【ネタバレ有り】カウントダウン のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:山本文緒 2010年10月に光文社から出版
カウントダウンの主要登場人物
岡花小春(おかばなこはる)
主人公。公務員の父と専業主婦の母と暮らす男子高校生。
大矢梅太郎(おおやうめたろう)
小春の相方。地主のひとり息子。
恩得鶴子(おんとくつるこ)
芸能プロダクション社長の娘。新人スカウト担当。
斉藤紅実(さいとうくみ)
小春のクラスメート。
斉藤吾郎(さいとうごろう)
紅実の父。詐欺事件担当の警部。
カウントダウン の簡単なあらすじ
千葉県内の高校に通っている16歳の岡花小春の夢は、お笑いタレントになって芸能界デビューをすることです。クラスメートの大矢梅太郎と「大春小春」を結成して新人コンテストに出場しましたが、そう簡単にはいきません。怪しげな芸能プロダクションにスカウトされたふたりは、予想外のトラブルへと巻き込まれていくのでした。
カウントダウン の起承転結
【起】カウントダウン のあらすじ①
千葉県野川町の高校に通う岡花小春は同級生の大矢梅太郎をコンビを組んで、芸人を目指していました。
お笑いコンテストの予選を通過して、都内で開催される本選に参加するために地元の田舎町から渋谷へやってきます。
小春と梅太郎の「大春小春」は参加コンビの中で最下位、過去最低点を記録するなど燦燦たる結果です。
中でも1番の辛口評価を付けたのは父が大手芸能プロ「オントクプロダクション」を経営し、自身も新人タレントの発掘を手掛ける恩得鶴子でした。
高飛車な鶴子に対して反感を抱いた小春でしたが、世渡り上手な梅太郎は彼女の名刺を受け取って食事に行きそのまま一夜を共にします。
失意のまま自宅に帰った小春に、次の日の朝電話をかけてきたのが「ホットメイト」という聞いたこともない事務所の吉岡です。
大手プロダクションでコツコツと下積みをするか、弱小芸能事務所でブレイクを狙うのか。
小春と梅太郎はホットメイトに登録して、吉岡からの出演依頼を待ちます。
【承】カウントダウン のあらすじ②
吉岡から最初に紹介された仕事は小さな引っ越し会社のコマーシャルで、待ち合わせ場所は都心から少し離れた駅前ロータリーでした。
トラックで迎えに来た吉岡と合流した小春と梅太郎は、白いつなぎに着替えた後に商店街にある骨董品店で降ろされます。
言われるままにカメラの前で荷物を荷台に運び込んでいたふたりがけたたましい警報音を聞いたのは、店に置いてある黒い金庫に触れた瞬間です。
駆け付けた警備会社の社員に取り押さえられた時には、吉岡とカメラマンらしき男の姿はもうありません。
警察署の取り調べ室で告げられたのは、芸能関係者を名乗る吉岡の正体が詐欺の常習犯であるという事実です。
事件を担当する刑事から絞られた挙句に解放された修一たちは、それぞれの両親に出迎えられて帰宅します。
高校にも連絡が入り1週間の謹慎処分が下されますが、懲りない小春は偽プロダクションに騙された顛末をコント仕立てにして次のお笑い新人コンテストに応募しようと目論んでいます。
【転】カウントダウン のあらすじ③
謹慎期間が明けて学校へ戻った小春は、以前にコンテストを見に来ていたクラスメートと急接近していました。
静まり返った客席の中でただひとり笑い声をあげて、楽屋まで花束を持って励ましの言葉をかけてくれたのが斉藤紅実です。
彼女の父親は高校生になった娘にも門限午後5時を言い渡しているため、小春と紅実は碌にデートもできません。
放課後に紅実と一緒に下校した小春は、彼女の家を訪ねて父親を説得してみます。
着物姿で小春を出迎えた強面な初老の男は、先日の作業事件の時に取り調べ室で対面した刑事の吾郎でした。
紅実とのお付き合いを認めて欲しいという小春に対して、吾郎はひとつの勝負を持ち掛けます。
今度の土曜日に近所の公会堂で漫才を披露する、吾郎と他の署員たち全員を笑わせたら娘との交際を認める、面白くなかったら生まれてこなければ良かったと思うほど痛い目にあわせる。
条件を飲んだ小春は梅太郎と共にネタ合わせに励み、当日に備えます。
【結】カウントダウン のあらすじ④
区役所の隣にある野川小公会堂はつい最近になって出来たばかりで、300近くある客席は吾郎の同僚ばかりではなく近隣住民や商店街の組合員で一杯でした。
大勢の観客を前にして生まれて初めて緊張するという梅太郎に、小春はアドバイスを送ります。
「今まで1度も緊張しなかったのは、1度も一生懸命になったことがなかったから」という小春の言葉で開き直った梅太郎は、舞台の上に出た途端にすっかりリラックスした様子です。
お笑いコンテストで過去最低点を取ったこと、怪しげな事務所にスカウトされて詐欺の片棒を担がされたこと、大好きな女の子の父親に厳しい取り調べを受けたこと。
過去の失敗をネタにしたふたりの漫才は、会場を笑いの渦に巻き込みました。
幕が降りた後に舞台袖に声をかけにきた吾郎は厳しい表情でしたが、紅実の門限を午後7時にすることを約束します。
このステージのことを鶴子から聞いて観に見ていた落語家によって、大春小春は今度の日曜日に上野の寄席への出演が決まるのでした。
カウントダウン を読んだ読書感想
学校のお昼休みや自習時間にクラスメートを集めて、オリジナルの漫才やコントを披露する主人公・岡花小春が微笑ましかったです。
裕福な家庭に生まれ育って成績優秀・容姿端麗とパーフェクトな男子高校生ながらも、何故かお笑いタレントへの道を目指す大矢梅太郎もユーモラスなキャラクターでした。
怪しげな芸能事務所にスカウトされて空き巣の片棒まで担がされてしまう、思わぬ落とし穴もあって考えさせられます。
小春と梅太郎の息の合った掛け合いと共に、何者でもなかったふたりの高校生が小さな一歩を踏み出していくラストが心地良いです。
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