著者:恩田陸 2001年7月に角川書店から出版
ドミノの主要登場人物
鮎川麻里花(あゆかわまりか)
ヒロイン。大田区在住の小学4年生。児童劇団に所属していて女優に憧れている。
加藤えり子(かとうえりこ)
保険会社の事務職員。 10代の頃には走り屋として恐れられていた。
吾妻俊作(あづましゅんさく)
農業従事者。趣味で俳句にこっている。
雫石貫三(しずくいしかんぞう)
俊作の俳句友だち。 警視庁捜査四課を退職して現在は無職。
川添健太郎(かわぞえけんたろう)
過激派組織の一員。 爆発物に詳しい。
ドミノ の簡単なあらすじ
テロリストの川添健太郎が完成させたばかりの爆弾を、間違って持ち去ったのは俳句のオフ会で東京駅にやって来た吾妻俊作です。
爆弾を取り返した川添ですが吾妻の友人・雫石に正体を気づかれ、小学生の鮎川麻里花を人質に立てこもりました。
麻里花のお芝居にだまされた川添は逮捕され爆弾は回収されますが、起爆装置だけは行方不明のままで終わります。
ドミノ の起承転結
【起】ドミノ のあらすじ①
関東生命八重洲支社の7月の契約金額合計は最終日までで2億3100万円で、目標までにはあと9000万円足りません。
営業部長が1億円の契約を取り付けましたが、書類を運んでくる途中で乗っていた成田線は架線事故が起きて運転見合せ中です。
四街道駅で足止めを食らっている部長を、加藤えり子はレディース時代の後輩にバイクで拾ってもらいました。
関東生命がスポンサーをしている子供向けのミュージカル「エミー」のヒロインを選ぶために、関東劇場ではオーディションが行われています。
都筑玲菜の母親は自分の娘を勝たせるために、下剤を混入したジュースをライバルの鮎川麻里花に飲ませるつもりです。
筑波の山麓で農業を営む吾妻俊作はネットで知り合った俳句の仲間と会うために、高速バスで東京駅八重洲南口にたどり着きます。
バスを降りる時にお土産物にもってきた栗羊羮の袋が、過激派「まだらの紐」のメンバー・川添健太郎の試作段階の爆弾が入った紙袋と摩り替わったことに気がついていません。
【承】ドミノ のあらすじ②
俳句サークルの雫石貫三が待ち合わせ場所に指定してきた東京駅構内の動物広場へと向かう途中で、俊作は紙袋を川添にひったくられてしまいました。
雫石は現役時代は警視庁で反社会的勢力を相手にしてきたために、すぐに川添が公安に指名手配されていることを思い出します。
エミーのオーディションに受かったのは、腹痛に耐えながらも何とか歌って踊った麻里花の方です。
麻里花の母は喜びのあまりスキップをしていたらパンプスのヒールが折れてしまい、駅構内の靴屋のブースで修理しなければなりません。
修理が終わるのを待っていた麻里花は、川添のズボンのポケットからライターが転がり落ちたのを目撃しました。
ライターを拾ってあげた麻里花が手渡そうとした瞬間に、貫三から連絡を受けた警察官が川添に職務質問をします。
持っていたナイフを麻里花に突きつけた川添が立てこもり場所に選んだのは、丸の内南口のコンコースにテナントで入っているガラス張りの小さな喫茶店です。
【転】ドミノ のあらすじ③
人質となった麻里花はひと芝居を打つために、玲菜の母からもらった下剤入りのジュースをさも美味しそうに飲んでいました。
緊張のあまりに喉がカラカラになっていた川添は、思わす麻里花から水筒を取り上げて中身を一気に飲み干します。
たちまち下腹部に猛烈な痛みを覚えた川添は店を出た通路の奥にあるトイレに駆け込み、個室の中には警官が突入してきますがすでに抵抗する気力は残っていません。
バイクに乗せられて帰ってきた部長から契約書類一式を受けとったえり子は、直接東京本社まで持ち込みに行くつもりです。
八重洲支社から本社へは東京駅を通り抜けるのが最短ルートですが、人質事件の影響で丸の内側へ行く通路は封鎖されてしまいました。
えり子は月末のこの時期になるといつもオフィスビルの前で待機している、配達員のオートバイを借りて強行突破します。
駅構内を走行中に爆弾の入った紙袋が後部座席の留め金に引っ掛かりますが、本社を目指すえり子はスピードを落としません。
【結】ドミノ のあらすじ④
えり子が運転するオートバイは無線で緊急配備されて、パトカーとカーチェイスを繰り広げることになりました。
無事に書類を届けた帰りにようやく紙袋を見つけたえり子ですが、パッケージが有名な和菓子屋さんのものであるために中身が爆弾だとは夢にも思いません。
車体を傾けた瞬間に引っ掛かっていた紙袋が地面に落ちたところを、後続のパトカーが回収して何とか大惨事を免れます。
人質から解放された麻里花はリポーターに取り囲まれてマイクを向けられますが、しっかり自分が出演するエミーの宣伝をすることだけは忘れていません。
川添は紙袋の中だけではなくあらかじめ都内の15カ所に強力な爆弾を仕掛けていて、起爆装置のスイッチを入れるだけで一斉に爆発するほどの高性能です。
麻里花が拾ったライターこそが起爆装置でしたが、警官突入の際に手元から飛んでいってしまい見当たりません。
東京中央郵便局の前にある天使が載った石のポストの中に落ちていて、中身を集荷にやって来た郵便局員がライターを発見した時に新たなドミノが倒れ始めるのでした。
ドミノ を読んだ読書感想
子役のオーディションの会場へとやって来た鮎川麻里花に、いきなり危険が迫ってきてハラハラさせられます。
うっかりと口をつけてしまったジュースで思わぬ災難に巻き込まれながらも、これが後に彼女のピンチを救うアイテムになっているのも心憎いです。
中盤以降は巨大な迷路のような東京駅が舞台になっていて、個性的な登場キャラクターの思惑が絡んでくるので一気に読めてしまうでしょう。
バラバラに進行していたエピソードがひとつに重なりあい、クライマックスへとつながっていく展開が圧巻でした。
ひとまずのハッピーエンドだけでなく、次の物語を期待させるようなラストも良かったです。
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