【ネタバレ有り】永遠の出口 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:森絵都 2003年3月に集英社から出版
永遠の出口の主要登場人物
岸本紀子(きしもと のりこ)
本作の主人公。十七歳になり、初めての彼氏ができる。ごく平凡な女子高生で、目立たたない存在として過ごしてきたが、あることをきっかけに、保田健一に気に入られ付き合うようになる。
保田健一(やすだ けんいち)
紀子と同じ高校に通う冴えない男子。同じクラスの女子から、紀子が好意を寄せていると誤った情報を信じ、紀子をデートに誘う。そしてカップルに。
安田敦史(やすだ あつし)
紀子が片思いしていた男子。長身のイケメンでサッカー部のエースのモテモテ男子。女癖が悪くとっかえひっかえしている。
金井(かない)
紀子と同じ美術部の女子。紀子の想い人を勘違いし、勝手に話をすすめる。
永遠の出口 の簡単なあらすじ
岸本紀子は平凡な十七歳。恋に憧れはあるものの、彼氏はできたことはなく、現在学年一のモテモテ男子・安田敦史に想いを寄せています。しかし、目立たない存在の紀子の恋が叶う見込みはありません。そんなある日、同じ美術部の金井が、恋のキューピッドを買って出ます。ヤスダ君のクラスメイトだという金井さんが紹介してきたのは、片思いしている安田敦史ではなく、冴えない男子の保田健一でした。ヤスダ違いに茫然とする紀子でしたが、当の保田くんはまんざらでもない様子。次第に紀子も保田くんのことが気になりはじめ……。
永遠の出口 の起承転結
【起】永遠の出口 のあらすじ①
十七歳の岸本紀子は、どこにでもいる平凡な女子高生です。
成績普通、美人でもなく、才能がわるわけでもない紀子は、学校でも目立たない存在です。
それでも仲良しの友達はいるし、本人はそこそこ満足する学校生活を送っていました。
美術の授業中に、教師から褒められたことをきっかけに美術部に入部した紀子は、そこで、違うクラスの金井さんという女子から話しかけれます。
うちのクラスのヤスダが好きなの?と聞かれ、叶う見込みのない片思いを指摘され、困惑しながら『好きっていうか、気になっている程度で、顔がタイプなだけで……』と、かろうじて答えます。
紀子の返答に金井さんは、自分はヤスダと同じクラスだからチャンスを作ってあげると言ってそそくさと自分の席へ戻っていきました。
後日、昼休みに教室でお弁当を食べている紀子たちを、ドアから男女数名が様子をうかがってきます。
横目でちらちらこちらの様子を見ては、いやな笑い声あげる集団に怪訝な顔をする紀子。
そこへ金井さんが近寄ってきます。
そして不審がる紀子に、『岸本さんのこと、ヤスダがかわいいって』と告げてきます。
状況が呑み込めない紀子。
紀子が片思いしているのは、長身イケメンでサッカー部のエース・安田敦史で、安田の姿はどこにもなかったからです。
金井さんが言っているヤスダは、背はやや低めで平凡な顔立ち、バレー部の補欠の保田健一だったのです。
【承】永遠の出口 のあらすじ②
金井さんの勘違いは紀子を不要に傷つけました。
ヤスダと言ったら、誰しもが学年一モテる安田敦史を思い浮かべるであろうところを、何故、地味で目立たない保田健一と人違いしたのか。
それはきっと、地味で冴えない自分が釣り合いを取れるのは、安田ではなく保田だということを無意識のうちに測っていたのだろうということ。
安田には相手にされないだろうけど、保田とは付き合える可能性があるということ。
紀子の片思いを知っている仲間も、この際保田で手を打った方がいいとまで言ってきます。
憮然とする紀子でしたが、勘違いした保田はその後紀子の姿を目で追うようになり、紀子をデートに誘います。
紀子は嫌がりながらも、初めて異性から可愛いと言われたことに気分を良くし、二人は結局付き合うことになります。
