【ネタバレ有り】食堂かたつむり のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:小川糸 2010年1月に株式会社ポプラ社から出版
食堂かたつむりの主要登場人物
倫子(りんこ)
物語の主人公で、祖母の影響から料理が得意。実家周辺では訛の影響で「りんご」と聞こえる。インド人の恋人に家財も貯金も全て盗まれ声が出せなくなる。
瑠璃子(るりこ)
倫子の母親で、自宅の敷地内にある「スナック・アムール」のママ。ペットである豚の「エルメス」を溺愛している。
エルメス(エルメス)
瑠璃子が溺愛する豚。殺処分されそうな所を瑠璃子に引き取られる。とてもグルメで、お世話をする内に倫子は自分の妹のように感じる。
熊さん(くまさん) ※本名は「熊吉(くまきち)」
倫子の小学生時代の臨時職員。瑠璃子ママに恩返しの気持ちから、声が出ない倫子をあらゆる場面で手助けする。
ネオコン(ねおこん) ※本名は「根岸恒夫(ねぎしつねお)」
瑠璃子の愛人で「根岸恒夫コンクリート建設」の社長。倫子が苦手とする人物。
食堂かたつむり の簡単なあらすじ
インド人の恋人に家財もコツコツ貯めていた貯金も全て盗まれてしまった倫子は、生家のある田舎に帰郷します。倫子は苦手な母瑠璃子に頭を下げて食堂を開くことを決意。それは1日に1組だけのお客様をもてなす「食堂かたつむり」です。決まったメニューがなく当日何を出すかお客と相談して決めるという変わった食堂かたつむりには、同様に一風変わったお客がそれぞれの事情を抱えてやってきます。
食堂かたつむり の起承転結
【起】食堂かたつむり のあらすじ①
いつものようにアルバイトから帰宅した倫子は、家の中が空っぽであることに唖然とします。
インド人の恋人と暮らしていたはずのそのアパートの部屋からは、一切の家財もいつか恋人と飲食店を開くためにコツコツ貯めていたお金も、何もかもが無くなっていました。
たった一つ残っていたのが、倫子の祖母が遺してくれたぬか床です。
ショックの影響で倫子は声も失ってしまいますが、唯一残った大切なぬか床を抱えて15歳で家を出て以来1度も帰ることのなかった田舎の実家に帰郷します。
その実家にはいつからか敵意を抱くようになった母瑠璃子と瑠璃子がペットとして可愛がっている豚のエルメスがいました。
倫子は瑠璃子に頭を下げて、エルメスのお世話を条件に物置小屋を貸してもらいます。
倫子その物置小屋を借りて「食堂かたつむり」をオープンさせます。
それは1日に1組だけのお客様をおもてなしする、予め決められたメニューのない不思議な食堂です。
小学生時代の臨時職員、熊さんに助けてもらいながら何とか食堂かたつむりオープンへとこぎつけた倫子の元に、それぞれ複雑な事情を抱えたお客様が次々と訪れることになります。
【承】食堂かたつむり のあらすじ②
1日1組の決まったメニューのない不思議な食堂かたつむりには、同じように様々な事情を抱えたお客様がやってきます。
倫子は自分の元に訪れる様々なお客の悩みや事情を少しでも料理で晴れやかにしたいと工夫を凝らした料理を振る舞います。
愛するセニョールと子どもに会いたい熊さんには「ザクロカレー。」
最愛の人を亡くし、もう何十年と喪に服したままのお妾さんには「喜怒哀楽を表現したフルコース。」
サトル君と両想いになりたい桃ちゃんには、インスピレーションを活かした「ジュテームスープ」と、それぞれの願いや事情に合わせて試行錯誤の料理を振る舞っているうちに「食堂かたつむりの料理を食べると願い事が叶う」というまことしやかな噂が少しずつ倫子の村や周りの町に広まっていきます。
そんな噂が広がるにつれてさらに様々な事情を抱えたお客様がやってきます。
お互いなかなか一歩を踏み出せないお見合いカップルにはその魅力を最大限引き出した「野菜のフルコース」や施設に入ることになったおじいさんのための「お子様ランチ。」
さらには拒食症のウサギにはラベンダーが香る「ビスケット」をと、倫子は大好きな料理で様々な問題を解決していきます。
