「メインテーマは殺人」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|アンソニー・ホロヴィッツ

メインテーマは殺人

【ネタバレ有り】メインテーマは殺人 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:アンソニー・ホロヴィッツ 2019年9月に東京創元社から出版

メインテーマは殺人の主要登場人物

アンソニー・ホロヴィッツ(あんそにー・ほろヴぃっつ)
本作の語り手。作家。

ダニエル・ホーソーン(だにえる・ほーそーん)
ロンドン警視庁の顧問。元刑事。

ダイアナ・J・クーパー(だいあな・じぇい・くーぱー)
資産家の老婦人。

ダミアン・クーパー(だみあん・くーぱー)
ダイアナの息子。俳優。

ロバート・コーンウォリス(ろばーと・こーんうぉりす)
葬儀会社の経営者。

メインテーマは殺人 の簡単なあらすじ

作家アンソニー・ホロヴィッツは、刑事フォイルシリーズの脚本を務めるなど人気の作家です。

そんな彼の元に一本の電話が入ってきました。

相手はホーソーンという元刑事で、犯罪ドラマ撮影のアドバイザーとして、ホロヴィッツを一緒に仕事をしたことがありました。

ホーソーンはホロヴィッツに仕事話を持ち掛けます。

ホーソーンは今事件の捜査をしており、そのことを題材に小説を書かないかと言ってきたのです。

最初は乗り気でなかったホロヴィッツでしたが、結局同意してホーソーンについて回りながら小説を執筆していくことになるのでした。

メインテーマは殺人 の起承転結

【起】メインテーマは殺人 のあらすじ①

自分の葬儀を手配、その日のうちに死亡

作家のアンソニー・ホロヴィッツは、スティーブン・スピルバーグから『タンタンの冒険2』の脚本を依頼され、初稿を送って返事を待っているところでした。

そんな彼の元にホーソーンという元刑事から電話がかかってきます。

ホーソーンは、ホロヴィッツが脚本を担当した犯罪ドラマの撮影のときに、アドバイザーとして現場にやってきていた人物でした。

ホーソーンは元刑事で、今はロンドン警察庁の顧問として活動しています。

ホーソーンは今、クーパー夫人の殺人事件を担当しているのですが、自分を主人公に据えてこの事件を小説化しないかとホロヴィッツに持ち掛けます。

クーパー夫人は、自分で自分の葬儀の手配をしに行った日に、何者かに殺害されたのです。

不思議な事件ですが、ホロヴィッツはこの申し出を断ります。

なぜならホーソーンは刑事としては優秀ですが、とにかく偏屈な人間で、一緒に仕事をするのは願い下げだったからです。

しかし二日後、ホロヴィッツは出席したトークイベントで会場の女性から「あなたはなぜ現実の話を書かないの?」としつこく質問されます。

最初はうっとおしく思っていたホロヴィッツでしたが、自分の今後の作家人生のことを考えて現実に向かい合うことが重要ではないのかと思うようになります。

そして、ホロヴィッツはホーソーンに連絡を入れるのでした。

【承】メインテーマは殺人 のあらすじ②

有力な容疑者

クーパー夫人殺しの有力な容疑者は、ゴドウィン家の人間です。

クーパー夫人は昔、眼鏡を着用しないまま車を運転して、道路に飛び出してきた二人の子供を跳ねた過去がありました。

その被害者がティモシー・ゴドウィンとジェレミー・ゴドウィンの双子の子供です。

クーパー夫人はそのまま逃げて、数時間後に警察署に出頭してきました。

この事故で、ティモシーは死亡、ジェレミーは脳に重度の損傷を負いました。

しかし、裁判がクーパー夫人に下した判決は、遺族から見ればあまりにも軽すぎるものでした。

このような過去があり、ゴドウィン家とクーパー夫人には因縁があるのでした。

過去の事故がきっかけでゴドウィン家は崩壊していました。

双子の父親のアランは家を出て、今では母親のジュディスとジェレミーの二人暮らし、ジェレミーの世話は事故の前から子供たちの面倒を見てきた乳母のメアリがしています。

ホーソーンはゴドウィン家だけでなく、クーパー夫人と親しかった人たちから一通り聞き込みを行っていきます。

そして、クーパー夫人の葬儀の日がやってくるのでした。

【転】メインテーマは殺人 のあらすじ③

第二の殺人事件

クーパー夫人の葬儀は粛々と行われましたが、棺を埋葬するときになって思いもよらないトラブルが発生します。

棺の中から「バスのタイヤはぐるぐるまわる〜」と子供向けの歌が聞こえてきたのです。

この歌を聞いてクーパー風神の息子のダミアンは、激しく動揺します。

