著者:乙一 2003年6月に集英社から出版
Closetの主要登場人物
イチロウ(いちろう)
本作の鍵となる人物。物語のオチを担う。
リュウジ(りゅうじ)
イチロウの弟。イチロウの妻に殺される。
ミキ(みき)
イチロウの妻。過去に秘密を抱えており、それがリュウジにばれてしまい、殺害する?。
フユミ(ふゆみ)
イチロウとリュウジの妹。事件を解決に導く。
Closet の簡単なあらすじ
ミキは、イチロウの家を訪れます。
しかし、その前に、自分の部屋に来るようにと、イチロウの弟である、リュウジに言われました。
訝しがりながらも、リュウジの部屋を訪れるミキ。
そこで、過去の秘密が、リュウジに知られていることがわかりました。
数分後、死体となったリュウジ。
犯人は、普通に考えればミキです。
しかし、物語は意外な展開を見せます。
思わず二度読みしたくなる、乙一さんの叙述トリック作品です。
Closet の起承転結
【起】Closet のあらすじ①
ミキは、夫の家に出かけました。
夫、イチロウの弟であるリュウジの部屋に呼び出され、母屋に入る前に訪れます。
リュウジは、ミキに何か話があるようでした。
リュウジは、部屋と、物置に鍵をかけます。
ミキが理由を尋ねると、大事なものがあるからということでした。
リュウジの部屋には、クローゼットがあります。
これは、ひいおばあちゃんに買ってもらったものであり、イチロウとおそろいのものです。
これにも鍵がかかるそうです。
ちなみに、イチロウは、散歩に出かけているようです。
リュウジは本題を切り出します。
リュウジは、仕事の関係で、インタビューを受けました。
インタビュアーは、ミキの同級生です。
そして、ミキの同級生と、店でお酒を飲んだ時、彼女とミキが乗った車が、自転車に乗った中学生を、ひき逃げしたという話を聞きました。
その秘密と苦悩を、作品に使うために聞かせてほしいというのが、リュウジの要件でした。
それから3分後、そこにはリュウジの死体があり、ミキの手には、灰皿が握られていました。
【承】Closet のあらすじ②
リュウジの死体と共に部屋にいるミキ。
部屋の扉がノックされます。
リュウジの母親でした。
編集部からの電話だということでした。
しかし、部屋には、リュウジが鍵をかけているため、開きません。
母親はあきらめて帰りました。
ミキは、死体を隠蔽することを考えます。
どこかに運び出さなければと考えますが、一度、どこかに隠しておくことにします。
それは、ひいおばあちゃんのクローゼットでした。
しかし、クローゼットは開きません。
ミキはクローゼットの鍵を回し、10分後に隠し終えました。
そして、リュウジの服から、鍵を全て持ち去りました。
翌朝の食卓、ミキは、イチロウの両親と、妹のフユミと共に、朝食を食べました。
父親は、リュウジが来ない為、リュウジの部屋を見に行きました。
しかし、部屋には誰もいません。
父親は誰もいなかったと告げました。
二時間後、ミキはリュウジの部屋に行きました。
フユミが、後からついてきます。
フユミは、服を片付けなければと、クローゼットに入れようとします。
ミキは、鍵がかかっているから開かないと、話し、部屋を出ようと話します。
その後、一人で再び戻り、リュウジの血の跡を処理しました。
【転】Closet のあらすじ③
昼食の際、フユミは、ミキにリュウジは部屋で殺されたという旨の手紙が入っていたと語りました。
そして、二人でイチロウの部屋で話すことを提案します。
一時間後、フユミはイチロウの部屋を訪れます。
そして、手紙について、詰問します。
イチロウが怪しいと話しました。
フユミの捜査の影響で、またも死体を運び出すことができませんでした。
次の日の朝食の時間、再び手紙が届きました。
灰皿で殺されたと書いてあります。
昼食の時間、ミキは、フユミをリュウジの部屋に呼び出します。
フユミも、ミキに話があるようでした。
二時、フユミがリュウジの部屋に訪れます。
二人の男を連れています。
ミキが何者か尋ねると、二人は後輩で、クローゼットを運んでもらうと語ります。
そして、動揺したミキに、犯人はあなただと問い詰めます。
否定するミキ。
しかし、証拠を突き付けられて、追い詰められます。
そして、実は犯人が別にいること、そして疑われやすい立場にあったため、ミキが死体を隠さざるを得なかったと語りました。
【結】Closet のあらすじ④
ミキが真相を語ります。
ミキは、あの夜、リュウジと過去の話をした後、物置にイチロウの絵を見に行っていました。
その間3分。
再びリュウジの部屋に戻ると、リュウジが死んでいたそうです。
犯人は、リュウジの部屋を開けて、殺害し、再び閉める必要があるため、リュウジの部屋の合いかぎを持っている人物となります。
しかし、それが誰なのか分かりません。
そして、ミキはある真実にたどり着きます。
それは、犯人は、あの時、リュウジを殺害した後、部屋から出ていなかったこと。
ミキは死体を隠すとき、クローゼットの鍵を回しました。
しかし、鍵は開きません。
ミキは鍵の調子が悪いと考え、自分の旅行鞄に死体を隠したのです。
しかし、実は犯人が、中から押さえていたのでした。
そして、現在。
ミキは、フユミをこの部屋に呼び出した理由を話しました。
それは、リュウジの部屋で話をすれば、ミキが真相に気が付いたと思った犯人が、再びクローゼットに潜むと考えたからでした。
予想は当たり、犯人はクローゼットの中にいるようです。
そして、ミキとフユミの2人は、中にいるのが犯人であることを確かめるため、いくつか質問をしたのち、クローゼットを開けます。
そこには、イチロウの顔がありました。
Closet を読んだ読書感想
この作品は、叙述トリックとなっており、普通に読み進めると、ミキの視点で描かれていると思われた物語が、実は全てイチロウの目線で語られたものだと、最後の最後で判明します。
私は、叙述トリックに初めて触れたのがこの作品が初めてであったため、その見事な技術に、ひどく感動しました。
乙一さんの小説は、このようなテクニックを使用しているものが多く、ミステリーを読む上での基礎を作ってくれます。
そのため、ミステリーの入門にふさわしい作家です。
よく練られたトリックと、最後のどんでん返し。
乙一さんの作品は、気楽に読めて、満足感も高いので、小説をあまり読んだことがないが、読書の習慣をつけたい、何か面白い話を知りたいという方は、ぜひ読んでみて下さい。
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