「ぜんしゅの跫」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|澤村伊智

「ぜんしゅの跫」

著者:澤村伊智 令和3年1月25日にKADOKAWAから出版

ぜんしゅの跫の主要登場人物

<野崎崑>(のざきこん)
本作の語り手。オカルトライター。真琴と結婚して夫となった。<野崎真琴>(のざきまこと)
野崎と交際していたが本作で結婚して妻となった。姉の琴子よりは霊力が劣るものの霊能力者。普段はバーに務めておりが、霊にまつわる事件の相談など度々のっており巫女として祓うこともしている。<比嘉琴子>(ひがことこ)
真琴の姉。警察本部や政府に繋がりを持つ最強の霊能力者。<田誉>(でんほまれ)
真琴の友人。画家。真琴に頼まれウェルカムボードを作成する。<諸田徹>(もろたとおる)
製薬会社の社長。野崎が追う化け物が逃げ込んだ家の住人<諸田渉>(もろたわたる)
徹の兄。身体が悪く弟の家で暮らしている。

ぜんしゅの跫 の簡単なあらすじ

野崎と真琴の結婚式が開かれ、長年疎遠であった姉の琴子も祝福します。

しかし、琴子の不注意によって真琴が怪我をします。

責任を感じた琴子は、真琴の世話や真琴が依頼を受けていた姿はなく足音だけ残して消える通り魔の調査をも勝手でます。

琴子と野崎で調査すると、通り魔の犯人が「絵」の化け物であることがわかります。

「絵」の化け物がなぜ人を襲うのか、その謎を解いた真琴は化け物を封じ込めることに成功します。

ぜんしゅの跫 の起承転結

【起】ぜんしゅの跫 のあらすじ①

見えない通り魔

真琴と野崎の結婚式に長年疎遠だった姉の琴子が現れます。

2人を祝福する琴子に、再会を喜ぶ2人ですが、琴子の不注意から真琴に怪我をさせてしまいます。

責任を感じた琴子は、真琴の世話を勝手出て、代わりにバイトすると申し出ます。

そして、真琴が通行人を襲い建物を破壊する「通り魔」の調査の依頼を受けていたことを知ると、琴子は自分にその調査も任せるよう言います。

通り魔事件は真琴の通うバイト先の近くで頻繁に起こっていました。

報道では被害者に共通点もなく捜査は進展していません。

被害者の共通点もなく、被害者の誰一人加害者の姿を見ていなかったからです。

ただ、足音だけを残し消える加害者ですが、その足音はただの足音ではなく猫でも犬でもない大きな獣がアスファルトを掻くような奇妙な足音だったと被害者は口を揃えて言いました。

