【ネタバレ有り】火花 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:又吉直樹 2015年3月に文藝春秋から出版
火花の主要登場人物
徳永(とくなが)
本作の主人公。売れない芸人で、お笑いコンビ・スパークスのメンバー。熱海の花火大会で神谷と出会い、神谷を師と仰ぐ。
神谷(かみや)
お笑いコンビ・あほんだらのメンバー。常識から外れた発想の持ち主。多額の借金を抱える。
山下(やました)
お笑いコンビ・スパークスのメンバー。同棲相手の妊娠を機に、芸人から足を洗う。
真樹(まき)
神谷を部屋に住ませてあげている女性。神谷と交際はしていない。
大林(おおばやし)
お笑いコンビ・あほんだらのメンバー。神谷の借金を心配している。
火花 の簡単なあらすじ
売れない芸人の徳永。彼は神谷と出会い、自分には無い笑いのセンスに惹かれます。神谷も徳永を気に入り、芸人の仕事の合間にも共に過ごすこととなります。ところが、彼らは互いに別の道を歩み、やがて疎遠になります。笑いとは何か、人間とは何かを読者に問いかける作品です。
火花 の起承転結
【起】火花 のあらすじ①
熱海の花火大会で、若手の芸人達が漫才を披露しています。
主人公の徳永も、その芸人達の一人です。
ただ、花火を観に来た人々は誰も徳永たちの漫才を観ていません。
自暴自棄になりながらも、徳永は持ち時間の終わりまで漫才をやりきります。
徳永たちの次に舞台に出てきた男が、「仇をとる」と怒りの表情を浮かべて徳永に声をかけます。
その男の漫才が始まり、一人一人を指差しながら「天国に行くか地獄に行くか分かる。
地獄、地獄、地獄」と叫びます。
その漫才に、主催者は顔を赤くして怒ります。
しかし、その常識にとらわれない笑いに徳永は魅了されます。
男は徳永を飲みに誘い、お笑いコンビ・あほんだらの神谷と名乗ります。
徳永は神谷を師と仰ぎ、飲んでいる最中に弟子入りを志願します。
すると、神谷は「俺の伝記を書いて欲しい」と提案します。
徳永は伝記を書く機会は勿論、読む習慣もありません。
それでも、神谷の言動をノートに記録していくことを始めます。
【承】火花 のあらすじ②
定期的に、小さな劇場でスパークスを含む若手芸人達がネタ見せと呼ばれるオーディションをします。
花火大会から一年が経ちますが、スパークスが大ブレイクすることはありません。
それでも、徐々に劇場の観客に名前を覚えてもらったり、お笑い雑誌で小さく取り上げられます。
その頃、徳永に神谷から連絡が来ます。
大阪の大手事務所に所属していた神谷が、徳永のいる東京に拠点を移すという内容でした。
神谷は真樹という女性の家で生活をします。
二人は交際していません。
神谷は家賃を一切払いませんが、真樹は気にしていません。
神谷が徳永を連れてくると、優しく出迎えてくれます。
芸人の仕事の合間に、三人で会う機会が増えていきます。
徳永は、いつか神谷と真樹が結婚するものだと漠然と思っていましたが、それは崩れ去ります。
真樹が神谷とは別の男と交際することになったのです。
真樹を失ってからも、徳永と神谷は二人で度々会います。
神谷の個性的な感性は中々世間に評価されませんが、スパークスは深夜番組に出演したり、注目の若手として小さく雑誌に取り上げられるようになります。
【転】火花 のあらすじ③
神谷の相方の大林から、神谷が多額の借金を抱えていることを徳永は知らされます。
大林はそんな神谷を心配しているのです。
徳永と会うと神谷は必ず奢るため、徳永は神谷にお金を使ってほしくないと感じ、疎遠になります。
その頃、徳永の仕事に変化が訪れます。
スパークスが出演していた漫才番組が一年で終了したのです。
さらに、相方の山下からコンビ解散を求められます。
山下と同棲していた女性が妊娠し、二人は籍を入れたのです。
家族の生活を支えるために芸人から足を洗う山下を、徳永は祝福し受け入れます。
スパークス最後の舞台での漫才は、観客達の拍手を浴びて幕を閉じます。
神谷も舞台を見届け、号泣するのでした。
その後、徳永も芸人を辞め不動産屋に就職します。
そんな時に、大林から「神谷の居場所を知らないか」と連絡を受けます。
大林は神谷と連絡がとれなくなり、心配しています。
神谷の住んでいたアパートに徳永は向かいますが、すでに神谷はそこから姿を消してしまっていました。
【結】火花 のあらすじ④
ある日、仕事を終えて一人で飲んでいた徳永に、知らない番号から着信があります。
一年ぶりに、神谷から連絡があったのです。
徳永は、神谷が飲んでいる居酒屋へ急いで向かいます。
徳永が着くと、すでに酔って顔を赤くした神谷がいました。
一年間何をしていたのかと徳永が尋ねると、借金を返済するお金を作っていたと答えます。
自己破産もしたと言います。
音信不通だった神谷は、事務所も解雇されてしまいました。
話をしていて、徳永は違和感を感じます。
その違和感の正体は、神谷の胸でした。
神谷は「おじさんの胸が大きかったら面白い」と考え、シリコンを注入する手術を受けてFカップになっていたのです。
徳永は「性同一性障害等で苦しむ人達は、馬鹿にされているように感じるだろう。
馬鹿にするつもりがなくても、世間に受け入れられるはずがない」と、冷静に現実を突きつけます。
「徳永だけには、笑って欲しかった」と神谷は言いながら、涙を流します。
そんな神谷を、徳永は熱海へ温泉旅行に誘います。
宿泊した温泉旅館で、素人参加型のお笑い大会のポスターを発見します。
二人はネタ作りを始め、「とんでもない漫才を思いついた」と神谷が言います。
火花 を読んだ読書感想
困難を乗り越えて大物芸人になるようなサクセスストーリーではありません。
泥臭くやりたいことだけをやる神谷と、自分の限界を感じながら世間に認められる笑いを作る徳永、どちらもそれぞれの魅力があります。
私は、神谷のように他人の目を気にせず自分のセンスのみ信じて生きることができません。
でも、どこか神谷のような人を羨ましいと思います。
だからこそ、自分に近い主人公の徳永に感情移入してしまいます。
著者が芸人の又吉直樹氏のため、若手芸人達の日常にリアリティがあります。
有能な後輩に焦る気持ちや、インターネットの一般人のコメントに対する感情。
臨場感があり、あっという間に一冊読めてしまいました。
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