【ネタバレ有り】火星に住むつもりかい? のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:伊坂幸太郎 2015年2月に光文社から出版
火星に住むつもりかい?の主要登場人物
久慈 羊介(くじ ようすけ)
理髪店の店主。妻を病で失い、休業がちになっている。
大森 鴎外(おおもり おうがい)
金に困っている大学生。磁石についての研究をしている。
真壁 鴻一郎(まかべ こういちろう)
捜査官。虫が好き。
薬師寺警視長(やくしじけいしちょう)
平和警察導入の旗振り役。真壁とは馬が合わない。
火星に住むつもりかい? の見どころ!
平和警察が設置され、防犯カメラによる監視や、危険人物の密告が横行する仙台の街が舞台です。一度「危険人物」のレッテルを貼られた住民は酷い尋問を受けたのち、ギロチンで処刑されてしまいます。そんな理不尽な平和警察に立ち向かうのは、正義感に燃える一般市民たち。平和警察の内部でも覇権争いが勃発し、誰が敵で誰が味方なのかもわかりません。果たして、仙台の街に平和は訪れるのでしょうか。
見どころ
・平凡な一般市民が悪の組織に立ち向かう
・絡まり合う偶然が引き起こす事件の数々
・警察によるどんでん返し
火星に住むつもりかい? の簡単なあらすじ
最低の平和組織
火星に住むつもりかい? の起承転結
【起】火星に住むつもりかい? のあらすじ①
この街の警察は「平和警察」と呼ばれ、犯罪を未然に防ぐために防犯カメラでの市民の監視が徹底され、さらには市民に危険人物と思わしき者を密告させていました。
一度危険人物とみなされた者は強制的に連行され、過酷な取り調べを受けます。
取り調べの中では、警官たちによる暴言や暴力は日常茶飯事で、他にも最低温度の冷房をかけた部屋に長時間放置したり、家族を人質にしたりと、卑劣な行為を働いていました。
また、罪を認めて危険人物と認定された者は、人々の集まる広場で、ギロチンを使って処刑されます。
この取り調べや処刑を受ける者は、冤罪も多く含まれていましたが、警察の圧倒的な権力の前では、誰も逆らうことができませんでした。
しかし、家族が取り調べを受けたり、処刑されたりした市民は、やがて警察に対して抵抗しようと思うようになります。
しかし、表立って警察に盾突けば、連行されてしまうのは明らかです。
そこで、市民は金子教授という大学教授を中心とした「金子ゼミ」を結成し、こっそりと会合を開き、取り調べが行われている建物に忍び込み、哀れな容疑者たちを解放しようともくろみます。
しかし、その計画は失敗に終わりました。
「金子ゼミ」という存在は、真壁という捜査官が作った団体で、反平和警察をあぶりだすためのものだったのです。
「金子ゼミ」の参加者は平和警察に連行され、厳しい取り調べを受けます。
しかしその時、警察内に黒ずくめのつなぎを着た男が突如現れ、ゴルフボール状の不思議な武器や鉄砲のようなものを使って警察官を殺害し、市民たちを救出します。
その後、黒ずくめの男と市民たちは姿をくらましてしまいます。
平和警察はメンツを汚された屈辱から、懸命な捜査を始めます。
消えた大学生
【承】火星に住むつもりかい? のあらすじ②
それも、とてつもなく強力なものです。
その磁石を投げられると、ベルトなどの身に着けている貴金属が引っ張られ、体のバランスが崩れるのです。
また、鉄砲のようなものは、磁力を使って磁石を猛スピードで発射させるというものでした。
平和警察の捜査により、磁石について研究している青年の存在が浮かび上がってきました。
それは、大森鴎外という男子大学生でした。
鴎外は、家が貧乏で金に困っていました。
磁石についての研究をしているのですが、彼は大学には内緒で企業と取引をしているという疑惑が浮かびます。
平和警察は鴎外の行方を探しますが、鴎外の足取りは見つかりません。
しかしある日、鴎外らしき人物を以前に見たかもしれないという情報が入ります。
ある定食屋で、クレジットカードが軒並み使えなくなったというサラリーマンがいたのです。
それは、おそらく強力な磁石を持つ鴎外が近くに座っていたせいです。
そのサラリーマンから鴎外の足取りを聞き、平和警察は防犯カメラの映像を調べます。
しかし、その防犯カメラの映像は消去されていました。
というのも、以前に平和警察の警官が誤ってタクシーの運転手を殴り殺すという不祥事を起こし、それを抹消するためにデータが消されたのでした。
しかし、その隠蔽された動画には、鴎外の姿が映っていました。
事件が起きた時、鴎外は殴られているタクシーの運転手を助けようと、現場に駆け寄りました。
すると、警察官が鴎外を射殺したのです。
この事件は、黒ずくめの男が平和警察に乗り込んできた件より前に起きています。
ということは、黒ずくめの男は鴎外ではありません。
