【ネタバレ有り】狐火の家 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:貴志祐介 2008年3月に角川書店から出版
狐火の家の主要登場人物
榎本径(えのもとけい)
本作の主人公で表の顔は防犯コンサルタントで、裏の顔は泥棒。密室破りを得意とし、事件解決に協力する。防犯ショップ「F&Fセキュリティショップ」を経営している。
青砥純子(あおとじゅんこ)
美人弁護士。頭は良いが、密室トリックのようなものを考えるのは苦手で天然発言を連発する。
鴻野光男(こうのみつお)
警視庁捜査一課の警部補。大柄で目つきは悪く態度は横柄。榎本とは旧知の仲。
狐火の家 の簡単なあらすじ
美人弁護士と泥棒というコンビが数々の密室事件に挑みます。長野県の荒神村にて、西野真之の娘が殺されるという事件が発生します。家は密室であり犯人の逃走経路は無く警察も弁護士も困っていました。そこで、長野県で休暇中だった青砥純子弁護士の元に事件解決の為に手助けして欲しいとの依頼が来ます。しぶしぶ荒神村へ向かう純子でしたが、思ったよりも難問であり純子は密室に詳しい防犯専門家の榎本を呼び事件に挑みます(狐火の家)。他3話の全4話構成の短編集です。
狐火の家 の起承転結
【起】狐火の家 のあらすじ①
長野の山奥にある荒神村、西野真之は最愛の娘愛実の遺体の前で呆然としていました。
幼なじみの遠藤晴彦が家にやってきて慌てて人に知らせに行くまで、意識が麻痺し何も考えられなくなっていました。
警察が来て実況見分を行い、犯行は物盗りか縁故者かと疑いますが、当日は近くで辻という農婦が作業をしており西野の帰宅までの間に家に近づいた者はいなかったと証言があります。
優秀な警察犬でも途中までしか臭いを追えず、家の周囲を探っても犯人の逃走経路は見当たりませんでした。
西野の弁護士が困り果て、過去にも密室事件を解決したことのある長野で休暇中の青砥純子に白羽の矢が立ちます。
西野の家族構成は、妻の麻美、息子の猛、娘の愛実と明日香ですが、猛は高校卒業後に家出をして行方不明だと言います。
その後の調査でも猛の名前が頻繁に出ますが、姿を見た者はおらず、まるで狐火のようでした。
猛が怪しいと思い調査を続けていた矢先、東京で猛の彼女里香が猛の部屋で殺されます。
これらの事件は繋がっており、長野の事件を解決出来ていないが為に起きてしまったと榎本は言います。
里香殺しの犯人は西野真之であり、愛実を殺したのは猛でした。
猛は西野の家に忍び込んだ際、愛実に見つかり泥棒を止めろと言われたことに腹を立て殴殺したのでした。
それを発見した西野は財産の金塊を渡すと言い油断させた所で猛を絞殺し、汲み取り式の厠に金塊と共に沈めたのでした。
警察の目が猛に向かうようにと金塊を猛の部屋に隠しに行った際に里香と鉢合わせし思わず殺してしまったのでした。
【承】狐火の家 のあらすじ②
古溝俊樹と名乗る男は、友人の桑島が亡くなった後にペットを譲り受ける約束をしていたが桑島の妻美香が応じないため青砥純子弁護士に相談に来ました。
古溝は興奮して説明が要領を得ない為、ペットの種類すら分かりませんが、とりあえず猫を想定し美香に会いに行きます。
美香は泣き腫らしたのか目が腫れていました。
美香は古溝を毛嫌いしており当初は全ての要求を突っぱねますが、純子が何も世話をしないのは動物愛護法に触れる可能性があると説明すると渋々ペットを飼っているアパートへ案内することを承諾します。
わざわざ猫を飼うのにアパートを借りるのかなど疑問に思う純子ですが、そもそも古溝も美香も一度も猫とは言っていませんでした。
アパートに着き中を見ると大量の水槽があり、古溝が手に取って見せてきたのは、純子がこの世で最も嫌いな蜘蛛でした。
桑島の死因は飼っていた毒蜘蛛に咬まれたことだそうです。
純子は蜘蛛の話を聞いていて、桑島の死は計画犯罪ではないかと考え、榎本に電話して助けを求めますが榎本は留守宅に忍び込んでいるのですぐには行けないと言います。
榎本から電話で助言を受けつつ推理し、容疑者を美香と古溝に絞ります。
二人とも動機も怪しい点もありますが、今回のトリックを推理していくと犯行が可能だったのは美香のみとなります。
美香はタランチュラを殺して着ぐるみにし、毒蜘蛛に被せることでタランチュラに見せかけました。
その際、毒蜘蛛の毛を受け目が腫れていたのでした。
桑島氏はタランチュラだと思い手に乗せて可愛がっていた所で咬まれてしまい、アナフィラキシーショックで死亡したのでした。
