【ネタバレ有り】義弟 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:永井するみ 2008年5月に集英社文庫から出版
義弟の主要登場人物
克己(かつみ)
スポーツインストラクターとして働く主人公。父親との確執から、実家に火をつけようとした過去がある。義理の姉、彩に兄弟以上の感情を持っている。
彩(あや)
弁護士として働いている。バイク事故により片足をひきずるように歩いている。男性とうまく付き合えなかったが、島岡とプラトニックな不倫関係を結んでしまう。
島岡(しまおか)
彩の顧客だったが、次第に不倫関係に陥ってしまう。心臓の持病があり、彩との密会中に死亡する。
真由美(まゆみ)
島岡の年下の妻。島岡の死の真相を突き止めようと彩のもとにやってくる。
義弟 の簡単なあらすじ
主人公・克己は義理の姉の彩に対し、複雑な感情を持っていました。そんな時、彩の不倫相手の島岡が彩の職場で発作を起こして亡くなったとの知らせを受けます。克己は彩のために島岡の死体を別の場所に移し、自体を隠蔽しますが、島岡の妻・真由美がそれを不審に思い、彩を巻き込んでの調査を始めるのでした。
義弟 の起承転結
【起】義弟 のあらすじ①
克己は幼いころからサッカーが好きで、将来の夢はサッカー選手でした。
しかし、父親がそれを許しませんでした。
父親の再婚相手の娘・彩があまりにも優秀すぎたので、父親は彩を弁護士に、克己を医者にしようと目論んでいたのです。
そのせいで、克己はサッカーを無理やり辞めさせられ、勉強漬けの日々を送っていました。
しかし、サッカーを辞めても克己はスポーツの道に進むという夢を諦められませんでした。
次第に克己はスポーツインストラクターになりたいと考え始めますが、どうしても父親は許してくれません。
それどころか、克己を陥れるような発言ばかりするのです。
ストレスが頂点に達した克己は家に放火をしようとします。
そして実行に移す日。
大学進学と同時に家を出ていた彩が偶然家に戻ってきたのです。
放火の準備がなされた克己の部屋を見て絶句する彩ですが、克己を落ち着かせようとバイクの後ろに克己を乗せてツーリングに出かけます。
そしてその途中、そのバイクは事故に遭います。
克己は無事でしたが、彩はその後遺症で片足が不自由になってしまったのです。
【承】義弟 のあらすじ②
彩は大学を出てから、弁護士として働いていました。
職場は小さな事務所ですが、彩は外見も腕も良かったので、次第に人気弁護士となり、テレビでコメンテーターを務めるようにもなりました。
しかし、彩は男性恐怖症の気があり、交際相手はいませんでした。
そんな時、相続の相談に訪れた島岡と親しくなります。
島岡は少し強引なところがあり、彩は流されるように不倫関係に陥ります。
しかし、島岡は心臓に持病があるために、彩とホテルに行っても関係は持てませんでした。
彩も男性が苦手なので、添い寝だけをする関係に居心地の良さを感じます。
ある日、島岡は彩の職場が見たいと言い出します。
彩は最初は渋りましたが、強引な島岡に根負けして、彩だけが残業をする日に島岡を事務所に呼び出します。
やってきた島岡は少し疲れているようでした。
食事をした後、彩は島岡に事務所内のソファー兼ベッドを勧め、添い寝をします。
しかし、少しすると、島岡が発作を起こしたのです。
持っていた薬を飲ませても治りません。
彩が救急車を呼ぶべきか迷っている間に、島岡は息を引き取りました。
【転】義弟 のあらすじ③
パニックを起こした彩は、克己に連絡をしました。
克己はすぐに彩の事務所にやってきて状況を判断すると、すぐに島岡の遺体を運びだし、島岡が投資関係の仕事をしていることから、とっさの判断で証券会社の前に島岡を横たえました。
仕事の帰りに発作を起こしたという体を繕ったのです。
島岡は彩とお揃いのヴィンテージの腕時計をしていました。
克己はその腕時計を奪いますが、彩にはなにも伝えませんでした。
彩は克己に感謝をしますが、克己は彩が島岡のような大したことのない男と不倫関係にあったことに落ち込みます。
死体はすぐに発見されますが、ある日、彩のもとに島岡の妻・真由美が自分が警察に疑われているから弁護を頼みたいと連絡をしてきます。
というのも、島岡は生前、彩のことを腕のいい弁護士だと真由美に話していたのです。
彩は驚きますが、とっさに断ることもできず、真由美に協力するようになります。
警察が言うには、死の直前に島岡が飲んだ薬は、ただのビタミン剤であり、誰かがすり替えた可能性があるそうなのです。
彩はその事実を知り、真由美が薬をすり替えて島岡を殺したのではないか、真由美は自分と島岡の不倫関係を知っていたのではないかと怯えるようになります。
【結】義弟 のあらすじ④
真由美の出現により、彩は恐怖の日々を送るようになりました。
克己にも時折相談をするのですが、克己は「真由美には関わるな」の一点張りです。
克己に島岡のヴィンテージの時計がなくなっていることを伝えても、「通行人に盗まれたんだろ」とつれない返事が返ってきます。
ある日、克己が学校の機材を破壊しているところを現行犯逮捕されたという知らせが飛び込んできました。
その時、克己はヴィンテージの時計も破壊していたのです。
時計は克己が持っていたことを知り、彩は克己の思いの強さを知ります。
もう克己にこれ以上の罪を背負わせたくないと彩は克己の弁護に乗り出します。
島岡の捜査も進んでいました。
薬がビタミン剤にすり替わっていたのは、島岡が自分でプラシーボ効果のために行っていたことだと医師が証明してくれました。
島岡は、妻との間に子どもを望んでいました。
不妊治療にも取り組んでおり、その治療がつらいときに彩に会いに来ていたのです。
彩と会うときの島岡が疲れていたのはそのためでした。
島岡は心臓の薬を飲んでいては副作用で不妊治療にも悪影響が出るとビタミン剤を飲んでいたのです。
彩は、島岡は本当は妻のことが好きだったことに気付き、真由美に謝罪をし、今後は一人で生きていくことを誓うのでした。
義弟 を読んだ読書感想
過去も現在もつらい境遇の姉弟の物語でした。
克己も彩もお互いのことを思いあっているのに、その表現が不器用すぎるから事故だったり死体遺棄だったりが起こったのでしょう。
少し展開が強引な場面もありましたが、スリルがあってサクサクと読み進めることができました。
ただ、あまりにもいろんなことが関連しあっていたので、伏線が多すぎてついていけないところもありました。
もう少しキャラクターに華があれば、感情移入もしやすかったかなと思います。
ただ、心情の描写はとてもリアルで、ありえない話ではあるのですが、心をえぐってくるストーリーでした。
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