一向に進展のないこの奇妙な事件を、いつしかこれはまともの人間の犯行ではなく、霊なり化け物によって行われてるのではないか、と語られるようになりました。

そんなオカルト話として語られるようになった矢先、重症を負った被害者の友人に真琴が務めるバーの常連客がいたため、真琴が調査に乗り出したのです。

琴子は、真琴より通り魔に関しての情報や真琴がしてきたことを聞き、早速通り魔の正体を暴くため、野崎と共に夜廻をすると伝えます。

【承】ぜんしゅの跫 のあらすじ②

見えない通り魔の調査

真琴に調査のため夜廻をすると伝えた翌日、琴子は真琴の代わりにバーのバイトへ向かいました。

何日か過ごし、予定通り夜廻を決行すると約束した日、通り魔事件の現場周辺や近隣を野崎と共に回ります。

午後9時に出発し、午前零時を過ぎようとしていた時、駅の改札口を出てロータリーを見渡した野崎は周辺の異変に気づきます。

普段はいるような酎ハイ片手のスーツ姿の男性や駅前にたむろしている若者、ミュージシャンの姿がなく、閑散としています。

通り魔事件の影響だろうと琴子が指摘します。

二人がそのまま商店街に向かおうと高架下を通っていると間延びした声が呼び止めます。

彼らを呼び止めたのは、真琴と野崎の結婚式にウェルカムボードを作成した、真琴の友人田青年でした。

彼は得意の絵のポストカードを路上で販売していました。

田青年は真琴との出会いの話をし始め、真琴と出会う前は絵の才能の無さに悲嘆し通りに落書きして回った過去があったことを話します。

その最中に真琴に出会い、落書きの行為を諭された事で、真面目に働き絵も諦めず描いているということを話し、真琴に感謝している、と琴子に伝えます。

驚く琴子ですが、野崎は、無償で人助けし困ってる人をほっとけないのが真琴だと伝えます。

田青年と別れた後、真琴について話し合っていたその時、琴子はある悲鳴を耳にします。

野崎には聞こえませんでした。

悲鳴が上がった方向へ琴子たちが駆けつけると、高架下で倒れる若いカップルを目にします。

頭部が不自然な形に凹んだ男性と、首があらぬ方向に曲がっている女性。

息を飲む二人の耳に、今度は硬い物がアスファルトを引っ掻く奇妙な音を耳にしました。

【転】ぜんしゅの跫 のあらすじ③

見えない通り魔との格闘

奇妙な音が断片的に聞こえますが、通り魔の正体は見えません。

二人の様子を伺うように、爪が地面を掻く音だけが続きます。

足音が聞こえるだけだ、と答える野崎に、琴子はポケットから煙草を出し、口に咥えました。

霊能力のある琴子には化け物の姿が見えていました。

琴子が煙草に火をつけると、一際大きな足音が辺りに響きます。

すると、小刻みな足音が凄まじい速度で遠のいていくのが分かりました。

逃げる化け物を二人は追います。

普段は除霊に慣れきってる琴子のそばに居ると安心感のあった野崎ですが、今回は嫌な予感がしました。

化け物を追い、歩道橋に辿り着くと先頭にいた琴子の姿がありました。

足元が揺れます。

不自然な大きな振動に、歩道橋が大きく揺れました。

琴子が煙草の煙を勢いよく前方に吹きかけると、その煙の中に影が浮かび上がります。

熊のような大きな影に、湾曲した角が頭に生えているのが見えました。

影は勢いよく腕を振り上げ、野崎と琴子は見えない腕によって吹き飛ばされます。

野崎は一瞬意識を失います。

琴子の声によって目覚めた野崎は、化け物が逃げたことと琴子が化け物に発信機をつけたことを知ります。

発信機を追い、化け物のいる川沿いを下ると水の跳ねる音がしました。

野崎は化け物に襲われます。

川に引きずられ跳ね飛ばされ、見えない敵より繰り出される攻撃に野崎は死を覚悟します。

すると、攻撃は止み化け物がその場から消えたことを感じました。

化け物が消えた家の前を見ると、そこはコンクリート打ちっぱなしの邸宅でした。

家の表札には「諸田」と書いてあります。

琴子と野崎はその邸宅のドアホンを鳴らしましたが、住人が出てくることはありませんでした。

【結】ぜんしゅの跫 のあらすじ④

見えない通り魔の正体

住人からの応答がないため、琴子と野崎は家へと引き返します。

翌日ニュースでは昨晩犠牲になったカップルの訃報が取り上げられていました。

新たな犠牲者を出す前にと、琴子と野崎は再び化け物が消えた「諸田」氏の邸宅へ向かいます。

ドアホンを鳴らすと、男性の声の応答がありました。

野崎はオカルトライターであることを告げ、調査のため話を伺いたいと告げます。

少しの困惑を滲ませたまま、諸田は二人を家へと招きました。

諸田氏は諸田徹と言い、製薬会社の社長をしていると自己紹介します。

琴子は野崎のアシスタントの鈴木と名乗ります。

諸田徹は二人にオカルトの類は兄が詳しいと、兄との話し相手になるよう言いました。

戸惑う野崎を他所に、諸田徹は兄である諸田渉の部屋へと案内します。

通された諸田家の座敷の襖に、昨晩煙の中に見えた化け物そっくりの形をした絵がありました。

襖絵の中の化け物は二頭いました。

諸田徹はその絵は7年前にオークションで買ったものだと言います。

琴子はこの襖絵の怪物が通り魔の正体だと気づきました。

琴子は襖絵を焼き払うと真琴に告げます。

諸田徹に事情を話し、襖絵の化け物を退治するため翌日再度諸田邸に訪れ、野崎と琴子は退治の作業に取り掛かります。

そんな2人の前に真琴が田青年を伴って現れます。

真琴は化け物が通り魔になった理由を説明しました。

通り魔の被害者にないと思われていた共通点がありました。

それは、田青年の絵でした。

通り魔である化け物の絵は未完成でした。

絵を完成させてくれる人を探して化け物は人を襲っていたのです。

田青年は戸惑いながらも、化け物の襖絵の絵を完成させました。

その後、化け物は人を襲うことがなくなり通り魔事件は起こらなくなりました。

ぜんしゅの跫 を読んだ読書感想

作者の人気作、比嘉姉妹シリーズの最新作となる本作。

ファン待望の最新作でしたが、姿のない通り魔を追うミステリー要素と、見えない敵に追われるホラー要素が合わさり読む手が止まらなくなるほど夢中になって読みふけりました。

物語は、長年交際していた真琴と野崎が結婚というめでたい話からはじまりますが、最強の霊媒師琴子の不注意によって真琴は怪我をしてしまいます。

そのため、真琴の出番は少なく、琴子が中心になって通り魔の犯人探し、対決まで話が進みますが、肝心のなぜ化け物が人を襲ったのかという謎は真琴が解き明かします。

見えない敵に野崎が襲われる描写は容赦がなく、一体犯人は何なのかという恐怖と野崎が本当に死んでしまうのではないかとヒヤヒヤしながら読みました。

全く正体がわからないまま、読みふけったため、明かされた化け物の正体はその手があったか!と唸るほど驚きました。

予想だにしない展開の連続で驚きもあり、怖さもありながら謎解き要素もあり本当に面白かったです。

謎もとき明かされてスッキリしました。

刺激を求める方におすすめの作品です。

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