著者:松岡圭祐 2019年11月にKADOKAWAから出版
高校事変 IVの主要登場人物
優莉結衣(ゆうりゆい)
17歳の女子高生。テロ事件を起こして死刑となった半グレ集団のボスの次女。武器の知識と戦闘の経験を持つ。
優莉健斗(ゆうりけんと)
中学2年生。結衣の異母弟。虚言壁がありバス運転手を銃殺して自殺したとされる。
梅田浩介(うめだこうすけ)
結衣をつけまわす公安刑事。50歳の巡査部長。家族にうとまれている
綾野敬一(あやのけいいち)
結衣をつけまわす公安刑事。27歳。公安には珍しくすなおで常識的
カン・グァンス
韓国系の半グレ集団パグェの最高幹部。40代。
高校事変 IV の簡単なあらすじ
結衣は、長年会っていなかった異母弟の優莉健斗が、バスの運転手を銃殺し自殺した、と聞かされます。
なにかの間違いではないかと考えた結衣は、亡き弟の濡れ衣を晴らそうと動き始めます。
やがて、バスの運転手にガソリンと猟銃を売ったのが、韓国系の半グレ集団パグェにつながることを突き止めます。
パグェは父親の抗争相手でした。
結衣はパグェの巣らしき清墨学園を訪ねます。
そこへ、たまたま別件でその学園に捜査に入った公安刑事のふたりと合流します。
パグェの幹部、グァンスは学校を閉鎖し、三人を殺すように配下に命じます。
閉鎖された学校内で、半グレ集団と唯たちの死闘が始まります。
高校事変 IV の起承転結
【起】高校事変 IV のあらすじ①
優莉結衣は、かつてテロ事件を起こして死刑となった半グレ集団のボスの次女です。
彼女にはつねに公安の刑事が貼り付いています。
結衣は公安のふたり、梅田と綾野から、長年会っていなかった異母弟の健斗が死んだことを知らされます。
健斗は中学2年生でした。
結衣は弟の遺体に会いに、現地へ行きます。
そこでわかった事情はこうでした。
学校のスキー合宿で乗っていたバスが、事故で崖下に転落しました。
ガソリンの匂いがするため、生き残った運転手や生徒たちは近くの廃校に避難しました。
そこには猟銃が置いてありました。
そのうち猟銃がなくなり、健斗もいなくなり、彼をさがしにいった運転手が銃殺され、健斗が自殺した、というのです。
小さなころから優しくて結衣を頼りにしていた弟でした。
結衣は弟の濡れ衣を晴らそうと、動き始めます。
バスの運転手の家に忍び込み、彼が心を患っていたこと、各種の事故についてスクラップしていたこと、定期的にガソリンを購入していたことを知ります。
結衣は警察で、バス運転手の妻と対峙します。
そこで、事件の真相について推理したことを話します。
�@運転手は心を患っており、事故を起こした場合の責任逃れの方法をあらかじめ計画していた。
�Aバスにガソリンを撒き、すべて燃やして証拠を隠滅し、自分は近くで倒れることにした。
�B紆余曲折のあげく、健斗は正当防衛で運転手を撃ってしまい、自殺した。
……以上が結衣の推理でした。
【承】高校事変 IV のあらすじ②
結衣は公安の車で送ってもらいましたが、そのときに、盗聴器をしかけていました。
録音により、結衣がいないときに交わされた会話から、パグェのメンバーが出入りしている外国人学校、私立清墨学園のことを知ります。
結衣を見張っていた公安の梅田と綾野が急用で呼びだされていなくなった隙に、結衣は清墨学園を訪ねることにしました。
バスの運転手にガソリンと猟銃を売ったのがパグェであることを証明したかったのです。
一方、綾野はパグェの営業マンと接触し、ガソリンを購入し、営業マンにGPS装置をしかけました。
結衣は清墨学園に入って、パグェの女子高生ヨンジュと会い、最高幹部のグァンスに引き合わされます。
そこへ、GPSを追跡して、のこのこと梅田と綾野がやってきました。
彼らは、まさか学校ごとパグェの巣窟だとは思ってもおらず、油断していたのです。
結衣はガソリンを詰めたペットボトル、と見せて、ただの水が入ったそれをパグェたちに投げつけ、彼らが尻込みするすきに拳銃を拾って彼らを射殺し、3人で逃げ出しました。