【転】狐火の家 のあらすじ③
榎本は警視庁捜査一課のハゲコウこと鴻野光男警部補に呼び出されてニューばんたんホテル新宿にやってきます。
ハゲコウからは泥棒としてホテルの印象を聞かれたり、扉のチェーンを外からかけるのが可能か確認されます。
今回の事件の被害者は竹脇伸平という棋士で、面通しは将棋界のアイドル来栖菜穂子が行っていました。
来栖は竹脇と付き合っていたと言い、竹脇を恨んでいる可能性のある3人の名前を挙げます。
榎本は実は将棋ファンであり、竹脇や来栖のこともよく知っていました。
来栖から竹脇の交友関係などを聞きながら共に状況整理をし、問題は犯人の動機と誰が何故チェーンをかけたのかとなります。
また、竹脇は死亡する前に青砥弁護士に相談をしていたということで、榎本は青砥に電話をしその内容を確認します。
竹脇は勝負における不正行為について告発しようとしていたようですが、将棋などの競技で不正があったとしても刑法で裁くのは難しいということでした。
これで榎本には真相が分かり、青砥と来栖を呼び出します。
来栖と稲垣真理という二人の女流棋士はコンピュータソフト「電脳将棋・ゼロ」を使った不正をしており、それを竹脇に知られてしまい来栖は脅されていたということでした。
嫌気がさした来栖は竹脇を殺すことにしますが、殺害した日には竜王戦が行われておりその実況中継を竹脇はホテルの部屋で携帯電話を使い確認していました。
竹脇は死の直前に部屋のチェーンをかけて竜王戦の棋譜を並べます。
テレビ中継は時間が限られているため、殺された竹脇が竜王戦の状況を知るためには携帯電話が部屋にある必要があったのです。
来栖はそのことに気づいて慌てて部屋に戻りますが、チェーンが邪魔で入れずに諦めたということでした。
【結】狐火の家 のあらすじ④
劇団土性骨の女優松本さやかから青砥弁護士に電話相談があり、自身が殺人事件の容疑者になるかもしれないと言われます。
劇団の座長であるヘクター釜千代が殺されたそうで、さやかは看板俳優の飛鳥寺が犯人ではないかと言います。
ヘクター釜千代は殺される直前、劇団のメンバーと飲んでいたそうで、アリバイが無いのが飛鳥寺、さやか、力八噸の3名だけだそうです。
さやかは何となく良い人である力は犯人ではないと思っており、飛鳥寺しか残らないので犯人だと思っているということです。
警察も消去法でさやかを犯人にしそうだそうで、ヘクター釜千代が飼っていた番犬呑龍号がキーになっているそうです。
呑龍号は飛鳥寺に全く懐いておらず、近づくと激しく吠えるが釜千代が殺された晩には吠えていませんでした。
力は呑龍号に対してアレルギーがあり、近づくだけでブツブツが出て数日消えないそうで、体調に何の変化も無いため力は除外され、さやかしか容疑者が残りません。
しかし、ヘクター釜千代は一升瓶で撲殺されており、さすがにさやかのような美女に犯行が行えるとは思えません。
飛鳥寺には動機もあり、過去に酔っぱらってちんぴらを一升瓶で殴り殺しておりそのことでヘクター釜千代から脅されていたということです。
青砥には犬の謎が解けず、榎本に助けを求めますが榎本は何が問題なのかが逆に分かりません。
犯人は飛鳥寺であり、犬は餌付けで簡単に手なづけることができました。
飛鳥寺が第一発見者となった際に呑龍号に噛まれたのはK9キャンセラーという超音波を浴びせたためでした。
狐火の家 を読んだ読書感想
防犯探偵榎本シリーズの第2作目であり、美人弁護士青砥純子と泥棒榎本が協力して密室事件に挑む短編集です。
榎本は本職が泥棒ですが、青砥も薄々どころかほぼ気づいており、榎本に電話すると他人の家に侵入中だったりします。
刑事からも泥棒としてどう思うかなどと意見を求められており、公然の秘密のような状態です。
榎本は現行犯で逮捕されたことは無いようでそれだけ凄腕の泥棒だということなのか、警察に知り合いは多いものの互いに情報交換したり助け合う関係のようです。
また、本作は4話目が完全なネタ作品となっており、特に難しいトリックもなく犯人も最初から分かっています。
榎本も何故こんな事件で悩むのかと逆に困ってしまうほど簡単な事件ですが、変人だらけの土性骨劇団の人達とド天然の青砥純子では解決が難しかったようです。
このようなちょっとふざけた話があるのも本作の特徴です。
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