、半グレを抜けようと下並木を引き戻そうとしていたのです。
そこへ半グレの助っ人で元鳴龍会のヤクザが現れ、佐脇を罵倒します。
言い争いが始まるとすぐに警察の車両とパトカー3代が到着して唐古と警官がヤクザと半グレが乱闘しているとの通報を受けたと周囲を囲み、マスコミの記者達も集まって来たのです。
ヤクザと半グレを喧嘩させて逮捕する所をマスコミに撮らせると言う計画は未然に防がれましたが、嗅げてこの計画の糸を引いている黒幕の正体は定かにはならなかったのです。
その夜、伊草の弟子の島津の店で酒をあおっていた佐脇の前にリポーターの萩前千明が取材を申し込みに現れたのです。
ラブホテルに入ると千明の方から色仕掛けをされ、部類の女好きの佐脇は据え膳を頂く事に決めたのでした。
千明は手錠プレイを要望して、自分はマゾだと言い佐脇にサディスティックに攻めさせる様に誘導したのです。
男女の関係を結んだ後で千明は三上義彦殺害の犯人に付いて佐脇に質問したのです。
しかし、捜査中で真相は判明してない事もあり、答えない佐脇に千明は強姦された事にすると言って小型レコーダーをちらつかせるのです。
翌朝のワイドショーでは鳴海署の前で、萩前千明が刑事にレイプされたと画面の中で叫んでいたのです。
告訴状とICレコーダーを手に千明が鳴海署に弁護士と共に告訴を申し立て受理させたのです。
ICレコーダーに録音されたハニートラップはテレビでその音声を公表されましたが、千明に不利になる部分は編集されたのです。
私学校に暴徒が襲いかかっているとの連絡が入り、大勢が乱闘していたのです。
元やくざを襲ったのはナショナル警備保障の人間達だったのです。
【結】報いの街 新悪漢刑事 のあらすじ④
ナショナル警備保障は、県警の唐古と内通し、事件を起こしたのです。
磯部ひかるはナショナル警備保障の内部資料を佐脇に渡し、ヤバい会社だと告げたのです。
酔いつぶれてラブホで寝ようとした佐脇は、千明と情事を交わした部屋の天井に盗撮カメラが有る事を思い出し、ホテルの支配人を脅して自分の情事の録画を手にして、千明のハニートラップから脱出したのです。
しかし、ホテルから押収したビデオには、いずみを強姦する唐古の姿が映っていたのです。
佐脇は私学校が放火されて炎上しているのを目の当たりにします。
最早関西の須磨組と組むしか無いと伊草らは佐脇と共に関西に出向きますが話はつかず、半グレ上がりの須磨組組長の河合は伊草との昔の遺恨で交渉は決裂したのです。
一方、須磨組の成沢と密談した佐脇は、成沢が河合を疎ましく思っている事を知り、成沢の伝言を伊草に伝える役目をになわされたのです。
一同が鳴海に戻ると、追いかけて来た河合は暴挙を繰り返し、街中で堂々とシャブを打っていたのです。
よろず相談&問題解決センターには入江の指示で須磨組の精鋭達が伊草を探し殴り込みを掛けていましたが、そこに元鳴龍会のヤクザだと勘違いして半グレ集団が更に襲いかかり、ナショナル警備保障の連中も入り交じっての大乱闘となるのです。
須磨組がこの場を制し、組長の河合が現れ、伊草を出せと吠えると、伊草が現れ、河合と伊草のタイマンとなり、卑怯な河合はナイフで伊草に切り掛かりますが、いずみが身を呈して伊草を守り、河合は伊草ともみ合い、自分の身体にナイフが突き刺さります。
病院で諒汰と未桜を人質に取った河合は、ヘリコプターを要求して逃走を計りますが、そこに成沢が現れドスで河合の息の根を止めたのです。
報いの街 新悪漢刑事 を読んだ読書感想
佐脇はヤクザとの癒着も辞さない男ですが、半グレや暴力団では無く、任侠のヤクザの存在が昔の社会に以下に有効になっていたかを深く考えていた事がひしひしと伝わる作品だと思えました。
金だけでは無く、きちんとした人情を持ち、弱者を救おうとする、昔気質のヤクザの心意気が、作者からしっかりと伝わる形で表現されていて、現代に対する問題提議もしっかり考えられている作品だと言えます。
河合を始末する成沢の心情は、古風で有り人としての最期の一線を越えてしまう事への警告の様に捉える事が出来る生き様と言えます。
次第に凶器を帯びて行く入江の姿は正に現代の暗黒の部分の象徴の様に表現されていて、筆者の考えが読者にストレートに伝わる部分なのだと感じる事が出来たのです。
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