【ネタバレ有り】そして父になる のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
そして父になるの主要登場人物
野々宮良多(ののみやりょうた)
本作の主人公。大手建設会社に勤め、自分を人生の勝ち組だと思っている。
野々宮慶多(ののみやけいた)
良多の息子。流晴と取り違えられる。
斎木雄大(さいきゆうだい)
群馬で小さな電気店を営んでいる。
斎木琉晴(さいきりゅうせい)
雄大の息子。慶多と取り違えられる。
そして父になる の簡単なあらすじ
順風満帆の人生を送っていた野々宮良多は、6年間育てた息子が、病院で取り違えられた他人の子供だったことを知らされます。取り違えられた二組の家族は、病院側の提案で交流を始めます。子供を交換すべきか、このまま育てるかという葛藤の中で、良多は息子への思いに気が付きます。
そして父になる の起承転結
【起】そして父になる のあらすじ①
大手建設会社に勤めるエリートの野々宮良多は、学歴・仕事・家庭のすべてを手に入れ、幸せな人生を送っていました。
息子の慶多が、良多の通っていた私立小学校を受験した日の夜、慶多を出産した前橋の病院から、話したいことがあるとの電話が入ります。
数日後、病院の事務部長が弁護士を伴って野々村夫妻に会いに来て、そこで良多と妻・みどりは、息子の慶多が他人の子と取り違えられている可能性があると聞かされます。
そして、DNA鑑定の結果でも、野々宮夫妻と慶多とは生物的親子ではないことがはっきりします。
いつ取り違えられたのか、母子手帳や当時の写真を見返すみどり。
それを見て良多は、「だから…あんな田舎の病院で大丈夫なのかって言ったんだよ」と、みどりを責めるようなことを言います。
野々宮夫妻は慶多をみどりの母に預け、前橋中央総合病院で、取り違えられたもう一方の斎木雄大・ゆかり夫妻と面会します。
病院側から、同じようなケースでは最終的に百パーセント“交換”していること、そして小学校入学前に結論を出す方がいいと提案されます。
結論が出ぬまま解散した野々宮・斎木夫妻ですが、後日病院抜きで会うことを決めます。
良多は上司の上山に取り違えの件について話をしたところ、両方とも引き取る案を提案され、その案に魅了され、息を吹き返した思いになります。
【承】そして父になる のあらすじ②
斎木家との一回目の面会は、前橋の郊外にあるショッピングセンターで会うことに決まります。
全く正反対の家族ですが、琉晴の好きな食べ物が、良多と同じすきやきと分かり、全員が“血”を意識して驚きます。
子供たちは早くも打ち解け、仲良くなります。
良多は友人の弁護士・鈴本に慰謝料について依頼することになり、母親同士はなんでも相談できるようと連絡し合うことを決めます。
しかし良多は鈴本に、慰謝料とは別に、両方の子供を引き取る手段について相談します。
病院側の弁護士からの提案で、泊りで子供を交換することが決まります。
良多は慶多に、泊まることは強くなるためのミッションだ、と言い聞かせます。
翌日、斎木家に到着した良多とみどりは、慶多を引き渡すとすぐに琉晴を車に乗せ、自宅へ帰ります。
斎木家に残された慶多は、野々宮家では怒られることばかりのことが、みんな楽しそうに笑っていることに驚きます。
そして泣く余裕もないほど、楽しく過ごします。
野々宮家に連れてこられた琉晴は、箸の持ち方を良多から丁寧に教わります。
その姿を見たみどりは、今までに良多は慶多に対し、あんなに丁寧に教えたことがあっただろうかと強烈な違和感を覚えます。
良多は、自分の幼い頃の写真と琉晴が驚くほど似ていることに気づき、その“血”の強さに興奮します。
一方で琉晴と過ごすみどりは、琉晴に対し腫れ物に触れるように接します。
そして、良多が仕事から帰るのを待たず、みどりと琉晴は斎木家へ向かい、慶多を連れて家へと帰ります。
良多への不満を募らせていたみどりは、帰宅した良多にそっけない態度をとってしまいます。
【転】そして父になる のあらすじ③
二十回目の交換お泊りの日、良多が突然、慶多と琉晴の二人ともを譲ってくれと言い出します。
怒りに震える雄大とゆかり。
なおも金で解決しようとする良多に怒った斎木夫妻とは、そのまま喧嘩別れのようになってしまいます。