【転】高校事変 IV のあらすじ③
結衣が人を殺すところを公安に見られたのは初めてでした。
梅田は自分たちに迫る危機をまだ甘く見ており、結衣が殺人鬼であることが明らかになったことで、しめたと思っています。
迫ってくる生徒たちについても、パグェでない者もいるかも、などと考えています。
窓から逃げられると思って、調べてみると、防音と防弾のきいた頑丈な窓に鍵がかけられているのでした。
校内放送で、グァンスから、生徒たちや成人したパグェの構成員たちに指示が出されます。
「3人を殺したら、成績や卒業、昇進で優遇する」というのです。
刀剣類を持った生徒たちがまず結衣たちに襲いかかってきます。
18歳にならないとパグェでは銃を撃たせてもらえないので、刀剣で人を襲うのです。
結衣たちは情け容赦なく銃を撃ち、逃げ回ります。
また、結衣はまわりにある物を武器に変え、敵を倒していきます。
逃げている途中、子供の声を聞きつけた結衣は、梅田と綾野から離れ、虐待されている児童を見つけました。
女の子のひとりは息をしていませんでした。
結衣は人工呼吸をして女の子を助け、ありあわせのもので水枕を作ります。
やがて、逃げ回った3人が児童たちの部屋に集まり、グァンスから、ガソリンの入ったペットボトルに火をつけたものを投げ入れられます。
結衣はペットボトルの上に水枕をかぶせて、大爆発を防ぎました。
そして、逃げ出そうとしたグァンスを倒したのでした。
【結】高校事変 IV のあらすじ④
結衣たち3人と、虐待された児童たちは外に出ます。
爆発音を聞きつけて、パトカーの音が近づいてきます。
学園に入るまでは結衣を捕まえることに執念を燃やしていた梅田でしたが、結衣の本性に気づき、逃げることを勧めます。
学園の騒動は、自分たち公安のふたりが引き起こしたと証言するつもりです。
結衣はフェンスを越えて校外へ出ると、グァンスから奪ったスマホをたよりに、パグェの本当のボスへと迫っていきました。
それは、首相が襲われた高校事変(第1巻)の学校にいた、ベトナムから帰化した生徒の父親でした。
名前は田代槇人(たしろまさと)。
田代はベトナムから帰化し、表向きは実業家ですが、裏では韓国系の半グレたちをあやつる影の黒幕でした。
田代は、今夜の結衣のアリバイに、と映画の半券をくれます。
また、これまでの、結衣が関わった事件に、自分たちがどのように関わってきたかを説明してくれました。
田代の息子の、バドミントン選手、優次も黒幕のひとりでした。
また、(第3巻で)結衣や他の生徒が連れていかれた無人島の矯正施設も、黒幕は田代だったのです。
田代は、その場はおとなしく結衣を帰してくれました。
数日後の朝、結衣は亡くなった弟の遺物からオカリナを取り出し、河原で吹いたのでした。
高校事変 IV を読んだ読書感想
1話完結となっているシリーズです。
普通こういうシリーズは、第1巻が非常におもしろくて、売れて、それで第2巻が書かれ、同様にして3巻、4巻と続いていくのだろうと推測されます。
そのため、結局は、第1巻はとてもおもしろかったけど、2巻以降はそれほどでもなく、まあ惰性で読み続ける、みたいなことになりがちです。
ところが、このシリーズの第4巻は、第1巻に迫るおもしろさでした。
閉鎖された学校内を、殺されそうになりながら、反撃しつつ逃げ回る、という第1巻に似た構図のせいかもしれません。
もうひとつ、おもしろさ、というか魅力の原因をあげると、ヒロインの優莉結衣が抱く人情が描かれている、ということです。
もちろん、これまでの巻でもいくばくかの「情」は感じられました。
それが今回は、かなり重く描かれていたのです。
冷血非常な戦士とばかり思われていた結衣ですが、一面、人間としての温かみがあることで、いっそう魅力的になりました。
全身血まみれになりながら敵を倒すヒロインを、美しいとさえ感じられたのでした。
コメント