監督:波多野貴文 2010年10月に東宝から配給
SP THE MOTION PICTURE 野望篇の主要登場人物
井上薫(岡田准一)
警視庁SP、本作の主人公。周囲の異変察知や視覚情報の記憶などに驚異的能力を持つ。その特殊能力の発現は両親を刺殺された場面を目の当たりにしたことがきっかけ。
尾形総一郎(堤真一)
井上の上司。特殊能力を持つ井上をSPに“スカウト”するも、抱えている悪意をその井上に察知されてしまった。
笹本絵里(真木よう子)
井上の同僚、女性SP。射撃の五輪代表候補の経歴を持ち、格闘技にも長けている。
伊達國雄(香川照之)
国会議員としては若手ながら与党の幹事長を務めている。
SP THE MOTION PICTURE 野望篇 の簡単なあらすじ
深夜枠ながら人気を博したテレビドラマで、謎を残したまま終わったドラマ版のその後を描いた劇場版2部作の前編にあたる作品です。
脳の異常活性による特殊能力を持つSP・井上薫は、全幅の信頼を寄せていた上司・尾形総一郎が何らかの悪意を持っていることに気づきます。
尾形は与党幹事長・伊達と密会しますが、そこには大学の同窓生である若手官僚もいました。
伊達に邪魔者視されているとも知らず、その伊達の警護を終えた井上は官房長官警護の緊急任務を尾形に命ぜられます。
未明の首相官邸へと向かう道中に待ち受けていたのはテロリストの波状攻撃でした。
SP THE MOTION PICTURE 野望篇 の起承転結
【起】SP THE MOTION PICTURE 野望篇 のあらすじ①
警視庁警備部警護課第四係のSP・井上薫は、係長・尾形総一郎らとともに屋外イベント会場で国土交通大臣の警護にあたっていました。
常人には理解しがたい特殊能力を有するが故に異端視されることもある井上ですが、いつも自分を理解してくれる尾形を信頼、尊敬していました。
しかし、その尾形が何らかの企みを持っていて、そこに危険な何かを感じ取っていたのです。
尾形も井上が自分のことを察知しているとわかっており、二人がぎくしゃくしている様子を同僚SPらも気にかけていました。
大臣のスピーチ中に満員の観客に紛れ込む危険人物を発見した井上が、その男を追跡します。
男が持っていた傘には爆弾が仕込まれていました。
壮烈な大追跡の末に井上は地下鉄駅構内でテロ未遂犯を確保します。
井上が街中を駆ける様子はメディアに流れるまでに至ります。
その映像に苦虫を?み潰したような表情を浮かべる男がいました。
それは与党幹事長の伊達國雄です。
パーティーを終えてホテルの一室に戻った伊達を尾形が訪ねます。
井上を除外したい伊達に対して、尾形はその井上を仲間に引き入れると言いました。
【承】SP THE MOTION PICTURE 野望篇 のあらすじ②
尾形は夜の公園に井上を呼び出します。
そこは井上が小学生の頃、両親がテロに巻き込まれて刺殺された現場でした。
尾形は『大義』の為に仲間になるよう井上に迫ります。
しかし、井上はそれをきっぱりと断り、この場から立ち去ります。
離れ行く井上の後ろ姿に向けて尾形は「残念だよ」と言うのでした。
『お国入り』する伊達の警護を尾形から命ぜられて、井上達は任にあたります。
特殊能力の影響で一時的に体調を崩した井上はトイレで偶然にも伊達と言葉を交わすなどの機会がありましたが、彼は伊達に何も感じてはいません。
一方の伊達は、やはり井上を気に食わなく思っていました。
伊達の警護を終えて帰庁する途中、井上達に尾形からの緊急命令が下されます。
近隣国がミサイルを発射した為に閣僚が急遽招集されることになり、自宅に居る官房長官を首相官邸まで護衛するのです。
SPを待ちきれずに単独で自宅を出た官房長官を見つけた井上たちでしたが、一本道の前後を車両で挟み撃ちにされました。
【転】SP THE MOTION PICTURE 野望篇 のあらすじ③
マスク姿のテロリスト達は拳銃も携行しており、官房長官の乗る車両を目掛けて襲ってきたのです。
発砲を受ける中でSP・笹本絵里は、銃口の向く先は官房長官ではなく井上であると気づきます。
その場を凌いだ井上たちでしたが、移動用車両が使えなくなった為に徒歩で官邸へと移動することになります。
そこにまたテロリストの挟撃を受けてしまい、四人いたSPのうち後方警護の二人が深い傷を負わされます。
満足に動けるSPは井上と笹本だけになりますが、大格闘の末に辛くもテロリストを制圧できました。
そこでも一時的にノーガード状態だった官房長官にテロリストは指一本触れなかったのです。
官房長官を連れて大通りに出たところでボウガンと爆発物を携えたテロリストが現れました。
ボウガンに肩を射抜かれてしまった笹本は、長官ガードに専念します。
投げられてきた爆発物を井上は勇敢にも手にするとテロリストへと投げ返します。
夜明け前の大通りを大爆発の炎が染め上げる中、残ったテロリストは逃走していきました。
【結】SP THE MOTION PICTURE 野望篇 のあらすじ④
笹本も離脱してしまったものの、官房長官を官邸に送る任務を井上は完遂させます。
道中で危険に晒してしまったこと、緊急招集だったのに官邸到着に時間がかかったことを井上は詫びます。
しかし、多数のテロリストから身を挺して自分を守ってくれたと信じて疑わない官房長官は井上らSPにいたく感謝するのです。
待機していた警官とともに長官の姿が消えます。
その直後、井上の注目が今までとは正反対にある遠方へと向けられます。
狙っているのなら撃ってみろと大きな身振りの井上をスコープが捉えています。
遠くのビルからスナイパーが井上を撃てる体制にありました。
そのスナイパーは最近になって尾形のスカウトで入ってきたSPだったのです。
当初はもちろん撃ち殺すつもりだったスナイパーですが、スコープ越しの遠距離にもかかわらず、井上に気圧されたのかまったく引き金を動かせません。
直後、狙撃は止めさせられました。
驚いたスナイパーが振り向くと、そこに尾形がいたのです。
逆光の朝日で物理的には見えづらいビルの屋上に井上は、『信頼していた』上司の姿を見つけているようです。
対する尾形は「残念だよ」とつぶやくのでした。
SP THE MOTION PICTURE 野望篇 を読んだ読書感想
テレビドラマから続くSPシリーズは、『岡田准一=アクション』を確立させたと思います。
早々から始まった追跡劇は、街中の走破から動いているトラックの荷台での格闘に至り、最後はホームに入ってきた電車との衝突を思わせた緊迫感で締めており、目が釘付けになりました。
格闘シーン以外では、笹本離脱により単独でテロ犯と相対することになった時や、スナイパーの存在を察知してその身をわざわざ晒した時などに、井上の強烈な気迫を感じさせてくれました。
また、アクションは何も岡田准一だけでなく、SP役とテロ犯役の全員に素晴らしさを見ることができました。
特に笹本役の真木よう子は「美人女優に付け焼刃的にアクションさせてみた」というものではなく、力強さがあり、男の犯人相手に正面から蹴りを入れるシーンは圧巻です。
2部作の前編ではあって全ての決着は後続作品になったものの、本作品のみでも充分に満足できる内容でした。
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