【転】食堂かたつむり のあらすじ③
雪が降ると、交通手段が限られてしまうため食堂かたつむりは冬籠りの季節になります。
倫子は未だ声を失ったままですがあまり気にすることはありません。
ただ気になるのは母瑠璃子との確執です。
どうしても母瑠璃子のことが心から好きになれないと感じており、帰省して食堂かたつむりをオープンさせてからもできるだけ瑠璃子との接触を避けていました。
そんな倫子は折熊さんから、瑠璃子に対する感謝の気持ちや倫子と熊さんが再会できたきっかけが瑠璃子だったことを知ります。
自分の知らない瑠璃子の一面を垣間見た倫子は戸惑いますが、そんな時瑠璃子から毎年行われるネオコン主催のフグパーティに招待されます。
フグパーティの招待客は各々好きなお酒を飲んで食べて騒いでいる中で、ここでも倫子は瑠璃子が処女であるという思いもよらない事実を知ることになります。
そしてみんなが寝静まった後、母と同様に子どもの頃から苦手意識のあるネオコンに料理を作れと迫られます。
倫子は嫌々ながらも、精一杯無心を心がけながら大嫌いなネオコンのためにお茶漬けを振る舞います。
するとなんと予想もしていなかったネオコンの涙と共に「ありがとう」という言葉が返ってきます。
さらには寝たふりをしていたのか、寝ぼけていたのか母瑠璃子の口からも「ありがとう」の言葉が。
倫子は春が来て花が咲くのと同様に、瑠璃子とネオコンとの関係にも少しずつ氷が溶けていくような兆しを感じ始めます。
【結】食堂かたつむり のあらすじ④
母瑠璃子との関係が変わる兆しが感じられた矢先、倫子は瑠璃子からガンで余命数ヶ月であることを告げられます。
さらには、病気を通して瑠璃子が処女を貫いた想人の修一と再会したことも知らされます。
修一もまた瑠璃子が忘れられずに独身であり、晴れて2人は結婚することを決めます。
倫子は結婚を機に瑠璃子から2つのお願いごとをされます。
1つは結婚式の披露宴で振る舞う料理のプロデュースすること。
そしてもう1つはエルメスを食べるために調理することでした。
倫子は最大限の愛情を持ってエルメスを披露宴の料理へと変貌させて行きます。
そしてガンが進行してもう余命いくばくもない瑠璃子のために披露宴の料理で世界一周旅行をプレゼントします。
そうして、母瑠璃子は結婚生活を数週間過ごして天国へと旅立ちます。
倫子は、エルメスを屠ったショックと母瑠璃子の「もう一度声を聞かせて」とうい願いを叶えてあげられなかった自責の念から、とうとう大好きだった料理からも遠ざかってしまいます。
心がぼんやりしたままもうすぐ初夏という頃。
食堂かたつむりも休業したままのある日、倫子の元に野生の鳩が落ちてきます。
鳩の亡骸を無花果の木の下に埋めようとすると「死を無駄にするな」という瑠璃子の声が聞こえてきます。
この声をきっかけに、瑠璃子は母がこの鳩を自分に贈ってくれたのだと確信し、また食堂かたつむりの厨房に立つことができるようになります。
大事に大事に料理した野鳩のローストを口にすると、なんと倫子の声も戻ってきたのです。
倫子は瑠璃子のおかげでまた自分の料理の楽しさを取り戻し「ちっぽけな幸福でも身近な人に喜んでもらえる料理を作り続けよう。」
と新たに決意します。
食堂かたつむり を読んだ読書感想
今まで大切に大切にしてきたモノ全てを失い、自分の声まで失ってしまうところから始まるのでこの後にはどんな展開が待っているのか気になります。
また物語を通して様々な食材や料理が出てくるので、料理好きの方は楽しめる作品だと感じます。
文章の表現も堅苦しくないので普段あまり本を読まない方でもとっつきやすい作品なのではないかと感じます。
何よりも倫子が一生懸命考えて、悩みを抱えたお客さんたちに料理を振る舞う姿とその振る舞われる料理が印象的です。
もしできることなら、倫子が振る舞った料理を自分も食べてみたいなと感じることができる料理であることがとても魅力的な作品です。
コメント