【ネタバレ有り】地獄の犬たち のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:深町秋生 2017年9月にKADOKAWAから出版
地獄の犬たちの主要登場人物
兼高昭吾(かねたかしょうご)
本名出月梧郎という潜入捜査官。現在は東鞘会系神津組若頭補佐。
室岡秀喜(むろおかひでき)
兼高の弟分。優男の見た目だが、特殊な環境で育ったため食欲旺盛で無慈悲な暴力に抵抗がない。
阿内将(あないまさる)
兼高の上司。十朱に幼馴染であもあった警官を殺され、十朱と東鞘会を壊滅させることに執念を燃やす。
十朱義孝(とあけよしたか)
元潜入捜査官是安総。東鞘会の改革を行った神津の意思を継ぎ、現在は東鞘会組長としてグループをまとめている。
地獄の犬たち の簡単なあらすじ
東鞘会系神津組若頭補佐兼高昭吾。暴力を使い極道の道を邁進してきました。しかし兼高は本当は出月梧郎という潜入捜査官でした。彼の役目は自分の所属する東鞘会のトップ十朱義孝を消すことです。十朱はかつて兼高同様潜入捜査官でした。警察を裏切り、地獄に生きる場所を見出した十朱。そして十朱同様、地獄の世界に馴染みつつある兼高。果たして兼高は潜入捜査官として役目を果たすことができるのでしょうか。
地獄の犬たち の起承転結
【起】地獄の犬たち のあらすじ①
東鞘会系神津組の若頭補佐の兼高は弟分の室岡と沖縄にいました。
喜納という男を消すためです。
彼らの所属する神津組は東鞘会参加の団体で、東鞘会は5年前グループが組長氏家の獄中死により分裂。
東鞘会は氏家の片腕であった神津が引き継ぐこととなりましたが、先代の息子氏家勝一はそれに異を唱え自ら和鞘連合を設立しました。
その後和鞘連合により神津は暗殺され、東鞘会は和鞘連合を徹底的に殲滅させます。
勝一は国外逃亡、最後まで和鞘連合に残っていたのが喜納でした。
喜納は極道から足を洗うと公言していましたが、まともな職業につけるわけもなく東鞘会の縄張りを荒らすような仕事を始めたようでした。
そうなれば東鞘会は黙って入られません。
腕力一つでのし上がった武闘派の兼高と暴力に抵抗のない室岡が派遣されたのでした。
二人はつつがなく喜納を消し東京へ戻ります。
現在東鞘会は神津の右腕でもあった十朱義孝がまとめています。
警察の締め付けにより年々厳しくなっていく極道の世界。
海外進出を図るなどして業界全体の革新が進められており、腕力だけでなく頭脳が重要視されるようになってもきました。
そんな中でも、兼高と彼の弟分である室岡は積極手に体を張る仕事をしてきました。
業界内は変わりつつありますが、体を率先して張っていく兼高は上からの覚えも良いのでした。
特に今回は和鞘の最後の残党とも言える喜納を屠り、完全に東鞘会が一本化されたのです。
そんな兼高に金融ヤクザで腕力に自信のない神津組若頭三國は嫉妬を隠しません。
沖縄から戻った兼高に絡み、神津組の組長の土岐に仲裁される有様でした。
安定しているとも言い難い情勢の中、一枚岩ではいかない世界では気が休まることがありません。
唯一の癒しとも言える整体へ向かう兼高。
そこの整体師は、兼高にいつものように情報を渡してきます。
その整体師は警察の協力者でした。
兼高は東鞘会に潜り込んだ警察官だったのです。
【承】地獄の犬たち のあらすじ②
喜納の死により東鞘会の懸念が払拭されたと思われていましたが、兼高は土岐から相談を受けます。
土岐によれば、国外逃亡した勝一が海外で怪しい動きをしているとのことでした。
再び襲撃を仕掛けてくるのか、新たな問題が浮上してきました。
さて兼高を極道に仕立て上げたのはやり手警察官と囁かれている阿内という男でした。
兼高の潜入捜査官としての使命は十朱を消すことです。
東鞘会の十朱は、現在警察組織が手を出せないような存在となっています。
それは十朱もまた兼高のように潜入捜査官として東鞘会に入り、警察を裏切った存在だったのです。
本来なら東鞘会はすでに解体されている予定でした。
しかし十朱は警察組織を裏切り、自分が東鞘会のトップについたのです。
彼の裏切りにより、十朱の相棒で阿内の兄貴分だった警察官木羽は消されてしまいました。
少年時代、淡い恋心を抱いた相手が犯罪に巻き込まれて死んだため悪を憎む気持ちが強かった兼高。
悪を倒すため警官になったと言っても過言ではありません。
巨悪を倒すためと名目を与えられ、兼高はなにもかも捨てて極道の世界に入り込んだのです。
勝一が不穏な動きをし始めたことにより、兼高はその十朱の護衛の一人として選ばれました。
いよいよその時が来たとはやる兼高ですが、阿内は未だGOサインを出してはくれません。
十朱にヒットマンが差し向けられる事態となり、兼高らは十朱の命を救いますが、多くの犠牲を払いました。
もう和鞘連合の人間はいないはずなのに立ち回りをする勝一。
誰が手助けをしていのか、と疑問が浮かびます。
実は勝一を助けているのは阿内たちで、勝一と東鞘会がぶつかるよう画策していたのです。
戦争状態に突入した東鞘会と勝一一派。
