【ネタバレ有り】オロロ畑でつかまえて のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:荻原浩 1998年1月に集英社から出版
オロロ畑でつかまえての主要登場人物
米田慎一(よねだしんいち)
主人公。牛穴村青年会の会長。実家は温泉旅館「米田荘」
富山悟(とやまさとる)
慎一の幼馴染み。農業に携わる。
石井(いしい)
ユニバーサル広告社代表。
脇坂涼子(わきさかりょうこ)
報道番組のリポーター。
水沢良介(みずさわりょうすけ)
報道番組のキャスター。涼子の不倫相手。
オロロ畑でつかまえて の簡単なあらすじ
牛穴村は東北新幹線とバスを乗り継いで1日以上かかる過疎地域で、これと言って観光スポットも名産品もありません。青年会の米田慎一は都内の小さな広告代理店と結託して、村おこしキャンペーンを始めます。突如として恐竜ブームに湧き上がる村には都会から大勢の観光客が押し寄せてきますが、加熱するマスコミの取材によって思わぬ事態へと発展していくのでした。
オロロ畑でつかまえて の起承転結
【起】オロロ畑でつかまえて のあらすじ①
牛穴村は奥羽山脈に連なる大牛山の麓にひっそりと佇んでいる、 日本列島最後の秘境とも言われるほどの寂れた村でした。
若者たちは生まれ育った村を早々と出て都会に行ってしまうために、牛穴村青年会のメンバーは現在では8人しか残っていません。
会長の米田慎一は同い年の37歳で兄弟のように育った、富山悟と一緒に東北新幹線に乗って東京へと向かいます。
目的は広告会社とタイアップして牛穴のイメージアップキャンペーンを展開することでしたが、大手の代理店は遥々山奥からやって来たふたりをまるで相手にしてくれません。
ようやく話を聞いてくれたのは、 秋葉原の中央通りからビジネスホテルへと続く裏道にオフィスを構える「ユニバーサル広告社」です。
社長の石井は慎一が青年会からかき集めた500万円という予算を聞いた途端に、俄にやる気を見せ始めました。
特産品も歴史的建造物もない牛穴の村おこしのためには、インチキをしてでも人を集めなければなりません。
【承】オロロ畑でつかまえて のあらすじ②
石井は知り合いの写真スタジオを借り切って、全長10メートルほどの恐竜のハリボテを作り始めました。
ハリボテの底には穴が空いていて、ウェットスーツとボンベを装着したダイバーが中から操縦することが出来ます。
偽物の恐竜を浮かべる場所は、牛穴村のはずれにある湖面積10平方キロメートルほどの湖です。
カメラマンとして悟が撮影した写真は、たちまちスポーツ新聞やワイドナショーで「ウッシー」として取り上げられて大騒ぎになりました。
慎一が親から受け継いで細々と経営してきた旅館には、引っ切り無しに宿泊予約の電話がかかってきます。
遂には硬派な報道番組として知られている、「ニュースーX」のリポーター・脇坂涼子まで取材に乗り出す始末です。
ジャーナリスト志望の涼子は恐竜騒ぎの取材に気が進まないながらも、現地では第一発見者の悟とすっかり打ち解けていました。
悟がカメラを使い慣れていないことに気が付いた涼子は、ウッシーの存在に疑問を抱いていきます。
【転】オロロ畑でつかまえて のあらすじ③
ニュースーXではウッシーに関する特別番組が組まれて、生物学者から超常現象研究家までが生出演で持論を展開していました。
悟も「農業従事者・カメラマン」という肩書きで、テレビ局のスタジオまで招かれることになります。
番組の司会進行役を務めるのはメインキャスターの水沢良介でしたが、彼と番組で共演している涼子が不倫関係にあることは誰も知りません。
社会派ジャーナリストを自称する水沢は、一連のウッシー騒動を小馬鹿にした様子です。
挙句の果てには村ぐるみのいたずらとして厳しく追求し始めたために、悟は言葉を返すことが出来ません。
悟に助け舟を出したのは涼子で、「富山さんは嘘をつく人ではありません。
どこかの誰かと違って」と水沢を睨みつけました。
全国ネットで涼子との不倫をすっぱ抜かれた水沢は袋叩きに遭い、涼子は「健康上の理由」として無期限休業に入ります。
ウッシーの胴体の中に潜り込む慎一の姿が週刊誌に盗撮されたのは、それから間もなくのことです。
【結】オロロ畑でつかまえて のあらすじ④
米田荘には報道陣が押し寄せていましたが、慎一は悟と共には警察で取り調べを受けているために中からは誰も出てきません。
拘留期間中もふたりは全てを自分たちの責任と主張して、青年会もユニバーサル広告の名前も出しません。
処分保留のまま牛穴村まで帰されることになり、後日正式に不起訴処分が決まります。
青年会の会長を辞職した慎一は旅館を切り盛りしながら、妻と一緒に「オロロ豆」を栽培して地元の名産品として売り込む毎日です。
華々しいキャリアを捨てて悟と電撃結婚した涼子は、夫と畑仕事に励む姿が時たまファッション雑誌に掲載されていました。
ウッシーブームが世間からすっかり忘れさられて半年ほどたったある日のこと、石井は事務所で悟から送られてきた牛穴村の写真を眺めています。
写真の隅っこに写っているのは、300年以上前に絶滅したはずのドードー鳥です。
懲りない石井はドードー鳥を捕まえてひと儲けするために、牛穴村へと向かうのでした。
オロロ畑でつかまえて を読んだ読書感想
過疎化が著しい田舎町・牛穴村を奇想天外な方法で盛り上げていく、地元の青年団に所属する米田慎一や富山悟の奮闘ぶりが楽しげでした。
都会から招かれた怪しげな広告代理店の社長・石井のキャラクターが、妙にリアリティー溢れているのは著者がコピーライターを経て作家デビューしたからなのかもしれません。
観光客を呼び寄せるために、ネス湖の怪獣ネッシーならぬ牛穴湖のウッシーを捏造してしまう図々しさには呆れています。
熱しやすく飽きっぽい、現代のマスコミにおける報道姿勢についても言及されていて考えさせられるストーリーでした。
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