著者:辻村深月 2010年11月に新潮社から出版
ツナグの主要登場人物
渋谷歩美(しぶやあゆみ)
本作の主人公。使者と呼ばれる、死者との面会の窓口となる仕事の見習いをする高校生。
渋谷アイ子(しぶやあいこ)
主人公の祖母。現在の使者。
渋谷亮(しぶやりょう)
主人公の父。歩美が6歳の時、舌をかみきって死んだ。
渋谷香澄(しぶやかすみ)
主人公の母。歩美が6歳の時、のどが潰れた状態で死んだ。
ツナグ の簡単なあらすじ
主人公の渋谷歩美は使者(ツナグ)という仕事の見習いです。
使者とは、生きた人と死んだ人の面会の窓口となる仕事です。
使者のルールでは、生前に一度、死後に一度しか面会できないという決まりがあります。
また、面会には死者の承諾が必要です。
歩美は数々の依頼を受ける中で使者について考えていきます。
アイ子は歩美が会いたい人はいないのかと尋ねます。
歩美は、両親の死が使者の仕事道具である鏡が原因であることをつきとめ、誰とも面会せず仕事を引き継ぐことにします。
ツナグ の起承転結
【起】ツナグ のあらすじ①
世の中には、使者(ツナグ)という仕事をする人がいます。
使者とは、生きた人と死んだ人の面会の窓口となる仕事です。
使者のルールでは、生前に一度、死後に一度しか面会できないという決まりがあります。
また、面会には死者の承諾が必要です。
使者に仕事を依頼するためには、使者に繋がる電話番号が必要です。
業界内では有名な話ですが、一般の人がたどり着くにはなかなか苦労することも多いようです。
最初の依頼は、OLの平瀬愛美です。
死んだアイドルの水城サヲリに会いたいというものでした。
サヲリもこれを承諾し、面会することになります。
面会後使者から感想を一言求められると、愛美は「アイドルってすごい」という感想を残し、生きる希望を取り戻しました。
次の依頼は、畠田靖彦です。
癌で他界した母に会うことにあります。
最初は信じていなかった靖彦ですが、「本物だと騙されそうになった」と憎まれ口を叩くものの感謝して面会の場を後にしました。
【承】ツナグ のあらすじ②
次の依頼は、嵐美砂という高校生です。
親友だった御園奈津に会いたいという依頼でした。
この嵐美砂は、なんと使者の見習いである歩美の同級生です。
美砂と奈津は演劇部に所属しています。
美砂と奈津は趣味が近いこともあり、意気投合します。
奈津は美砂のことを、いつもすごいと言ってたてていましたが、美砂は話上手で人を惹き込んだり、自分の知らないことを知っている奈津に劣っているのではないかと思うようになります。
演劇部のオーディションで、同じ役を志望した2人はライバルとなります。
美砂は嫉妬から、奈津が怪我をすればいいと思います。
そんな中、登校時に奈津は事故で死亡します。
前日、出来心から美砂は通学路の水道を捻って道が凍って滑りやすい状態を作っていました。
自分のせいだと思った美砂は、奈津に会いにいくことにします。
そして、使者が同級生で奈津が憧れていた歩美であることを知ります。
面会後、美砂は奈津からの伝言として歩美から「道は凍ってなかったよ」という言葉を聞き、絶望します。
次の依頼は会社員の土谷功一です。
長年待ち続けている、失踪者で婚約者の日向キラリと面会します。
依頼時は生存も分からない状態でしたが、依頼が通ったことで亡くなっていたことを知ります。
キラリは家出をして上京していて、婚約の準備をするために実家に帰る途中で事故にあい死亡していました。
キラリは功一に嫌われたくないという思いから自分の素性を明かしていませんでしたが、面会でやっと自分のことを話します。
キラリは「大好き」という言葉を残して功一の前から消えます。
【転】ツナグ のあらすじ③
歩美の祖母であるアイ子は、入院したことをきっかけにして歩美に使者の仕事を継ぐことを考え、歩美に見習いをさせます。
使者として死者を呼ぶ力は1人しか持つことができません。
アイ子は、歩美に使者を継ぐ前に会いたい人はいないか尋ねます。
歩美は会いたい人を考えながら使者見習いとして仕事を始めます。
最初は平瀬愛美の依頼を受けます。
血縁関係ない人に会うことに驚きますが、使者を使う人にはさまざまな事情があることを知ります。
歩美は3番目の依頼者である嵐美砂が、面会後にひどく取り乱す様子を目撃しました。
この経験から、使者の利用が幸せな結果につながるわけではないことを知ります。
4番目の依頼者である土谷功一は面会の約束時間になってもなかなか待ち合わせ場所に現れませんでした。
近くには来ていると思った歩美は、功一を探しに行きます。
一度しかない面会の機会なのに、怖いからと逃げ出した功一に憤りを感じたためです。
功一を見つけた歩美は声をかけ、面会させます。
【結】ツナグ のあらすじ④
歩美は使者の見習いをしながら、会いたい人を考え続けていました。
歩美は6歳の時に父と母を亡くしています。
父の不倫を疑った母と揉めて2人とも死んだのではないかと言われていました。
母は喉が潰れた状態で、父は母に寄り添うように舌をかみきって死んでいるのが自宅で発見されました。
使者の仕事をする中で、歩美は使者の仕事に必要な鏡の存在を知ります。
鏡は死者と対話するために必要で、使者の力を持つ1人以外が見ると、使者と見た人の2人ともを死に至らしめる恐ろしいものです。
歩美はアイ子に、父に使者の力を一度譲ったのではないかと尋ねました。
父は使者として働いていて、母は歩美が6歳の頃亡くなった歩美の父の父、つまり祖父に会わせようとしたのではないかと考えました。
歩美の母が鏡を見てしまったことで、父と母は死んでしまったのではないかという推測をアイ子に話します。
真実に気づいた歩美は、誰にも会わず、将来力を譲った時にアイ子に会うと言ってそのまま使者の力を引き継ぎます。
ツナグ を読んだ読書感想
最初は使者を通してさまざまな人の人生をみる、短編集のような作りかと思いましたが、途中から全てが繋がっていることが分かりました。
前半は依頼者目線で綴られていますが、後半は歩美の目線で一つ一つの依頼が綴られており、それぞれのストーリーを客観的にみることができる作りが面白かったです。
最終的には、歩美の父と母の死の真相を突き止めるというミステリー要素もあり最後まで楽しむことができました。
全体を通して死生観について考えさせられる深い作品でした。
映画化もされている本作品ですが、映画よりもエピソードが濃く、歩美の心情変化が細かに記されていて読みやすかったです。
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