誰が強力な磁石を手に入れ、平和警察に立ち向かおうとしているのでしょうか。
警察の捜査は暗礁に乗り上げてしまいました。
民意の集まる場所
【転】火星に住むつもりかい? のあらすじ③
彼は祖父と父親から引き継いだ正義感について悩んでいました。
久慈の祖父は、宝くじで大金を当て、その金を友人のために使ったことから偽善者と罵られ、自殺します。
久慈の父は、骨折で入院中、病院が火事に見舞われた際、自身は助かっていたのに病院に残された患者を助け出そうとして火事の中に飛び込んで亡くなります。
久慈も正義感を持っていましたが、祖父や父親のように身を亡ぼしたくはありませんでした。
ですが、久慈は平和警察の出現によって、自身の正義感が強まっていくのを感じていました。
しかし、自分の平和な生活を守るために、行動には移しませんでした。
しかし、久慈の妻が病で倒れ、苦しみながら亡くなります。
突然の出来事に久慈は落ち込み、理容院も休みがちになります。
しかし、偶然鴎外が警察官に殺される現場を目撃してしまいます。
警察が罪もない市民を殺すなんて何かの間違いだと思いますが、翌日のニュースにはその事件のことには触れられておらず、警察が事件をもみ消したことに気付きます。
久慈のもとには、鴎外が残した磁石と鉄砲がありました。
久慈は、はじめは使い道に困りましたが、これらは武器になることに気付きます。
妻と鴎外の死がきっかけで吹っ切れた久慈は、平和警察に反抗する計画を立てます。
理容院の常連たちが「金子ゼミ」に騙されて取り調べ中だという情報を手に入れた久慈は、彼らを助けるために取り調べ室に乗り込みました。
これが謎のつなぎの男の正体でした。
久慈は、常連の社長に頼みこんで、救い出した常連客をかくまう部屋までも用意します。
自らの正義感に振り回される久慈でしたが、一つのルールは守っていました。
それは、「助けるのは常連とその家族だけ。」
しかし、次第に事態は大ごとになり、警察に追われるようになった久慈は焦りを感じるようになりました。
最後の戦い
【結】火星に住むつもりかい? のあらすじ④
そこで、警察は謎の男をおびき寄せる計画をたてました。
まず、佐藤誠人という少年を強制連行します。
佐藤は以前、幼馴染の少年にいじめられていたところをつなぎの男に助けられたという過去があり、彼を痛めつければ謎の男がやってくるだろうと警察は踏んだのです。
それは正解でした。
佐藤は久慈の常連客だったのです。
町中に危険人物の佐藤を捕まえるという情報を流したところ、予想通り謎の男はやってきます。
しかし、男の捕獲は失敗しました。
警察は、謎の男もろとも警察車両を爆破しようと画策していましたが、男には逃げられ、真壁はその爆発にまきこまれ死亡します。
その後、警察は佐藤を公開処刑しようとします。
市民が集まる中で、佐藤を含む数人の危険人物を処刑しようとしていると、黒ずくめのつなぎの男がやってきました。
それも、何人も。
これは、久慈が常連の社長に依頼したサクラでした。
平和警察はサクラたちも処刑しようとします。
責任を感じた久慈は観念して自分こそがつなぎの男だと名乗り出ます。
目当ての久慈を見つけた平和警察は、久慈をギロチンにかけようとしますが、ギロチンは磁石によって作動しません。
警察がギロチンを調べているすきに、久慈はギロチンに仕組まれていた鉄砲を取り出して発砲し、逃げます。
これは、最近理容院にやってきた男の入れ知恵でした。
この男こそが、真壁でした。
真壁は自分の死を偽装していたのです。
久慈が発砲した相手は、薬師寺警視長でした。
薬師寺はとっさに部下を引き寄せ、盾にします。
この行動が非難された薬師寺は、失速していきます。
薬師寺が力を持たなくなった平和警察は、少しずつ威力を失っていき、少しずつ仙台の街は平和を取り戻していきました。
伊坂幸太郎らしさに溢れた一冊でした。
社会風刺とユーモア、そしてたくさんの要因が重なりあうストーリー展開。
他の作品と比べるとダークな部分が多い作品ではありますが、読みやすかったです。
登場人物が多いので、少し複雑なので、しっかり読み込む必要があるかとは思います。
ですが、メッセージ性も強いのでおすすめな一冊です。
火星に住むつもりかい? を読んだ読書感想
主人公は仕事に女に金にと強欲で、あまり好きになれるタイプではありませんが、ドタバタと次々に発生する問題にハラハラさせられる一冊です。
主人公が成敗されていく様はとても爽快なのですが、キーパーソンである女占い師の長峰がとても不気味で、最後まで良い人なのか悪い人なのかわかりませんでした。
また、人間の二面性もうまく描いていて、陰と陽の使い方が絶妙です。
ページ数は多いですが気楽に読めるのでおすすめです。
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