【ネタバレ有り】私をくいとめて のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:綿矢りさ 2017年1月に朝日新聞出版から出版
私をくいとめての主要登場人物
黒田みつ子(くろだみつこ)
ヒロイン。 32歳の会社員で独身。
多田(ただ)
営業マン。 みつ子と同い年。
皐月(さつき)
みつ子の大学時代の親友。夫のマルコと共にイタリア在住。
ノゾミ(のぞみ)
みつ子の先輩社員。
片桐直貴(かたぎりなおき)
みつ子の同僚。「カーター」の愛称で女性社員から親しまれる。
私をくいとめて の簡単なあらすじ
間もなく33歳を迎えようしている黒田みつ子は、仕事でもプライベートでもそれなりに充実していて独りでいることに不安はありません。彼女が1番信頼する相談相手は、友達でも恋人でもなく頭の中に住んでいる「A」です。そんなマイペースなみつ子でしたが、気になる異性との出会いと異国の地から舞い込んだ1通の手紙によって微妙な心変わりをしていくのでした。
私をくいとめて の起承転結
【起】私をくいとめて のあらすじ①
黒田みつ子が初めてその声を聞いたのは仕事が休みの日で、場所は2DKタイプの自宅マンションのソファーの上でした。
時刻は午前2時を過ぎていて、付けっぱなしのテレビからは放送終了を告げる8色のカラーバーが映し出されてます。
突如として頭の中から聞こえてきたのは、穏やかで思いやりのある男性でも女性でもない不思議な声色です。
得体の知れない誰かに従って、取り敢えずその日は歯を磨いてベッドに移動してから眠ることにしました。
それからというものみつ子は、日常生活でストレスを抱えたり職場でトラブルに見舞われると頭の中の住人に相談するようになります。
みつ子が付けたニックネームは、「answer」の頭文字から取った「A」です。
家具や雑貨のコーディネートから私服のイメチェンに、友人や仕事関係のコミュニケーションまで。
Aからのアドバイスをひとつひとつ実行していくうちに、代わり映えのしなかったみつ子の毎日も少しずつですが動き始めていきました。
【承】私をくいとめて のあらすじ②
多田はみつ子が働いている会社の取引先の営業マンで、オフィス内や待ち合い室では何回も顔を合わせていました。
ある時にスーパーで買い物をした後に近所の商店街を歩いていると、 私服姿の多田を見かけます。
独り暮らしで自炊をしないという多田を、 自宅に招いて手料理をご馳走するアイデアにはAも賛成のようです。
それ以来多田とは仕事上の付き合いだけではなく、プライベートでもちょくちょく会うようになっていました。 Aは場所も時間も問わずに話かければすぐに出てきてくれるために、「おひとりさま」にとっては便利な存在になります。
ひとりカフェにひとりファミリーレストランは勿論のこと、以前は気負いがあった焼き肉屋も今ではすっかり抵抗がありません。
最難関のひとりディズニーランドかひとり海外旅行にもチャレンジしようと思い始めていたみつ子が受け取ったのは、大学生の頃の友人で現在はローマで結婚生活を送っている皐月からのエアメールです。
【転】私をくいとめて のあらすじ③
年末年始を皐月のもとで過ごすことにしたみつ子は、旅行までに仕事や雑用に忙しい日々が続いてAと話す時間は自然と減っていきます。
12時間のフライトの末にたどり着いた空港で、 みつ子を出迎えてくれたのは学生時代と変わらない皐月と彼女の夫・マルコです。
ローマの郊外にあるふたりのアパートには、クリスマスを祝うためにマルコの親族が大勢詰め掛けていました。
焼きたてのフォカッチャに自家製のテリーヌ、 メインディッシュからデザートのトリュフチョコまで。
アットホームなおもてなしと手作りのメニューの数々に、みつ子は大満足です。
トレビの泉やサン・ピエトロ大聖堂に代表されるような、地元の観光スポットを巡ることも忘れません。
多田とは海外ローミング経由の携帯メールサービスで連絡を取り合っていて、日本にいる時よりもお互いを恋しく思う気持ちが強くなっていきます。
イタリアでは新鮮な出来事が多すぎて、Aと話すことはほとんどありませんでした。
【結】私をくいとめて のあらすじ④
ディズニーランドにはひとりではなく、職場の先輩・ノゾミと片桐直貴に多田を加えた4人で行くことになりました。
アトラクションを満喫した後にみつ子と多田はトゥーンタウンのエリアへ、ノゾミと片桐はファンタジーランドのエリアへ。
打ち合わせしていた通りに二手に分かれて、二組のカップルが誕生します。
次の日の朝起きた時にはみつ子の脚は筋肉痛がひどくて風邪もひいていましたが、会社を休む訳にはいきません。
同じく昨日1日はしゃいだ疲れが消えていないノゾミに、みつ子は初めてAについて打ち明けてみました。
想像で作り上げた相談役のような人物とお喋りするのが日課になっていたこと、ここ最近のイタリア旅行からディズニーランド行きを経てAからの返事が返ってこなくなったこと。
Aがいなくなっても困らないと断言するノゾミでしたが、Aがいたお陰で困難を乗り越えられたのも事実です。
声は聞こえませんが、 みつ子は頭の中で一瞬だけAが微笑んだような感覚を抱くのでした。
私をくいとめて を読んだ読書感想
ひとり焼肉からひとり旅行まで、自由気ままなお一人様ライフを楽しんでいるヒロインの黒田みつ子が微笑ましかったです。
同世代の女性たちが恋愛や婚活に夢中になっている中でも、自分らしいライフスタイルや幸せを追い求めていく姿には感情移入出来ました。
ある日突然に頭の中に他人の声が聞こえてくる、一歩間違えるとサイコサスペンスになってしまうようなテーマもユーモアたっぷりに描かれているのが良かったです。
見えない存在を「A」と名付けて依存していたみつ子が、迷いながらも自立していくクライマックスには心温まるものがありました。
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