【転】永遠の出口 のあらすじ③
慣れないデートは息が詰まり、会話もまったく盛り上がりませんでした。
前日は緊張でよく寝つけず、当日はトイレを我慢し、ご飯は食べやすいメニューを探すのに必死で、味も覚えていません。
それでも家に着くとすぐに保田くんのことが恋しくなり、早く会いたいと思いました。
週一回のデートに毎日の電話、これは恋を長続きさせるために必要なことと、紀子は頑なに死守しました。
はじめのうちは上手くいっていた付き合いでしたが、次第に雲行きが怪しくなっていきます。
紀子の執着が激しくなればなるほど、反対に保田くんは紀子のことが億劫になっていきます。
保田くんは、付き合ってからしばらくすると、予備校に通い始めます。
バレー部と予備校で、電話やデートをする時間が次第に減っていきました。
紀子の電話に出ることもなくなり、電話口では保田くんの母親がすまなさそうに謝るばかりになります。
当人と話がしたい紀子は、保田くんの教室まで出向き、何故折り返し電話をくれないのか問いただします。
もごもごと事情を説明する保田くん。
一年半後には大学受験も控えているし、バレー部も忙しいし、猫も病気だし、毎日電話するのもデートもできないと告げます。
『中途半端に付き合うのは岸本に悪いから……』と暗に別れを切り出した保田くんでしたが、前のめりに勘違いした紀子は、話し合いの後、保田くんに長い手紙を書きます。
【結】永遠の出口 のあらすじ④
手紙の内容は、受験勉強を応援しつつ、これからは電話は二日に一回、デートは月三回に減らして、負担を減らしましょうという紀子なりの解決案でした。
保田くんからの返信はなく、それでも紀子は手紙を書き続けました。
そして、ついに決定的な出来事が起こります。
その日はクリスマスで、街も人も賑わっている時期でした。
しかし紀子は、大好きな保田くんとは一緒におらず、家で家族とその日を迎えていました。
頭の中は保田くんのことでいっぱいで、何をするにもどこにいても浮かんできます。
保田くんが変わってしまったことを嘆き、いつかはきっと元に戻ってくれると淡い期待をしてテレビを見ていた時、急にある閃きが浮かびます。
保田くんは何か勘違いしているのではないかと。
二人の間に誤解があって、こんな状況になっているのではないかと思うと、いてもたってもいられず、紀子は保田くんの通う予備校まで駆け付けます。
寒い中待ち続け、やっと保田くんが現れた時、勘違いしていたのは自分だと気づきます。
保田くんの隣には赤いダッフルコートを着た女の子が寄り添っていたのです。
寒空の中、久しぶりに保田くんと会話をした紀子。
相手の女の子は、同じ高校の後輩で、予備校も同じで親しくなったと言います。
電話やデートは何回しているのかと探りを入れる紀子に、保田くんは『そんなのって、大事なこと?』と答えます。
紀子がもうわかったと声をかけると、保田くんは安堵の表情を浮かべます。
そして、紀子もまた解放感に似た感覚に襲われていました。
聖夜の凍える夜、保田くんを待っているであろう赤いダッフルコートを着た女の子のことを紀子はぼんやり考えていました。
永遠の出口 を読んだ読書感想
紀子の小学三年生からはじまり、贔屓する担任教師にクラス一致団結して反抗する小学生高学年、荒れた中学時代、両親の熟年離婚の危機、初めてのアルバイト、初めての彼氏、高校卒業、そしてエピローグで簡単に語られるその後の人生。
『永遠の出口』は岸本紀子のその時々での事件や心理を緻密に丹念な描写で綴られています。
あまりに鮮烈なので、当時の自分と重ね合わせて読んでいて苦しくなるほどですが、読み終えた後の懐かしいような、ちょっと涙がこみあげてきてしまうような、昔のアルバムを見ているような感覚になる一冊です。
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