【ネタバレ有り】福も来た のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:群ようこ 2016年7月に(株)角川春樹事務所から出版
福も来たの主要登場人物
アキコ(あきこ)
大手出版社を辞めてパンとスープを出す「a」という店を経営している。真面目で一本気だが涙もろいところもある。
シマちゃん(しまちゃん)
アキコのお店の従業員。気働きができ心のこもった接客をしてくれ、アキコも頼りにしている相棒。
ママ(まま)
向かいの喫茶店のママ。厳しい事も口にするがアキコの良き相談相手。
先生(せんせい)
料理専門学校の理事長先生。アキコの憧れの女性。
福も来た の簡単なあらすじ
礼儀正しく力持ちの相棒シマちゃんと一緒に、今日も美味しいスープとサンドイッチを提供します。お店を始めて数年たてば色々なことがあるけれど、お客様に喜んでいただければ、それで十分幸せな二人。アキコの癒しだった愛猫タロは天国に旅立ってしまったけれど、今度はタロにそっくりな二匹の猫たちがアキコの元にやってきます。「パンとスープと猫日和」の第二弾。淡々とした日常のなかに幸せが見つけられる作品。
福も来た の起承転結
【起】福も来た のあらすじ①
サンドイッチとスープを提供する店を営むアキコの朝は、母とタロの写真の前に水とご飯を置くことから始まります。
タロはアキコがお店を始めた時に拾った猫で、お店の事で悩むアキコにいつも寄り添ってくれていました。
お店ではそんな事はありませんが、家にいる時や、外を散歩している時にはタロを思い出して涙を流すアキコです。
そんなアキコのお店は今のところ順調ですが、商店街の変化はすさまじく多い時では5軒の店が改装中のこともあります。
シャッターを閉まったままにしたくない商店会のおじさん達も必死です。
そんな話をしていた喫茶店のママは、最近では少しアキコの店を認めてくれ、シマちゃんのことも良く働くいい子だと褒めてくれるようになりました。
シマちゃんは店に来た時と変わらず初々しく、心のこもった接客ができる素晴らしい女性です。
そしてタロを亡くしたアキコの気持ちを気遣う心優しい面も持っています。
そんなシマちゃんいつものように仕事をしていたある日、アキコはママの自宅へ招待されることになりました。
【承】福も来た のあらすじ②
定休日の水曜日、ママのマンションを訪ねたアキコは、その部屋でママが若い頃ホステスをしていたという話を聞かされます。
もっと詳しい話をと思った矢先、お昼を食べようとイタリアンレストランに連れて行かれました。
ママは「プロのお店は、こういうものだ」と教えるために、アキコを連れてきてくれたのです。
そしてレストランの帰り道、猫だまりとなっている公園にも寄ってくれ、タロを失ったアキコを思いやるママの優しさを感じました。
再びママの家に戻った二人は、美味しい珈琲とシフォンケーキを食べながら話を続けます。
ママは高校卒業後すぐに父親を亡くし、病気の妹のために水商売の世界に入ったのだといいます。
贔屓にしてくれていたお客さんも妹も亡くなり、ママも肝臓を壊したのでホステスは辞めて喫茶店で珈琲の修行を始めたとのことでした。
ひとしきり話をした後、いつまでお店をやっていけるか心配するアキコはママに相談をします。
するとママから「体を動かして真面目にやっていれば、なんとかなるもの」という言葉をもらったのでした。
【転】福も来た のあらすじ③
その日はいつになく客数が少ないと感じるアキコでしたが、これからは毎日がそんな日なのかもしれないと考えます。
開店前から行列ができて材料が無くなって店を閉めるという状態ではなくなり、仕込みの量にも悩むようになってきました。
店内をお客さんでいっぱいにすることが目的ではありませんが、従業員を雇う経営者としては、色々考えなければいけません。
そんなある日、アキコとシマちゃんは、以前ママさんが連れて行ってくれたイタリアンレストランを訪れます。
美味しい料理を堪能した後、ご主人から「長くやっていればいいときも悪い時もある。
それでも店主がちゃんとしていれば何とかなる」という話を聞き、素敵な夕食に満足した二人でした。
そしてシマちゃんが法事のために臨時休業となったある日、タロを思い涙が止まらなくなったアキコの足は、自然と兄のお寺へと向かっていました。
自分のことを妹だとは知らない兄の寺で、優しい義姉と話がしたくなったのです。
話している中で「根っこは変えないことが大事」という義姉の言葉にハッとなるアキコ。
問題はお客さんにあるのではなく、根っこを変えようとしていた自分自身にあったのだと気づくのです。
【結】福も来た のあらすじ④
法事から戻り出勤したシマちゃんに、アキコはスープについて相談します。
営業時間の延長や飲み物を提供するのではなく、アキコの根っこであるスープの新作を作ることにしたのです。
インパクトのある色のスープがいいと思うアキコは、シマちゃんと二人で色々な案を出していきます。
そして何日か経ったころ、料理専門学校の理事長先生がお店にやってきます。
アキコは尊敬する先生に、新作のカボチャのスープを食べてもらう事になり緊張しますが、「おいしい。
どれだけ裏で手をかけているか良くわかる」と言われ一気に緊張がほどけました。
余計なことは考えず、のんびりやっていこうと考えていた休みの日の午前中、シマちゃんと一人の若い男性が訪ねてきます。
シマちゃんが持っていた大きなカゴには、二匹の猫が入っていました。
飼い主だった男性に酷い扱いを受けていた二匹を保護したので、アキコに里親になってほしいと言うのです。
二匹はタロにそっくりなグレーのキジトラで、アキコの悲しみを察したタロが二倍になって戻ってきてくれたような感じがしました。
アキコは両腕に二匹を抱えながら、シマちゃんと彼のことを嬉しく思い、いつまでも新しい家族の重さを楽しんでいました。
福も来た を読んだ読書感想
アキコとシマちゃんは雇い主と従業員の関係ですが、お互いがなくてはならない存在になっているところが良いなと感じました。
お店に入ってきた当初から気働きができ、マニュアル通りではないシマちゃんの接客を気に入っていたアキコですが、最近ではメニューの相談をしても、シマちゃんなりの意見をしっかり聞かせてくれ本当に頼りにしている様子。
そしてアキコの代わりに憤慨してくれたり、落ち込んでいてもフッと笑ってしまうような面白い事を言ってくれたり。
アキコにしても、シマちゃんの心のトラブルに気付かなかったと謝るような優しい店主です。
二人の関係性に、ほっこりとした気持ちになれた物語でした。
そして、根っこを変えずに真面目に生きていれば、幸せなことが訪れるのだということも教えてくれた本でした。
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