著者:井上真偽 2020年9月に実業之日本社から出版
ムシカ 鎮虫譜の主要登場人物
優一(ゆういち)
音大の三年生。作曲科。
翔馬(しょうま)
音大の三年生。ヴァイオリン演奏者。
美亜(みあ)
音大の三年生。声楽科、ソプラノ歌手。翔馬の恋人。
沙希(さき)
音大の三年生。ピアニスト。フォーカルジストニアに苦しむ。
朱里(あかり)
音大の三年生。ヴァイオリンをあきらめヴィオラ奏者へ転向。
ムシカ 鎮虫譜 の簡単なあらすじ
音大の同期生五人は、みな才能の行き詰まりに悩んでいました。
そこで、瀬戸内海の孤島にある、音楽をまつる神社にお参りすることにします。
しかし、島に上陸した彼らを待っていたのは、襲ってくる虫の大群と、音楽により虫を鎮める巫女たちでした。
そこに、怪しげな音楽雑誌の編集者たちも加わって……。
ムシカ 鎮虫譜 の起承転結
【起】ムシカ 鎮虫譜 のあらすじ①
優一、翔馬、美亜、沙希、朱里は、同じ音大に通う三年生です。
彼らはみな、進む道に行き詰まりを感じています。
そんなとき、瀬戸内海の孤島に、音楽をまつる神社があって、そこにお参りすると、道が開けるかもしれない、と美亜が言いだします。
お金も手配も、お金持ちの美亜がするということで、全員でその島に行くことになりました。
上陸して神社を目指していくと、牢に閉じこめられた巫女がいました。
怖くなった五人はクルーザーに戻りますが、美亜がキーを落としていました。
沙希と朱里を船に残して、優一、翔馬、美亜の三人が、神社へもどりますが、途中カメムシの大群に襲われます。
そこへ少女の巫女、菊里が現れ、笛を吹いてカメムシを鎮めました。
菊里に帰るように諭され、キーを手に入れた三人が船にもどってみると、沙希と朱里がいないのでした。
ここで少し時をさかのぼると、船で待っていた沙希と朱里に、カマキリの大群が襲ってきました。
そこへ若い巫女の音緒(おとと)が現れ、三味線で虫を鎮めます。
音緒は、今年が「音祝(おとほぎ)」という大事な祭りの年だと言います。
沙希と朱里は、音緒に連れられて、音緒たちの休憩所へ行くことになりました。
【承】ムシカ 鎮虫譜 のあらすじ②
沙希と朱里に、今度はスズメバチの大群がおそってきました。
また音緒が三味線を弾いて鎮めようとしますが、できません。
朱里がバイオリンを必死に弾いて、なんとか鎮めます。
その後、教会へ向かうのですが、途中で老女の巫女の一団に出会い、合流したのでした。
一方、クルーザーから離れた優一たちは、音楽雑誌の編集者となのる一団に遭遇します。
彼らは、この島では、人さらいをして人間の身体から手足笛を作っているのではないか、と言います。
優一たちは彼らといっしょに、御殿と呼ばれる場所へ向かうことしました。
その途中、老人の巫女と彼女の一団を見かけたので、コースを変え、「人食いお化けトンネル」を抜けることにします。
ところがヤスデの大群に襲われ、パニックになって走り回ったために、優一たちは編集者たちとはぐれてしまいました。
そのおかげというべきか、今度は菊里に再開し、さらにはフリーピアニストの高坂奏とマネージャーの賠償かおりと遭遇します。
奏たちはゴムボートに乗って漂流して、この島にたどり着いたのでした。
優一たちがトンネルを抜けると、巫女の一団と出会いました。
そのうちのひとりは菊里の母親のようです。
彼女が言うには、手足笛が盗まれたために、神楽を中止せざるをえなくなったとのことです。
【転】ムシカ 鎮虫譜 のあらすじ③
沙希と朱里は、老巫女たちに教会へつれてこられました。
意識を失った音緒も、教会に寝かされます。
そうして、老巫女たちは用があるということで出ていきました。
一方、巫女の一団につかまった優一たちは、手足笛盗難の疑いをかけられ、蛇を入れたドラム缶に放りこまれそうになります。
そのとき奏が推理を述べ、雑誌編集者の一団が、実は窃盗団であることを明かしました。
彼らは、希少価値のある笛を収集家に売って大儲けするつもりなのです。
窃盗団は美亜のポケットからクルーザーのキーをすり取っていました。
窃盗団の一団は、島外に逃げるためにクルーザーまで行きますが、蛸に襲われて逃げ出します。
彼らは神社の本社にヘリを呼ぶことにしました。
次々に虫の字がつく生物に襲われ、そのたびに仲間をひとりずついけにえに差しだしながら、彼らは本社へ向かいます。
一方、優一たちは美亜を人質に取られ、老巫女の命令により、菊里とともに手足笛を取り戻すために本社へ向かいます。
途中、コウモリや蜘蛛に襲われますが、楽器を鳴らして鎮めることができました。
【結】ムシカ 鎮虫譜 のあらすじ④
優一たちは、本社の近くの池に出ました。
船を窃盗団に乗って行かれたため、洞窟を通ることにします。
洞窟の中には、奇妙な礼拝堂めいた空間があって、大工道具が置かれていました。
ここは一体なにか、と考える彼らを、いつの間にか虫が取り囲んでいます。
おまけに、菊里が精神的な動揺で笛を吹けなくなりました。
しかし、奏が、祭壇に置いてあった器をグラスハーブ代わりにして演奏し、虫たちを鎮めたのでした。
一方、礼拝堂にいた沙希たちも、御殿にいた美亜たちも、虫に襲われますが、みな自分の音楽の力で切り抜けることができたのでした。
そうして、とうとう優一たちは本社に到達します。
すでにヘリが着ていて、窃盗団の最後の生き残りの女、真由が乗りこもうとしていました。
そこへアリとハエの大群が襲ってきて、真由の全身にたかります。
そのすきに、盗まれた手足笛を取り戻すことができました。
しかし、菊里がヤケを起こしてしまい、禁断の譜を演奏し始めました。
たちまち、島中の虫という虫が押し寄せてきます。
優一は編曲の能力を生かし、菊里の曲にハーモニーをつけて、全く別の優しい曲に変えてしまいました。
虫の大群はそれで鎮まりました。
さっそく手足笛を確認しますが、十二本のうちの四本が壊れていました。
神楽には十二本の笛が必要なのです。
しかし奏が知恵を出し、手足笛の本当の正体を推理して、無事に神楽を遂行することができたのでした。
ムシカ 鎮虫譜 を読んだ読書感想
ホラーのなかに、ミステリーの要素や冒険小説の要素が多分に含まれた小説です。
雰囲気がかなり独特です。
ドタバタギャグ漫画の要素も入っていますし、浮世離れした雰囲気もあるのです。
まとめると、アニメ映画を見ているような感じで読んでいく小説だと感じます。
人間の主役は一応五人の音大生ですが、少女巫女の菊里や、若い巫女の音緒も重要な役割をになっています。
ですから、ちょっとした群集劇の趣きがあります。
もちろん、そこにムシたちが加わってきます。
ムシと言っても、純粋に虫ではありません。
虫という部首がある漢字で表される生物がうじゃうじゃと出てきます。
文字で書かれているから読めますが、これを仮に実写映画にしたら、さぞかし気持ち悪いことでしょう。
ゴキブリを見て「キャー」と悲鳴をあげる人は、ぜひこの小説を読んで、耐性をつけていただきたいものです。
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