監督:クリント・イーストウッド 2019年3月にワーナー・ブラザーズから配給
運び屋の主要登場人物
アール・ストーン(クリント・イーストウッド)
主人公
コリン・ベイツ(ブラッドリー・クーパー)
麻薬取締局捜査官
メアリー(ダイアン・ウィースト)
アールの妻
ラトン(アンディ・ガルシア)
麻薬組織のボス
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運び屋 の簡単なあらすじ
家庭よりも仕事を重視し、外で認められることが大事だと考えているアール・ストーンは、花農場を経営しデイリリーの栽培に力を入れていました。
その後、花農場は差し押さえられ家族にも見放されたアールに簡単な仕事が舞い込みます。
しかし、その仕事は、町から町へとコカインを運ぶ「運び屋」でした。
この作品は、クリント・イーストウッドが10年ぶりに監督主演を務め、87歳の男性が一人で大量のコカインを運んだという実際の報道をもとに描かれたドラマです。
運び屋 の起承転結
【起】運び屋 のあらすじ①
2005年デイリリー品評会の会場にアール・ストーンの姿がありました。
アールは、家族よりも仕事が重要で、一人娘アイリスの洗礼式にも堅信式にも卒業式にも出席したことがありません。
この日も娘の結婚式はそっちのけで品評会へ参加し、アールのサニーサイド花農場が金賞を受賞しました。
12年後、インターネット販売の普及で経営が傾き、花農場は差し押さえられてしまいます。
孫ジニーの結婚前の昼食会に出かけたアールは、妻メアリーと喧嘩になってしまいます。
帰ろうとしていたアールに花嫁付添人の友人リコが「知人が慎重なドライバーを探していて、町から町を走るだけで金になる仕事がある」と話を持ちかけます。
アールのトラックにアメリカの41の州のステッカーが貼ってあること、アールが「違反切符は一度も切られたことがない」と自慢したことに目をつけたのです。
仕事で向かったテキサス州エルパソのタイヤ屋では、銃を構えた物騒な男たちが待っていました。
仕事は、ホテルに着いたら車を停めグローブボックスにキーを入れ車を離れること。
1時間後に戻ったら報酬金とキーがグローブボックスに入れてあるという簡単なものです。
初めての仕事は曲を流しながらドライブを楽しみ問題なく終了。
見張り役から「仕事をしたければいつでも連絡を」と名刺を渡されます。
その頃、麻薬取締局(DEA)のベイツ捜査官とトレビノ捜査官が、麻薬組織の組員ルイス・ロカに捜査協力をするよう取引をしていました。
【承】運び屋 のあらすじ②
アールはジニーの結婚式後のパーティーを楽しんでいます。
1回目の報酬金でパーティー代を出したようです。
新しい車に買い替え2回目の仕事へ向かい、今度は滞納金を払い花農場を取り戻しました。
そして、退役軍人クラブの施設が火事になり再開の目処が立たないことから、3回目の仕事へと向かうのです。
しかし、今回は荷物の大きな袋が気になり路上で車を停めます。
大量の白い粉を確認したところで、警察官が声をかけてきました。
警察犬が排尿を済ませアールのもとへと走ってきます。
アールは咄嗟に痛み止めクリームを手に塗り犬を撫でて誤魔化しました。
高額な報酬金に、さすがにマズイと感じ落ち着けと言い聞かせていたアールですが、4回、5回と仕事を重ね8回目の仕事のときには、麻薬組織の男たちと打ち解けタタと呼ばれるようになっています。
今度は270万ドル相当のブツを運ぶため、組員のフリオとサルが同行します。
フリオは「勝手に行動するな」と威圧的ですが、アールはお構いなしです。
いつものように曲を流し歌いながらドライブを楽しみます。
パンクして立ち往生している家族のタイヤ交換を手伝ったり、モーテルに女性を招いたりと自由です。
そんなアールを麻薬組織のボス、ラトンは「動きを予測できないから成功している」と好きにさせます。
その頃、DEAはルイスから渡されたブツの管理帳から、新しい運び屋タタの情報を得るのでした。
【転】運び屋 のあらすじ③
9回目の仕事もいつものようにドライブをし、ポークサンドの店でフリオとサルとランチを楽しみます。
