【ネタバレ有り】三毛猫ホームズの用心棒 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:赤川次郎 2009年12月に光文社から出版
三毛猫ホームズの用心棒の主要登場人物
片山義太郎(かたやまよしたろう)
刑事。妹・晴美と三毛猫のホームズと暮らす。
三枝英子(さえぐさえいこ)
片山の大学時代の先輩。
松山圭三(まつやまけいぞう)
画家。
谷田幹治(たにだかんじ)
英子の同僚。
武井隆(たけいたかし)
英子の上司。
三毛猫ホームズの用心棒 の簡単なあらすじ
三枝英子は勤め先から自宅までの道を歩いているうちにナイフを持った通り魔に襲われますが、「用心棒」と名乗る見ず知らずの人物から助けられます。英子の大学時代の後輩・片山義太郎が捜査を開始すると、次々と不可解な事件が巻き起こっていくのでした。
三毛猫ホームズの用心棒 の起承転結
【起】三毛猫ホームズの用心棒 のあらすじ①
編集プロダクションに勤務している三枝英子は、仕事の多忙さから真夜中過ぎに帰宅することも珍しくありません。
いつものようにバス停から自宅マンションまでの人通りの少ない坂道を歩いていると、変質者にナイフを突き付けられて暗がりに連れ込まれてしまいました。
ナイフ男の襲撃から英子を救ったのは、突如として現れた黒い人影です。
「私はあなたの用心棒です」という意味深なセリフを残して、足早にその場を立ち去っていきます。
英子が執筆したインタビュー記事に理不尽な言い掛かりをつけてきた売れっ子タレント、自分でオーダーを間違えながら食事代だけは要求するレストランのシェフ。
それ以来彼女に悪意を持って近づいてくる相手には、ことごとく災難が降りかかってきます。
僅か1週間のうちに数々の不思議な体験をした英子が思い余って相談したのは、かつては大学のサークルで一緒に活動したこともあり今では嫌々ながらも刑事を続けているという片山義太郎です。
【承】三毛猫ホームズの用心棒 のあらすじ②
片山に悩み事を打ち明けていくらか気分が楽になった英子は、その足で画家の松山圭三の取材に向かいました。
新進気鋭のアーティストとして有名な松山でしたが、業界内でもプライベートでも何かとトラブルが絶えません。
実際に対面してみると繊細で穏やかな人柄で、たちまちふたりは意気投合して婚約へと至ります。
会社でも英子と松山の結婚は話題になり同僚たちからも祝福されましたが、ただひとり良からぬことを企んでいるのが、副社長の武井隆です。
前々から英子に一方的な想いを抱いていたようで、逆恨みした武井は英子をプロダクションから追い出すことを目論んでいます。
そんな社内での不穏なムードをいち早く察知して何かと英子を心配しているのが、常日頃から彼女にお世話になっている谷田幹治です。
谷田からの真摯な説得を受けて、英子は何とか衝動的に辞表を出すことを思い留まります。
そんな中で、深夜に帰宅した武井が自宅の玄関の前で撲殺される事件が発生しました。
【転】三毛猫ホームズの用心棒 のあらすじ③
片山は殺人事件の知らせを受けて、武井の家族の連絡先を聞きに妹の晴美と飼い猫のホームズを引き連れて英子を訪ねました。
現在では妻や子供たちと別居生活を送っているために、武井の自宅には誰もいません。
武井の妻の実家の電話番号が記されてたメモを受け取って退散する寸前に、片山は英子の夫・松山を見かけます。
新婚生活も上手くいっているようでひと安心でしたが、駐車場に向かう松山を何故か不審げに見つめているのはホームズです。
副社長が亡くなっても後任がなかなか決まらないために、相変わらず英子は連日連夜の激務に追われていました。
仕事の合間にファミレスでほっとひと息ついていた英子の携帯電話に、片山からの緊急連絡が舞い込みます。
松山が自動車事故に巻き込まれて重傷を負ったことを聞いて、英子がタクシーで駆け付けたのは搬送先の病院です。
病室の奥のベッドには、オフィスで仕事をしているはずの谷田が細い布状の紐を両手に巻き付けて待ち構えていました。
【結】三毛猫ホームズの用心棒 のあらすじ④
英子を陰ながら見守ってきた用心棒の正体は、彼女を愛しながらもその気持ちを告白することができなかった内気な谷田です。
元来は心優しく気弱な性格ながらも、自分自身を正義のヒーローと思い込んでいくうちに遂には一線を超えてしまいます。
松山の異性関係が派手なこと、認知している子供がふたりいること。
彼の秘密を突き止めた谷田は、英子のために車のブレーキに細工して事故に見せかけ殺害する計画でした。
一命を取り留めた憎き恋敵にトドメを刺すことによって、全てを終わらせるつもりです。
病室のロッカーの中で独白を聞いていた片山は谷田を逮捕して、死にかけているはずの松山も何事もなかったかのように起き上がります。
自動車の異変を見抜いたホームズの警告によって事故を逃れた松山は、犯人を誘い出すために一芝居打ったようです。
用心棒よりもヒーローよりも普通の人が好きだと呟く英子に対して、ホームズは同意するかのように「ニャー」と鳴くのでした。
三毛猫ホームズの用心棒 を読んだ読書感想
謎めいた言葉を残しつつなかなか姿を現さない、「用心棒」の意外な正体に引き込まれていきました。
編集プロダクションという聞きなれない業界の、舞台裏や人間模様もリアリティー溢れるタッチから描かれていて興味が湧いてきます。
愛する人への思いを抱きながら打ち明けることが出来ずに、遂には違法行為に手を染めていく犯人が何とも哀れです。
「正義」を振りかざしていくうちに他者の自由や尊厳を侵害してしまう、今の時代の無意識の暴力について考えさせられます。
人間たちの悪巧みと愚かさを全てお見通しな、ホームズの冴えわたる勘と活躍が痛快です。
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