「七月に流れる花」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|恩田陸

「七月に流れる花」

【ネタバレ有り】七月に流れる花 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:恩田陸 2016年12月に講談社から出版

七月に流れる花の主要登場人物

大木ミチル(おおきみちる)
ヒロイン。 中学1年生。シングルマザーの母親に育てられる。

佐藤蘇芳(さとうすおう)
ミチルのクラスメートで学級委員。

斉木加奈(さいきかな)
五中の2年生。スポーツ万能。

稲垣孝子(いながきたかこ)
五中の2年生。 将棋が好きで理詰めで物事を考える。

辰巳亜季代(たつみあきよ)
中高一貫のミッションスクールの3年生。

七月に流れる花 の簡単なあらすじ

お茶の先生をしている母親に連れられて、大木ミチルは坂道と石垣の多い静かな町「夏流」へと移り住みます。一学期の終わりに緑色の髪の毛と肌を持った「夏の人」から受け取ったのは、町の外れの古城で開催される林間学校への案内状です。5人の少女たちと一緒に城の中で共同生活を送ることになったミチルは、ひと夏の不思議な体験をするのでした。

七月に流れる花 の起承転結

【起】七月に流れる花 のあらすじ①

夏のお城で秘密の林間学校

大木ミチルは6月の初めに、 夏流(かなし)という見知らぬ土地へ引っ越して来ました。

ミチルは幼い頃から母とふたり暮らしで、転校先の三中にも知り合いは居ません。

一学期の終業式が終わって帰宅途中に、 全身が緑色の「夏の人」から林間学校への招待状を受け取ります。

地図を片手にローカル線を乗り継いでいくミチルが道連れになったのは、同じ中学校に通う佐藤蘇芳です。

合わせて6人になった一向は船着き場で、 夏の人に出迎えられてボートで石造りのお城へと渡りました。

以前にもこの林間学校に参加したことのある蘇芳は、自然とリーダー役になって他の5人にここのルールを説明します。

食事当番はふたりひと組、鐘が1回鳴ったら食堂に集合、3回鳴ったら城内の隅っこにあるお地蔵様にお参り。

更にはお城の外へと繋がった水路からは花が流れてきて、その色と数を逐一報告しなければなりません。

理解に苦しむルールばかりでしたが、ミチルは一体自分の部屋に引き上げます。

【承】七月に流れる花 のあらすじ②

色とりどりの6人の女子中学生

斉木加奈はミチルよりも1歳年上でしたが、気さくに話しかけて自室に招き入れてくれました。

加奈はバレーボールの選手をしているようで、自由時間にはジョギングやストレッチを欠かしません。

加奈と同じく五中に通う稲垣孝子は将棋を趣味にしていて、ミチルも駒の動かし方を教えてもらったために詰め将棋くらいは指せるようになります。

メガネをかけたおかっぱ頭の女の子は塚田憲子で、ミチルの1学年上です。

読書家の憲子は海外作家の本を読んだり、ベンチで居眠りをしたりと自由気ままな性格でした。

他の5人は公立中学校の生徒でしたが、辰巳亜季代だけは私立でミッション系の学校から来ています。

最年長の中学3年生でしたが、エスカレーター式で高校まで上がることが出来るので受験勉強の心配はありません。

徐々に皆と打ち解けてきたミチルが見たのは、水路を流れる白い花です。

食堂の掲示板にあるノートに、「午前10時。

白。

大木」と蘇芳に言われた通りに書き込みました。

【転】七月に流れる花 のあらすじ③

鏡越しの親子の対面

鐘の音が1回だけ聞えたためにミチルは食堂に向かいましたが、亜季代の席だけは空っぽのままです。

亜季代の部屋はもちろんのこと、家具の中から物音にトイレや庭まで探し回りましたが何処にも見当たりません。

ミチルは蘇芳と孝子が結託して、亜季代を連れ去ってしまったことを疑い始めていました。

次は自分がふたりに消されること怯えていると、鐘の音が3回鳴り響きます。 パニックに陥ったミチルに蘇芳が告げたのは、お地蔵様の向こうにいる彼女の父親の存在です。

ミチルの父は海外生活をしているうちに、 緑色感冒という伝染病にかかっていました。

この城は末期患者用のシェルターで、患者の遺族はお地蔵様の後方に設置されたマジックミラー越しに最期の別れをする手筈になっています。

蘇芳が勝手知ったる様子だったのも、一昨年にこの場所で父親との死別を経験したからです。

蘇芳と孝子はミチルの母親から口止めされていましたが、隠し通せないと観念して全てを打ち明けました。

【結】七月に流れる花 のあらすじ④

花に込められた死者の思い

亜季代は母が緑色感冒の感染者でしたが、彼女自身も脳腫瘍を患っていました。

彼女がいなくなったのは集中治療室に運びこまれたためで、そのまま意識は戻ることなく亡くなります。

残された5人が約束したのは、それぞれの家族を見送ってこの城を出た後に亜季代のお墓参りに行くことです。

ミチルの父が亡くなってからは蘇芳の母、2日後に加奈の父、その翌日に憲子の母、最後に孝子の父。

皆で抱き合って泣いていると、夏の人が迎えに来ました。

夏の人は緑色感冒の免疫を持った唯一無二の存在であり、未知の病と闘う人類にとっては残された希望でもあります。

荷物を纏めて城を去る時にミチルが見たのは、水路を流れていく花です。

花を流していたのはシェルターの職員で白い花は男性、 赤い花は女性の死亡患者を意味しています。

ミチルはノートに書き込んでいたのが死んだ人の数だと知ってショックを受けつつも、一生懸命生きて死んでいった人たちの思いを花の中に感じ取るのでした。

続編はこちら↓
「八月は冷たい城」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|恩田陸

七月に流れる花 を読んだ読書感想

夏休みを迎えながらも、転校したばかりで居場所の無さを抱えているヒロイン・大木ミチルの憂鬱が伝わってきました。

1通の招待状によって、不思議な林間学校へと導かれていくシーンが美しさ溢れています。

体育会系女子からお嬢様まで、滞在先のお城で出会う同世代の女の子たちもバラエティー豊かです。

肉親との痛切な別れを乗り越えて、 少女から大人の女性へと成長を遂げていくミチルたちの姿が魅力的でした。

恩田陸が同じく講談社のミステリーランドから刊行している「八月は冷たい城」を読むと、 合せ鏡のような構成になっていて楽しめるでしょう。

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