東鞘会は本腰を入れて情報を集めていき、阿内が氏家勝一たちの手助けを行なっている警察官だとバレてしまいます。
兼高は阿内の家族を拉致することになってしまいます。
【転】地獄の犬たち のあらすじ③
兼高は徹底した極道の演技をし続けてきましたが、もしも阿内やその家族を手にかけるような展開になると思うとさすがに心穏やかではいられません。
阿内とは連絡が取れるわけもなく、兼高たちは阿内の妻子を連れ去ります。
妻子が拉致されたことで取り乱しみっともなく動揺する阿内はあっさりと捕まります。
しかし、それは阿内の想定内でした。
全てが演技、家族の拉致も計画のうちでした。
迫真の演技で阿内は、三國が自分の持ちアパートに氏家勝一を匿っていると告げ口します。
三國が裏切り者と思わされ動揺する東鞘会の面々。
とりわけ土岐はひどく動揺していました。
警察官殺しは問題になるので阿内たち一家は解放され、ひとまず兼高は安心します。
しかし問題は三國です。
阿内は兼高に計画の内容を説明はされていません。
土岐は三國から話を聞くため、兼高たちを連れて彼の元を訪れます。
疑いをかけられ憤慨する三國ですが、土岐に諭され、勝一を匿っていると阿内が主張したアパートに彼らを連れて行きます。
彼らが到着すると、ヒットマンたちが現れ激しい銃撃戦が始まります。
勝一も銃を持ち、彼らを待ち構えていました。
全て阿内の差し金でした。
三國は土岐をかばい、命をかけて土岐を守ることで身の潔白を証明しました。
土岐もまた銃弾に倒れ、勝一が兼高を撃たなかったことを見て、兼高が警官であると気がつくのでした。
土岐は十朱が警官だと知っていたのです。
息を引き取った土岐を前に親しげに話しかけてくる勝一を兼高は撃ち殺しました。
勝一も自分と同じように阿内の手駒に過ぎないのです。
役目が終わったら死ぬだけです。
【結】地獄の犬たち のあらすじ④
多くの幹部を失った東鞘会。
特に土岐を失った痛手は大きく十朱の憔悴はひどいものでした。
心配する兼高に、十朱は土岐が守ってくれると呟きます。
そんな時、様子のおかしい室岡に話があると呼び出されます。
生前三國は弱みを見つけようと兼高を調べ上げていました。
そして彼が警察と通じていることを知り、室岡に告げていたのです。
兼高はわずかばかりの後悔と申し訳なさを感じました。
そして室岡に、自分が警官であるという事実を告げます。
兄弟分としてやってきた二人。
もうどちらかが死ぬしか話は終われません。
室岡を殺し、そのまま土岐の内縁の妻の店に兼高は向かいます。
十朱の言葉から、土岐が内縁の妻に警察が欲しがっている十朱の重要な証拠預けているのではと思ったのでした。
そこに待ち受けていたのは十朱でした。
十朱は兼高が警官だと気がついていました。
室岡の様子がおかしかったことから、それに気がついたのです。
自分と同じになるよう十朱は兼高を誘います。
断った兼高を十朱は殺すため拉致して車に載せようとしますが、阿内がそこへ車で突っ込んできます。
銃撃戦になり、阿内は撃たれてます。
十朱は兼高に阿内に留めを刺し、再度仲間になるように誘いかけますがが、兼高は了承しません。
その時息も絶え絶えだった阿内が十朱を撃ち殺しました。
兼高は生き残り、無事に警察組織に十朱の秘密が詰まったSDカードを渡しました。
組織のために無事仕事をやり終えた兼高でしたが、もう警察として自分が思い描いていたような仕事をできるとは思っていませんでした。
悪を憎むと決めて多くの人を殺し、多くの人を裏切りました。
兼高の役目も終わりです。
予めコピーしていた十朱の秘密のデータを一斉に報道各社に送信しました。
これで自分は警察からも極道からも追われることでしょう。
兼高は次は自分が死ぬ番だろうと覚悟を決めていました。
地獄の犬たち を読んだ読書感想
悪を憎み、悪を倒すはずだったのに、悪も正義も分からなくなってしまった兼高。
最後は彼なりの正義を見つけたのでしょうか。
それとも殺した人々への弔いだったのでしょうか。
結局兼高自身が警察官として最初に描いたゴールにはたどり着けませんでした。
潜入捜査官として役目は果たしましたが、自身の生き方は失われました。
一度なってしまうと潜入捜査官自身の幸福な結末は望めないのでしょうか。
だとしたらあまりに過酷な仕事です。
哀愁漂よう兼高に対し、トリックスターとも言える阿内。
手の内を見せず、ブラックユーモアのような存在感で笑っていいのか悪いのか兼高でなくても戸惑います。
作中でオスカー賞と揶揄られましたが、まさにそのとおりと言えるでしょう。
そんな阿内でさえ全てが捨て身。
登場人物誰もが終わりだけを見つめて邁進する骨太の物語でした。
極道の物語なので、中年男性から壮年男性が多く出てきますが、みな個性が強く混乱しません。
硬派ですが疾走感があります。
とても説明なども多いですが物語のテンポが良くあっという間でした。
真っ黒な物語が猛スピードで走り続け読者を引きずり最後まで一気に読ませませてくれます。
コメント
漫画化された「ヘルドッグス 地獄の犬たち」を少しだけ読み、怖いお話だと全部を読み切れる自信がなかったので、お話のあらすじを読むことができて感謝しています。