【ネタバレ有り】ブラック・ティー のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:山本文緒 1995年3月に角川書店から出版
ブラック・ティーの主要登場人物
薫(かおる)
私立大学経済学部を卒業し、中堅の証券会社に就職。三十歳を迎える今も勤め続けている。同期の一人と七年間不倫していた。
澄子(すみこ)
薫と幼馴染。女子大英文科を卒業し中学の英語教諭になるも、同じ学校の教員とすぐさま結婚し退職。一人息子の翔太の世話に忙しい毎日を送る。
翔太(しょうた)
澄子の五歳になる息子。
ブラック・ティー の簡単なあらすじ
薫は大学を卒業して以来、中堅の証券会社に勤める独身OLでもうすぐ三十歳を迎えます。一般職で入社したのでこの先出世もなく、日々店頭業務に追われています。薫は七年不倫をしていましたが、その恋愛も相手の二年間の海外研修を理由に三か月前に幕を閉じたのでした。毎晩泣きながら眠りにつく薫は、ある日、幼馴染の澄子の家に遊びにいった時に息子の翔太におたふく風邪をうつされます。薫はある計画を思いつき、捨てた不倫相手に接近します。
ブラック・ティー の起承転結
【起】ブラック・ティー のあらすじ①
薫は大学を卒業してから今日まで中堅の証券会社に勤める独身OLで、もうすぐ三十歳を迎えます。
一般職で入社したのでこの先出世もなく、日々店頭業務に追われています。
薫は七年不倫をしていましたが、その恋愛も相手の二年間の海外研修を理由に三か月前に幕を閉じたばかりです。
別れを切り出されてから毎晩泣いて夜を明かしているので、鼻声で瞼は腫れぼったく、まるで夏風邪をひいているようです。
今日は、幼馴染の澄子に家に遊びに来ていますが、鼻をかんでばかりいます。
そんな薫を澄子は心配していますが、本当の理由を薫は隠しています。
長年友人の澄子相手にも、薫は不倫をひた隠しにしていました。
恋愛体質で昔から恋愛の話ばかりしていた薫が、就職してから急にその手の話を避けるようになったことに澄子は気づいていましたが、聞いてもはぐらかす薫に追及することはせず今日に至っています。
澄子は、大学を卒業してから中学の英語教諭になりましたが、すぐに同じ学校の教員と結婚。
現在は主婦をしながら五歳になる息子の翔太を育てています。
【承】ブラック・ティー のあらすじ②
そこに息子の翔太が帰宅します。
近所の友達と遊んでいたのですが、友達と口喧嘩になり相手の母親に怒られたと澄子に話します。
それを聞いて慌てて澄子は相手の家に詫びに出掛けて行きます。
部屋に残された薫は翔太と二人きりに。
子供は苦手で緊張する薫ですが、翔太は人懐っこく冷蔵庫にあるアイスをせがんできます。
翔太がアイスを食べている姿を横目に、薫は不倫相手のことを思い出します。
彼は同期入社で、出会ったときすでに家庭を持っていました。
大学を卒業したばがりで遊びたい盛りの年頃でしたが、学生結婚した彼は欲求不満が溜まっていました。
四苦八苦仕事を覚えながら時間を共に過ごすうちに二人は親密になっていき、軽い気持ちで寝てしまいました。
その時の衝撃を薫は今でも生々しく覚えています。
体の相性の良さに茫然とし、冷静だったはずの感情が突っ走ってしまいます。
忙しかった仕事はバブル崩壊を機に徐々に落ち着いていき、定時で帰ることが推奨されるようになりました。
時間ができた二人は益々不倫にのめりこんでいくようになります。
【転】ブラック・ティー のあらすじ③
七年という長い年月、薫は不倫に溺れていました。
逢瀬を楽しむ二人は多いときは週四日時間をともに過ごします。
しかし、そんな関係は二年ほど前から徐々に変化していきます。
まずデートの回数がだんだんと減っていきました。
しかし薫は店頭業務の自分と営業の彼は忙しさに違いがあるのだと思い、気に留めていませんでした。
しかし、彼から証券アナリストの資格を取ったと聞いた時は驚きを隠せませんでした。
新しい酒場とイタリアのスーツと自分とのセックスにしか興味がない、出世など望んでいないと豪語していた彼は、薫とのデートを減らして、英会話スクールに通うようになり、ついに二年間の海外研修が決まります。
海外研修が決まった矢先、彼は薫に別れを切り出します。
彼の他に恋人を作らず、彼との時間を捻出する為仕事も中途半端にしかやってこなかった自分を待っていた寂しい結末。
脱力する薫に彼は決定的な一言を放ちます。
『女房が二人目を欲しがってるんだよな』と。
この言葉に薫は正気を失います。
【結】ブラック・ティー のあらすじ④
彼との思い出を回想し思わず涙ぐむ薫に、翔太はそっと食べていたアイスを差し出します。
子供の食べかけなど普段なら絶対口にしない薫ですが、この時ばかりは優しさが沁みて残ったアイスを平らげました。
幼稚園でも風邪が流行っていると説明する翔太。
大人がかかるのは珍しいのだと薫に聞かせます。
そこへ澄子が戻ってきます。
やはり体調が悪いと言って澄子の家をあとにした薫は、後日仕事中に熱で倒れてしまいます。
熱にうなされながら、薫の心の中である計画が閃きます。
十月になり、薫の誕生日に澄子から花が届きました。
お礼の電話をかける薫。
澄子から夏に翔太がおたふく風邪にかかって大変だったと報告を受けます。
心の中で薫は澄子に語りかけます。
翔太からアイスをもらって食べた時に自分もおたふく風邪にかかるかもしれないとわかっていたこと。
おたふく風邪だとわかっていながら彼に最後だからと言って抱いてもらったこと。
幼少期におたふく風邪を済ませていなかった彼は、アメリカに着いて早々発症し、おたふく風邪が原因で精子が作れなくなってしまったらしいこと。
電話口で突然黙り込んだ薫に、澄子は呼びかけ続けます。
ブラック・ティー を読んだ読書感想
『ブラック・ティー』という10編の短編が収録されているうちの1篇『夏風邪』をご紹介しました。
『ブラック・ティー』は罪に手を染めながら、いつか自分に返ってくるのではないかという闇を抱えながら生きる主人公のお話です。
『夏風邪』の薫も、いつか天罰がくだるかもしれないと思いながら、長年不倫関係にあった男性に復讐します。
直接的に薬品を混入するわけでも刃物で傷つけるでもなく、間接的に、でも大ダメージを与える方法で。
そこまで別れ際のセリフが薫を追い詰めたのだと不倫男に理解して欲しいですが、きっと伝わらないんでしょうね……。
おたふく風邪の発端が純真無垢の五歳の少年からもたらされるところがこのお話のみそのように思います。
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