【ネタバレ有り】海と山のピアノ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:いしいしんじ 2016年6月に新潮文庫から出版
海と山のピアノの主要登場人物
ぼく(ぼく)
中学生。母は家出をし、父も行方不明。村の大人たちに育てられた。
ちなさ(ちなさ)
ある日ピアノと共に海辺に打ち上げられた、謎めいた少女。
オカルばあさん(おかるばあさん)
干物作りを生業にしているおばあさん。ちさなの面倒を見る。
海と山のピアノ の見どころ!
・ちなさと子供たちの心の触れ合い
・村を襲う悲劇と救済
・終始描かれる音楽の魅力
海と山のピアノ の簡単なあらすじ
ぼくの住む村の海岸に、ある日大きなグランドピアノが打ち上げられます。
その中には女の子が眠っていました。
身寄りのない女の子はオカルおばあさんの家に住み、ぼくと同じ中学校に通うことになります。
こどもたちはピアノを通して女の子・ちなさと仲良くなりますが、ある日、村に危機が訪れます。
海と山のピアノ の起承転結
【起】海と山のピアノ のあらすじ①
ある日、海辺に大きなグランドピアノが打ち上げられます。
発見したのは、中学校の用務員さんでした。
ピアノの中を覗くと、そこには一人の女の子が眠っていました。
用務員さんは仰天し、先生を呼びに行きます。
先生たちは相談して、女の子の身よりがわかるまでは学校で預かることにしました。
しかし、女の子の正体はわかりませんでした。
女の子は、口がきけませんでした。
また、手には手袋をはめていて、片時も外しません。
先生たちは、もしかすると女の子は虐待か何かを受けていて、トラウマを持っているのかもしれないと考えます。
女の子を施設に入れるべきだ、という声もありましたが、村に住むオカルおばあさんが女の子の面倒を見ることになりました。
痩せていた女の子は、おばあさんの作るご飯を食べて、健康的な体を取り戻しますが、夜になると家を出ていきます。
おばあさんは心配しますが、女の子は学校に置かれたグランドピアノの中で眠っているのでした。
【承】海と山のピアノ のあらすじ②
中学校の生徒たちは、突如現れた女の子に興味津々でした。
女の子には「ちなさ」という名前をつけて、話しかけました。
ちなさは話すことはできませんでしたが、筆談を覚えました。
また、女の子は音楽が好きでした。
朝、早く登校した生徒は、ちさなのピアノを弾きます。
ちさなはその音色で起きるのが日課となりました。
ある日、ぼくは学校が休みの日に間違えて登校してしまいます。
家に帰る前に、ちなさのピアノの部屋に入ると、ちなさはまだ眠っていました。
ピアノの音を出してみると、ちなさは目覚めます。
ぼくはピアノが弾けないので、ちなさの望むような音楽は奏でられない、とちなさに伝えると、ちなさは筆談でどんな音も音楽だ、と返事をしてくれました。
その返事に自信をもらったぼくは、ピアノを自分の思うがままに演奏します。
音はでたらめでしたが、ちなさは喜んでいるようでした。
この出来事以来、ぼくとちなさは急激に仲良くなりました。
ちなさは山のことを知りたがりました。
ぼくの住む村の山には立ち入り禁止の場所があり、そこには穴が開いていました。
昔、その場所で三人の女性が亡くなった事故があったのです。
三人とも、死体は山で発見されたのですが、死因は溺死で、肺には海水が入っていました。
ちなさはこの事故現場によく行きたがりました。
もしかすると、山と海が繋がっていることに気付いていたのかもしれません。
【転】海と山のピアノ のあらすじ③
村の定例会議が行われた日、ある重要事項が可決されました。
山の立ち入り禁止の場所に開いている穴を埋め立てるというのです。
大自然が作った穴を埋めるなんて、と反対する人もいましたが、また以前のように誰かが亡くなるような事故があったらどうするんだ、という意見に押し切られて、すぐに工事は始まりました。
山の穴が埋め立てられるということを知ったちなさは、のっぺらぼうのような表情をしました。
その夜、ちさなはお手伝いをしている海産物センターを早くに出て、すぐにオカルおばあさんの家に向かいました。
そして明け方、信じられないことが起こりました。
海が燃えているのです。
燃え盛る海は、津波のようにぼくの住む村に押し寄せてきました。
早朝の出来事にも関わらず、村の住人はすぐに逃げ出すことができました。
危険を知らせる声が聞こえたのです。
【結】海と山のピアノ のあらすじ④
その声は、ちさなのものでした。
ちさなは海の炎のせまる学校に行き、グランドピアノをグラウンドまで引きずり出しました。
そして、ピアノの演奏を始めたのです。
荒々しい演奏と旋律は、今までみんなが聞いたことのないものでした。
しかし、演奏が続くうちに、音楽を聴くみんなの心が一つになります。
みんなはちなさの演奏に合わせて歌いだしました。
すると、少しずつですが、迫りくる海にぼくたちの歌声が勝り始めたのです。
必死に歌い続けるうちに、炎は波に変わり、その波も穏やかになりました。
気付くと、ちなさの姿は消えていました。
ピアノもどこにもありません。
平和な村の姿が戻ってきたのです。
ぼくは、ちなさはもうぼくたちの目の前には現れないだろうと確信していました。
ちなさはきっと次の場所に向かったのです。
ちなさは留まることを知らない海の子ですから。
海と山のピアノ を読んだ読書感想
美しい文章で構成された一遍です。
少女の儚さと、グランドピアノの力強さがとてもいい対比で、読んでいて引き込まれました。
この本は短編集なので、他の編も同じように芸術性にあふれた物語を楽しむことができます。
音楽と海という幻想的な舞台の中で、「海産物センター」「干物」といった生活感あふれるワードが頻出するのも良いアクセントだと思いました。
主人公の「ぼく」はとても控え目な性格なので、もうちょっと「ちなさ」とのやりとりを楽しみたかった気もします。
また、こどもたちの友情を楽しんでいるといきなり炎の津波がやってくるので、内容としてはショッキングではありますが、読み終えた後に何とも言えない余韻を与えてくれる一冊です。
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