【ネタバレ有り】君と放課後リスタート のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:瀬川コウ 2018年10月に文春文庫から出版
君と放課後リスタートの主要登場人物
九瀬永一(くぜえいいち)
主人公。クラスの副委員長として、集団記憶喪失にかかった二年三組のまとめ役を担うことになる。
叉桜澄(ささくらすみ)
ヒロイン。クラスの委員長。正義感で突っ走る危うげな性格の持ち主。
小鳩祐介(こばとゆうすけ)
記憶を失う前の自分とのギャップに悩む。
海野夏美(うみのなつみ)
記憶喪失前の自分の想い人の調査を主人公に依頼する。
君と放課後リスタート の簡単なあらすじ
比田響高校の二年三組は突如クラス全員が記憶喪失になります。クラスの副委員長であった九瀬は、委員長である叉桜と共にクラスの問題解決に乗り出すこととなり、正義感溢れる叉桜に引っ張られる形でクラスメイト達の相談に乗っていきます。九瀬自身も記憶喪失前の自分とのギャップに悩むことになりますが、叉桜との行動の中で、今のままの自分でもいいのだということに気づかされるのでした。
君と放課後リスタート の起承転結
【起】君と放課後リスタート のあらすじ①
九瀬永一は気が付くと比田響高校の二年三組の教室に居ました。
そこが自分の通う学校であり、教室であるということは分かったものの、教室にいるクラスメイトのことは何も覚えておらず、同じようにクラスメイト全員が記憶喪失になっており、人間関係に関する記憶だけが欠如していました。
翌日、九瀬とクラスメイトの一人である叉桜澄は、担任からクラスメイトをまとめ、記憶喪失により起こるであろう問題の解決を依頼しました。
担任は、それが呼び水となって引いては記憶の回復になるかもしれないと言います。
何故それを自分達が請け負わねばならないのか、九瀬は疑問に思いますが、担任がそれは叉桜がクラスの委員長であり、九瀬は副委員長だからだと述べます。
二年三組は学業や学校行事で優秀な成績を収めており、それは「理想の三組」と周りから呼ばれるほどでした。
それというのも、二人の尽力あってこそだというのです。
記憶消失直後から気の強い振る舞いの目立つ叉桜のことを苦手に思っていた九瀬は、その事実に驚きます。
更には、スマホのメッセージを遡って確認する中で、自分と叉桜が恋人関係であったことも発覚し、何故自分は叉桜と付き合うことになったのか、九瀬の頭には疑問が積もっていくばかりでした。
【承】君と放課後リスタート のあらすじ②
クラスメイト達はメッセージアプリの履歴から以前の関係を確認し、関係性の再構築を図っていました。
そんな中、アプリの会話に不自然に抜けがあることから、消えてしまったクラスメイトがいるのではないかと噂になっていました。
真面目な叉桜は強引に九瀬を巻き込み、消えてしまったクラスメイトの調査を始めます。
結果として、アプリのバグを利用して秘密裏にアプリのグループから抜けていた小鳩がその正体であることを突き止めます。
彼は記憶消失直後から不登校になっていました。
九瀬と叉桜は小鳩宅へお見舞いに行き、彼が不登校になったのは、メッセージの履歴から自分がクラスにおいて孤独であったことを知ったことが原因だと知ります。
叉桜は何とか彼を助けられないかと九瀬に相談します。
叉桜のその正義感はどこからくるものなのか。
彼女は記憶喪失前の自分の少女趣味が理解出来ず、過去の自分とのギャップを恐れ、それにより記憶喪失へと立ち向かおうとしていたのでした。
後日、クラスメイトの結城を伴って再び小鳩宅へ向かう二人。
実は、記憶消失直後の混乱で結城と小鳩はスマホを取り違えており、小鳩が感じた孤独は勘違いであったのです。
結城も自身が孤独を好むことを思い出し、その事実に納得しました。
見事に小鳩の悩みを解決した九瀬は、叉桜へ必要以上に過去を気にすることはないとアドバイスします。