ダミアンは度の過ぎた悪ふざけだと葬儀会社のスタッフを怒鳴りつけると、フィアンセや他の参列者を置いて一人で自宅に帰宅します。

棺の中には自由な音声データを入れられる目覚まし時計があり、時間が来て動作したのでした。

スタッフが棺の蓋を占めた時にはそのようなものはなく、棺のそばにはほとんどの時間スタッフがついていました。

犯人はスタッフがいないわずかな隙をついて時計を仕込んだのです。

ホーソーンは、葬儀後に参列者からクーパー夫人について話を聞いて回りますが、車の鍵を見て考え事をしているときに衝撃を受けます。

彼はホロヴィッツを連れて急いでダミアンの元へ向かいます。

しかし、遅すぎました。

ダミアンは自宅で何者かに刺殺され、血の海に横たわっていたのです。

事件が新たな局面に入ったことで、ホーソーンはダミアンのフィアンセのグレース、彼女の父親マーティン、葬儀会社社長のロバートからも話を訊きます。

ホロヴィッツは依然としてクーパー夫人の起こした事故が気になっていましたが、ホーソーンはその事故の真相を明らかにします。

クーパー夫人の事故では、子供たちが道路に飛び出したのはアイスクリーム屋を目指していたからということでしたが、本当は父親の姿を見つけて駆け寄っていたのです。

事故当時、父親のアランは出張に行っていて事故現場にはいなかったというのは嘘でした。

アランは乳母のメアリと愛人関係にあり、事故当日、妻がいないことをいいことにこっそり逢引をする予定だったのです。

だから事故の本当の原因は、いないはずのところにいたアランにあり、彼がクーパー夫人を恨む理由はなかったのです。

【結】メインテーマは殺人 のあらすじ④

役者の復讐

有力な容疑者が消えましたが、ホロヴィッツはホーソーンと別行動をとっているときに、あることに気づきます。

彼がダミアンの通っていた演劇学校を訪れて、学生時代のダミアンの写真を目にしたとき、見知った顔を見つけたのです。

ホロヴィッツはその人物、葬儀会社社長のロバートの元を訪れます。

ホロヴィッツは、ロバートにダミアンと同級生だっただろうと訊ねますが、出されたお茶に薬を盛られてしまいます。

動けなくなったホロヴィッツは、ロバートからダミアンの悪行を語り出します。

ロバートは卒業公演の『ハムレット』で主役をやる予定でした。

卒業公演は芸能プロダクションの関係者も視察に来る、いわばオーディションの一環でもありました。

その大事な公演を前に、ロバートは流感に臥せってしまいます。

これはダミアンの計略でした。

流感に感染していたアマンダという女性をダミアンの元へ差し向け、彼にキスをさせて病気を移したのです。

これでロバートは役者の道を断たれてしまったのです。

そして、俳優としてどんどん成功するダミアンに憎しみを募らせたのでした。

殺人計画はクーパー夫人が自分の葬儀の手配をしたときに考え出したのです。

クーパー夫人が死ねば、ダミアンは葬儀のために戻ってくる。

そのときに彼を始末しようと。

つまり、クーパー夫人はダミアンをおびき寄せるために殺されたのでした。

ロバートはホロヴィッツを始末しようとしますが、間一髪でホーソーンが助けに来て、ロバートは自殺するのでした。

後日、ホロヴィッツはホーソーンの家を訪ねます。

一緒に行動するうちに二人のわだかまりは解けていましたが、ホロヴィッツは彼の家で驚くべきものを見ます。

ホーソーンの家族写真、そこにはトークイベントで「あなたはなぜ現実の話を書かないの?」といった女性が写っていたのです。

その女性はホーソーンの妻で、ホロヴィッツがやる気を出すように、彼が送り込んだのでした。

メインテーマは殺人 を読んだ読書感想

作者が語り手という形をとっているので、現実とフィクションが微妙に混ざり合ったような不思議な感覚で読み進めていきました。

ホーソーンがホロヴィッツの書いた原稿に目を通してケチをつけたり、この話は作中のホロヴィッツが書いた原稿というていだったりと最初はシャーロック・ホームズを連想しました。

ですが、ホーソーンの捜査はポアロのように一人一人の関係者の話を訊いて回るというもので、クリスティの作風を感じました。

一つの事件を追っていくのではなく、過去の自動車事故の真相も合わせることで物語に厚みが出ています。

自動車事故は殺人事件のミスリードにもなっているので、殺人事件のストーリーを邪魔せずにうまく物語に組み込まれています。

本国では二作目も刊行されているようなので、続編が翻訳されたらぜひとも読んでみたいです。

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