その二日後の裁判で、看護師の宮崎祥子が、取り違えは事故ではなく、幸せそうな野々宮夫妻に嫉妬し、わざと交換したのだと証言します。
未成年者略取は5年で時効になるため、祥子が逮捕されることはないと知り怒りを募らせる雄大・ゆかり・みどりですが、良多は一人冷静さを保っていました。
父の日に、良多は兄・大輔から、父親が倒れたと呼び出され、父親の良輔と後妻であるのぶ子が暮らすアパートを訪れます。
両親と兄と久しぶりに会い、感傷的になる良多。
両親との間に確執がある良多ですが、父に”血が大事”と言われ、複雑な気持ちになります。
帰宅した良多は、慶多が自分と雄大の二人に、父の日の工作を作っていたことを知り、ショックを受けます。
翌日、慶多を斎木家に送り届けた良多は、ゆかりから、似てるとか似てないとかにこだわっているのは、子供とつながっていると実感のない男だけだと言われます。
慶多と琉晴は夏休みに入ると交換されることが決まります。
それを前に、二家族で河原でバーベキューをし、みんなで写真を撮ります。
そして、慶多は斎木家が、琉晴は野々宮家が引き取ります。
良多は琉晴に、自分たちをパパとママと呼ぶように言いますが、琉晴は納得しません。
良多と琉晴は押し問答を繰り返しますが、最終的に良多が返す言葉を失ってしまいます。
次第に、みどりとの関係もぎくしゃくしていきます。
斎木家での慶多は、哀しくて切なくて泣いてしまいます。
そこへゆかりが現れ、慶多を笑わせて慰めます。
ゆかりは、目の前の子供の悲しみを減らしてあげたいのは当然だが、琉晴への愛も自分だけのものだ、と強く思います。
【結】そして父になる のあらすじ④
良多は宇都宮へ左遷されます。
良多が帰宅すると、みどりから一枚の画用紙を渡されると、それは”パパ ママ”と書かれた雄大とゆかりの絵でした。
慶多への思いを募らせていたある日、みどりは、河原で慶多と琉晴が指切りしていたのを思い出し、お互いに親にわざと嫌われるようにしようと約束したのでは、と疑います。
みどりとの関係がぎくしゃくして以来ソファで寝ていた良多は、慶多が父の日に作ってくれた折り紙のバラの茎を見つけます。
家の隅々まで花を探しますが、見つからず、もし床に落ちている花を見つけたのが慶多ならば、どんなに哀しい思いをしただろうかと、心配します。
ある日、弁護士の鈴本から、良多たちの全面勝利が告げられます。
そして看護師の宮崎からだという、五万円の入った封筒を受け取ります。
良多は駅前の立ち飲み屋で怒りに任せてウィスキーを飲み、そのまま宮崎の家へ向かいます。
宮崎に怒りをぶつける良多。
しかし、継母を本気で守ろうとした少年を見て、良多は打ちのめされます。
ある日、琉晴が突然一人で斎木家へ帰ります。
慶多は”ミッション”が終わってパパが迎えに来たと喜びますが、迎えに来た良多が琉晴を呼ぶのを聞き、ショックを受けます。
休日、良多たちは家の中にテントを張り、キャンプをして遊びます。
その時、琉晴がはじめて「お父さん」と呼びます。
星空を眺めていた琉晴がパパとママのところに帰りたいと泣きます。
翌朝、慶多の写真を見返す良多は、慶多がこっそり両親の写真を撮っていたことを知り、涙します。
そして斎木家へ行きますが、慶多は良多を見ると逃げてしまいます。
追いかけた良多は、慶多にパパなんかパパじゃないと言われます。
良多は、バラの花をなくしたこと、カメラで写真を撮ってくれていたこと、ピアノを叱ったことなどを謝り、ミッションは終わりだと告げ慶多を抱きしめます。
斎木家へ戻った良多は、二家族でもっと頻繁に行き来しようと決めます。
そして父になる を読んだ読書感想
優秀であるべきという価値観の良多が、子供の取り違えという事件を通して、悩み葛藤し、親としても人間としても成長する姿に感銘を受けました。
血のつながりが大事か、共に過ごした時間が大事か、実際に子を持つ親として自分に置き換えて想像してみましたが、どちらを選ぶかは難しいなと感じました。
野々宮家と斎木家は、まるで対極にある家族ですが、それぞれの親の心情が、手に取るように分かりました。
この本を読んで、今いる子を大事に、きちんと愛情を伝えながら育てていきたいと、強く感じました。
ぜひ、子を持つ親に読んでもらいたい一冊です。
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