小鳩も勘違いをしていた。
叉桜も過去を気にせず、今の自分のままでよいと。
叉桜は彼の助言を受け入れ、九瀬はそんな彼女と少しは距離が縮まったような気がしたのでした。
【転】君と放課後リスタート のあらすじ③
クラスメイトの女子である海野と、その友人である別クラスの白戸から九瀬と叉桜は相談を受けます。
海野のスマホのメモにラブレターと思われる文面が保存されており、海野は記憶喪失前に誰かに告白する予定だったのではと考えました。
相談は、その告白する相手が誰かを突き止めることでした。
九瀬はラブレターの文面から、海野と同じ吹奏楽部の井波がその相手ではないかと推理します。
白戸の提案で海野と井波はデートすることになりますが、デート後に海野ははっきりとした根拠が無いながらも、井波は想い人ではないと断言します。
そして、その内同じ人を好きになるだろうからと依頼を取り下げます。
記憶を失ってなお、同じ相手を好きになることがあるのか。
もやもやとした気持ちを抱える九瀬は独自に調査を行い、最終的に白戸が海野の想い人であることを突き止めます。
白戸は記憶を失ってしまった海野の気持ちを信じることが出来ず、また女性同士という理由も合わさり、真実を言い出せずに海野を試す様な真似をしてしまったのでした。
記憶を失っても気持ちが変わることのなかった海野は、白戸へ告白して付き合うことになります。
九瀬は過去の自分と今の自分ははっきりと違う人間だと感じていました。
それでもなお、叉桜をまた好きになることがあるのか。
海野と白戸の二人を見て、九瀬はそんなことを考えたのでした。
【結】君と放課後リスタート のあらすじ④
九瀬はバスケ部に所属していました。
部員に誘われ、記憶消失後初めて練習に参加しますが、彼は皆の足を引っ張るばかりでした。
部員達は九瀬が部の中心となって活躍していたといい、後輩の女子部員は九瀬のことをいじめ問題を解決したヒーローだったと称賛します。
記憶を失う前、部活やクラスで活躍していた自分。
九瀬は、それが今の自分と同一人物だととてもではないが思えません。
過去の自分をそうまで突き動かしたものとは何なのか。
九瀬はそれが叉桜に対する憧れの感情がそうさせたのだと気付きます。
叉桜の正義感に惹かれ、自分もそうあろうとしたのです。
しかし、今の九瀬は正義感を胸に一人突っ走る叉桜のことが心配でなりませんでした。
それ故に、今の自分は彼女に憧れる自分ではなく、彼女を支える自分にならなければいけない。
九瀬はそう決意し、過去の自分には戻らないとバスケ部の部員達へと伝えるのでした。
結局のところ、集団記憶喪失とは何だったのかと話す九瀬と叉桜。
九瀬は教室の黒板に浮かび上がる文章を見つけます。
「今度こそ皆で理想の三組を作ろう」クラスメイトの記憶を消したのは、クラスメイトの中にいると九瀬は確信するのでした。
君と放課後リスタート を読んだ読書感想
この作品はシリーズ1作目となります。
理想の三組とまで呼ばれたクラスが何故集団記憶喪失という奇妙な事態に遭遇したのか。
その謎については今後のシリーズに持ち越しとなりましたが、それでは今作の見どころがどこにあるかと言えば、それは記憶という要素が人間を形作るにあたりどのような作用を及ぼしているか、というところではないでしょうか。
作中の登場人物達は、その多くが記憶を失う前の自分と失った後の自分との違いに悩んでいます。
記憶一つを失うことで、極端な場合は人格が変わったようにすら感じられてしまう。
それだけ記憶というものが人格の形成に寄与しているということが、物語の中に落とし込まれていました。
記憶を失った彼らが行き着く先はどこなのか。
シリーズの今後が大いに気になるところです。
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