【ネタバレ有り】よるのばけもの のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:住野よる 2016年12月に双葉社から出版
よるのばけものの主要登場人物
安達(あだち)
主人公。中学2年生。夜になると変身する。
矢野さつき(やのさつき)
安達のクラスメート。いじめられっ子。
緑川双葉(みどりかわふたば)
安達のクラスメート。大人しくて読書家。
中川ゆりこ(なかがわゆりこ)
安達のクラスメート。女子グループのリーダー的な存在。
元田(もとだ)
安達の友人。野球部員。
よるのばけもの の簡単なあらすじ
中学2年生の安達は、陽が落ちると化け物に変身してします。夜遅くに忘れ物を取りに帰りに学校にやってきた安達が見たのは、クラスでイジメられている女子生徒の矢野さつきです。ひとりで「夜休み」を過ごしているさつきと変わり果てた姿で打ち解けていく安達でしたが、彼女に対する昼間の嫌がらせは一向に止む気配が訪れないのでした。
よるのばけもの の起承転結
【起】よるのばけもの のあらすじ①
安達の身体からは深夜遅くになると黒い粒が流れ出していき、8つの目玉と6つの足を持った獣のように変身します。
2階の自室から抜け出すと、海沿いを走ったり人気のない公園で時間を潰すのが日課です。
その日はたまたま宿題を置きっぱなしにしてしまった事に気が付いたために、通っている中学校へ向かいました。
安達のクラスは3年2組で、5階建ての校舎の3階にあります。
屋上からいつもの教室へと侵入した安達が見たのは、教壇に手をついていて佇んでいた矢野さつきです。
変わり果て安達の姿を見ても、彼女は怯えた様子を見せることはありません。
思わず驚いて悲鳴をあげてしまったのは安達の方で、その声を聞いてさつきはあっさりと化け物の正体を見破ってしまいました。
毎晩のようにこの場所へ遊びに来ているというさつきは、チャイムが鳴った途端に「夜休み」を終えて帰っていきます。
安達も東の空が明るくなる頃には人間の姿に戻るために、早めに引き上げなければなりません。
【承】よるのばけもの のあらすじ②
翌朝さつきは何食わぬ顔で登校してきますが、彼女の「おはよ、う」に対してクラスの皆はいつものように誰も返事を返しません。
さつきがクラスの皆から無視をされるようになったのは、ある日突然に自分の席で静かに読書をしていた緑川双葉から本を取り上げて中庭に投げ捨ててしまった時からでした。
行動がスローテンポで、空気が読めなくて、声が無駄に大きくて、独特なアクセントの喋り方が独特で。
それまで一部の女子生徒から疎まれていたさつきは、その日を境にして中川ゆりこを中心としたグループから陰湿なイジメを受けるようになります。
反撃するでもなく、教師や親に助けを求めるでもなく、登校拒否を敢行する訳でもなく。
さつきは当たり前のように毎朝学校にやってきて、ニコニコと笑っているばかりです。
夜休みには化け物の姿でさつきと心通わせていく安達でしたが、日中は言葉を交わすこともなく彼女に対する嫌がらせ行為も見て見ぬふりをしていました。
【転】よるのばけもの のあらすじ③
いつの間にやら広がっていたのは、真夜中の学校に怪獣が出現するという噂話です。
遂には野球部の中でも粗暴なことで有名な元田が取り巻きをふたり引き連れて校舎に忍び込むと、昼休みに宣言していました。
こんな日に限って、安達の体には夜になってもいつもの変化が訪れません。
ようやく黒い粒に包まれてきた安達は、家を飛び出して学校へ急ぎます。
安達が自分の秘密がばれてしまうこと以上に恐れているのは、夜の教室でさつきと元田たちが鉢合わせをしてトラブルが発生することです。
さつきを掃除道具入れに押し込んだ安達は、金属バットで武装してきた3人を迎え撃ちました。
体から湧き出る黒い粒子を集めて、「シャドー」というもう1匹の分身を作り出して威嚇します。
仕上は叫び声を上げての火炎放射です。
ようやく元田の一向を撃退した安達は、いつも笑っているさつきにその理由を問いただしました。
怖いと無理に笑ってしまうという彼女の素顔を、この時初めて安達は知ります。
【結】よるのばけもの のあらすじ④
元田たちとのいざこざ以来、安達は夜の中学校には近づかないように注意していました。
たまにはシャドーをコッソリと飛ばして偵察させてみますが、安達が来なくなった後も相変わらずさつきはひとりで夜休みを過ごしているようです。
自分の身体が化け物になるようになって以来、安達は目を閉じることもなく眼を覚ますこともありません。
人間に戻るのは陽が昇りかける午前4時から5時過ぎになるために、近頃では海を超えた先の島々まで足を運んでいます。
この不可思議な現象がいつまで続くのか不安になった安達は、遂にある日の朝行動を起こします。
「おはよ、う」といつものおかしなイントネーションで挨拶をしてきたさつきに対して、安達だけが「おはよう」と返事をします。
教室中が静まり返ってクラス全員から冷たい眼差しを浴びせかけられましたが、安達は気にすることはありません。
この日の夜に、安達は久しぶりに人間の姿のままでぐっすりと眠ることができたのでした。
よるのばけもの を読んだ読書感想
ある日突然に身体が未知の生物へと変化を遂げながらも、何処か客観的に自分自身の姿を観察している安達は異色の主人公です。
グロテスクな外見で縦横無尽に駆け回りながらも、矢野さつきとごく自然に会話を交わしてしまうシーンもユーモアたっぷりでした。
真夜中の校舎で繰り広げられていくドラマティックなファンタジーと、昼の教室を舞台にした静かな学園ドラマが交互に映し出されていく展開にも引き込まれていきました。
さつきをターゲットにしたいじめに対して終始一貫して傍観者に徹していた安達が、ラストで踏み出していく小さな1歩も感動的です。
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