食事後、車に乗り込むところでフリオたちが職務質問を受けますが、アールが「引越しの手伝いをしてもらっている」と訴え乗り切りました。
ハイウェイでは黒いトラックが警察に停められています。
ベイツたちが、タタの車は55線を走る黒いトラックという情報を掴んでいたのです。
アールは一度に282キロものブツを運ぶのに成功させ、ラトンのパーティーに招待され、もちろんそのパーティーを存分に楽しみます。
しかし、後日、DEAが本格的に動き出したことに危機感を感じた部下が、ラトンを射殺してしまいます。
新しいボス、グスタボはアールの身勝手な行動を許しません。
サルの遺体を見せられたフリオも指示に従うように言います。
その頃、アールを見つけられないでいたベイツは、ルイスからタタがエイブ・モーテルに宿泊するという情報を得ます。
どんな客がいるのか一人一人調べていたベイツは、偶然にもアールに出くわし、翌朝、朝食を取っていたときに話しかけられます。
記念日を忘れていて「しまった」と呟いたベイツに「一人娘は12年も口をきかない、もっとも大事なのは家族だ」とアールは話しかけ「元気で」とその場を後にするのでした。
【結】運び屋 のあらすじ④
仕事に戻り車を運転していたアールに、ジニーから電話が入りました。
メアリーが重病で数日持つかどうかわからないというのです。
アールはルールを破り自宅に戻ります。
メアリーは「ここに来てくれたことが嬉しい」という言葉を残し亡くなってしまいました。
1200万ドルのコカインを車に積んだまま1週間以上も連絡を途絶えているアールに、組織は怒りハイウェイ中を探しています。
メアリーの葬式後、仕事に戻ったアールを組織は殺そうとしますが、ブツを運ばせることにしました。
その時、ベイツにタタ発見の情報が入り位置を特定します。
組員に殴られ血だらけのアールを警察車両が取り囲みます。
両手を上げアールが車から降りてきました。
「妻が死ぬ間際に一緒に過ごせたおかげで家族に受け入れられた」とアール。
それに対し「家族との関係を正した」とベイツは答え、手錠をかけられ後部座席に座るアールを見送りました。
裁判で「麻薬組織の悪党たちがアールの人の良さと高齢であることを利用した」と訴える弁護士を制し、アールは「罪を犯した、有罪です」と答えます。
すべての罪状で有罪だと認めたアールは、その場で手錠をかけられアイリスとジニーに「時間がすべて。
何でも買えるのに時間だけは買えなかった」と言い連邦刑務所に戻されました。
刑務所ではデイリリーを育てているアールがいます。
それは、とても穏やかでゆったりで楽しんでいるようでありました。
運び屋 を観た感想
カーステレオから流れるカントリーミュージックに乗せて荒野を車で走るアールはとてもかっこよく、曲に合わせて歌っているアールはハッピーで、その様子を盗聴器で聞いているフリオとサルも一緒に歌ってしまう姿はクスッと笑えるのに、なぜか切ない。
それは所々に古さが見えるからだと思います。
バイク乗りの集団に「兄ちゃん」と呼びかけ、女性の同性愛者に向けられた蔑称「私たちはダイクスよ」と言わせてしまったり、パンクで立ち往生している黒人家族に「二グロ」と声をかけ「今はブラックというのよ」と訂正されたり、アールが時代についていけない様子が描かれていて、そこに古さを感じ切ないのです。
しかし、外で認められることが大事だと思っていて、そこに力を注いだアールは孤独ではなかったです。
アールがお金で買えなかった時間とは、いつも注目の的で素晴らしい人と言われていた過去のことであり、家族と過ごせなかった時間だと思います。
それでもアールを孤独だとは感じませんでした。
それは、アールが罪を認め、失ったものを受け入れ、残された時間を一生懸命に生きようとしているように見えたからです。
アイリスは面会に来てくれます。
ジニーは花農場を守ってくれます。
そして、アールは刑務所でデイリリーを育てています。
映画を見終えたとき、切ないと思っていた映画が、ちょっとだけ切なく心地よい映画に変わっていました。
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