「ぐるぐる七福神」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|中島たい子

ぐるぐる七福神 中島たい子

著者:中島たい子 2011年10月にマガジンハウスから出版

ぐるぐる七福神の主要登場人物

船山のぞみ(ふなやまのぞみ)
ヒロイン。企業に失敗して惰性で派遣社員を続けている。頭でっかちで理想を追い求める。

黒田大地(くろだだいち)
のぞみの元カレ。問題意識が薄く影響されやすい。現在の消息は不明。

堀田(ほった)
のぞみの上司で典型的な窓際族。メタボ体形でよく居眠りをする。

鶴田浩一(つるたこういち)
90歳をこえているがアクティブ。旅行と食事で健康を保つ。

柏木文太(かしわぎぶんた)
のぞみの大学時代の友人。遊びながら人脈を作るのがうまい。

ぐるぐる七福神 の簡単なあらすじ

仕事にも恋愛にも行き詰まりを感じていた船山のぞみが、入院中の祖母の代わりに始めてみたのは七福神を巡ることです。

7つのうちの最後の御朱印を探して都内を散策しているうちに、同じような趣味の仲間たちが増えていきます。

正社員に昇格して祖母の具合も大分よくなった頃、のぞみは以前にお付き合いをしていた黒田大地の無事と帰還を祈るのでした。

ぐるぐる七福神 の起承転結

【起】ぐるぐる七福神 のあらすじ①

ラッキーセブンに見放された女

大学院まで進んだ船山のぞみはボランティア団体で働いたり、自分で非営利団体「ダイフード・バスターズ」を立ち上げたりしていました。

地球の食の安全性を守るというコンセプトの下で活動を続けていましたが、恋人の黒田大地を筆頭にメンバーは次々と離脱していきます。

残ったのは設備投資に注ぎ込んだ負債だけで、返済のためには中小企業の事務で黙々と働かなくてはなりません。

休みの日には腰を痛めて入院中の祖母のために、散らかり放題の実家を片付けたりと大忙しです。

押し入れの中を整理していたのぞみは、赤いハンコが押された白い色紙「御朱印」を発見しました。

大黒天、恵比寿、弁財天、毘沙門天、布袋尊、福禄寿… 七福神を奉ってあるお寺や神社を踏破するスタンプラリーのようなものですが、最後の寿老人だけが欠けているために6つしかありません。

7にひとつだけ足りない縁起が悪いような気がしたために、図書館で「谷中七福神 巡り」というガイドブックを借りて出掛けます。

【承】ぐるぐる七福神 のあらすじ②

オフィス街にも福の神が潜む

寺が密集した谷中の真ん中あたりに長安寺がありましたが、お正月でなければ寿老人は開帳しいません。

次の日に茅場にある派遣会社に出勤すると、いつも壁際の席でぼんやりしている堀田という中堅の男性社員が話しかけてきました。

この辺りにも七福神参拝で有名なコースがあるそうで、笠間稲荷神社には寿老人のお参りで有名だそうです。

午前中の事務作業を早めに済ませてオフィスを抜け出したのぞみですが、途中で鶴田浩一という老人が道に迷っています。

弁天の社でもある小網神社まで行きたいそうで、祖母よりもひと回り上の93歳を放っておく訳にはいきません。

毎朝野菜ジュースと青汁を飲むこと、ビタミンB12を取り入れること、死なないような無難な道を歩くこと。

道案内のお礼に長生きのコツを教えてもらったのぞみは、さっそくお見舞いに行って祖母に教えてあげるつもりです。

お昼休みの時間はとっくに終わっていましたが、堀田へのお土産に甘酒横丁のタイヤキを買ってから社に戻ります。

【転】ぐるぐる七福神 のあらすじ③

下町のカレーにインドの涙が

大学生の頃から気が合った柏木文太から、大地のスーツケースがインド北部の空港・バラナシで発見されたことを知らされました。

文太が麻布に構えているネット関連の会社を訪ねたのぞみは、スーツケースに入っていた大地の日記用ノートを読ませてもらいます。

成田から香港経由でニューデリー、カルカッタの児童養護施設やホスピス、ヒンドゥー教徒にとって最大の聖地であるガンジス川… 大地がせっかく決まった就職先を蹴って放浪の旅に出たのは、のぞみから言われた「なんのために生きてんの」という言葉がきっかけだったそうです。

たったひと言でひとりの人間の人生を変えてしまった罪悪感から、しばらくのぞみは立ち直れません。

アパートに閉じ込もってばかりののぞみを、以前にベンチャービジネスのセミナーで知り合った真沙代が外に連れ出してくれました。

谷中霊園の裏通りにある人気店では薬膳カレーをごちそうしてくれましたが、スパイシーな味でインドのことを思ってしまいます。

上野の東京芸術大学の隣には護国院があり、本堂に鎮座するのはヒンドゥー教にルーツを持つ大黒天です。

丸くてかわいらしい顔とスッと切れた目尻は大地にそっくりで、のぞみの涙は止まりません。

【結】ぐるぐる七福神 のあらすじ④

7-6で希望が残る

勤め先で急に退職した人がいたために、のぞみに正社員登用の話が転がり込んできました。

相変わらず仕事をしている様子もない堀田と浅草にお礼参りをしてみることになり、文太と真沙代にも声をかけてみます。

退院した祖母も鶴田のおかげですっかり元気になったようで、ふたりで演芸場に落語を聞きに行くついでに顔を出すそうです。

のぞみ、堀田、文太、真沙代、祖母、鶴田、これで大地さえいれば7人がそろいますが以前として連絡は取れていません。

祖母の御朱印帳も寿老人のハンコだけが足りないままですが、あえて空白にして希望を残しているのでしょう。

矢先稲荷神社の静かな境内で福禄寿に手を合わせたのぞみは、どこかで大地が生きていて自分の気持ちが伝わっていることを確信します。

例のノートは文太が大地の両親に掛け合ってくれたために、今ではのぞみの大切な宝物です。

最後のページにカレーのような染みと「人間は、生きるために生きる」という書き込みを見つけて、恵比寿様のような笑みを浮かべるのでした。

ぐるぐる七福神 を読んだ読書感想

仕事運も恋愛運も下がりっぱなしなアラサー女子、船山のぞみが繰り広げていく不思議な冒険を楽しめます。

世界を変えるための情熱に突き動かされていた学生時代、現実と妥協し始めていく社会人。

20代から30代にかけての心境の変化もリアルに描かれているために、男女を問わず幅広い世代が共感できるでしょう。

オフィスビルが立ち上る都会の片隅に、意外なほど七福神の信仰が息づいていてそのギャップも面白いです。

異国の地に消えた愛する人とのドラマチックな再会… とまではいきませんが、愉快な仲間を得て新たな1歩を踏み出すのぞみを応援したくなりました。

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