「スロウハイツの神様」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|辻村深月

「スロウハイツの神様」

【ネタバレ有り】スロウハイツの神様 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:辻村深月 2007年1月に講談社から出版

スロウハイツの神様の主要登場人物

赤羽環(あかばね たまき)
大学生の時に自身の母親についての過激な内容の脚本で賞を受賞し、波にのっている若手女性脚本家。スロウハイツのオーナー。

千代田公輝(ちよだ こうき)
高校生でデビューして以来、中高生を中心に絶大な人気がある若手小説家。10年前に熱狂的なファンが作品を模範した傷害事件を起こし、数年休筆していた。

狩野壮太(かのう そうた)
スロウハイツの住人で、児童漫画家を志している。実は「幹永舞」名で活躍しているが、スロウハイツの住人には隠している。

黒木智志(くろき さとし)
千代田公輝を世に送り出した敏腕編集者。

加々美莉々亜(かがみ りりあ)
長らく空いていた部屋に突如住むことになった自称・小説家のロリータ美少女。正体は、黒木に送り込まれた千代田公輝の作風をパクる『鼓動チカラ』。アイデアを次々に盗む。

スロウハイツの神様 の簡単なあらすじ

クリエーターを目指す若者達が共同生活を送る家・スロウハイツ。住人は、オーナーで駆け出し脚本家の赤羽環と、中高生から絶大な支持を受ける若手小説家の千代田公輝、児童漫画家を志す狩野壮太、映画監督を志す長野正義、画家を夢見る森永すみれ、公輝をデビュー当初から支えてきた編集者の黒木智志。それぞれが夢を追いかけながら、和気あいあいとした共同生活を送っていました。ところが自称・小説家の加々美莉々亜の入居をきっかけに、スロウハイツ内に不穏な空気が流れ始めます。

スロウハイツの神様 の起承転結

【起】スロウハイツの神様 のあらすじ①

スロウハイツの住人たち

クリエーターを目指す若者達が共同生活を送る家・スロウハイツ。

住人は、オーナーで駆け出し脚本家の赤羽環と、中高生から絶大な支持を受ける若手小説家の千代田公輝、児童漫画家を志す狩野壮太、映画監督を志す長野正義、正義の彼女で画家を夢見る森永すみれ、公輝をデビュー当初から支えてきた編集者の黒木智志。

それぞれが夢を追いかけながら、和気あいあいとした共同生活を送っています。

環は長年公輝のファンですが、同居前の授賞式で、初対面の公輝から『お久しぶりです』と言われたことを現在までも根に持っています。

公輝は10年前に熱狂的なファンが起こした作品を模範した傷害事件が原因で数年間休筆していましたが、「天使ちゃん」(現時点では詳細不明)のおかげで執筆活動を再開し、敏腕編集者の黒木のサポートもあり復活。

「チヨダブランド」で人気を不動のものとしました。

児童漫画家を目指し、出版社に持ち込みをしている狩野や、映画監督を志し配給会社で働く正義、正義の彼女で画家を夢見つつ映画館のバイトで生計を立てているすみれは、同居人の公輝や環に刺激を受け、夢に向かって日々奮闘しているのでした。

【承】スロウハイツの神様 のあらすじ②

環と公輝

そもそもスロウハイツとは、環が祖父から譲り受けた3階建ての建物で、環がオーナーとなり入居者の面接をしています。

大学生の時に自身の母親についての過激な内容の脚本でデビューした環にとって、作品を世に出すことは人生において重要なことであり、スロウハイツ入居者選考する際でもキーポイントにもなっています。

環は、幼い頃に母親の詐欺が原因で親戚の家に預けられ、家にも学校にも居場所のない孤独な学生生活を送りました。

唯一の救いが千代田公輝の小説でしたが、公輝の熱狂的なファンによる作品を模範した傷害事件が起こり、公輝は世論のバッシングにあい休筆に追い込まれます。

環が公輝擁護の投書をしたことをきっかけに、公輝にとって環は「天使ちゃん」になり、事件以降、どん底にいた公輝のたった一つの希望となります。

自分の小説を楽しそうに読む環の姿に励まされ、一念発起して執筆活動を再開。

しかしそのことは環本人はもちろん、スロウハイツの住人や担当編集者の黒木でさえ知りません。

【転】スロウハイツの神様 のあらすじ③

侵入者

スロウハイツの均衡は、長らく空いていた部屋に突如自称・小説家の加々美莉々亜が入居することになったことで崩れます。

千代田公輝のファンを公言し、見た目もまるで公輝の作品に出てくる美少女キャラクターのような彼女は、公輝の部屋に入り浸るようになります。

莉々亜は環に挑戦的につっかかり、環が嵌めている指輪(公輝の作品で出てくる指輪に似ている)をなじったり、「ハイツオブオズ」のケーキがコンビニに売っていると発言した環を嘘つき呼ばわりして空気を乱します。

また莉々亜の入居後、スロウハイツに千代田公輝と並ぶ人気作家の「幹永舞」の原稿が届き、住人の中に「幹永舞」がいることが明らかになります。

しかし名乗り出る者はなく、それまで信頼し合っていた同居生活に暗雲が立ち込めます。

彼氏彼女だった正義とすみれも関係を解消することになり、莉々亜の出現でスロウハイツに居づらくなった環は外に彼氏を作り、スロウハイツに帰らなくなっていきます。

ちょうどその頃から公輝の作風を真似た「鼓動チカラ」の連載が始まり、公輝のアイデアが次々に盗まれるようになります。

【結】スロウハイツの神様 のあらすじ④

スロウハイツの住人たち・その後

莉々亜の正体は、黒木が送り込んだ偽公輝の「鼓動チカラ」でした。

莉々亜が公輝の誌面に載る前の原稿を読み情報を盗んでいると知った環は激怒し、黒幕の黒木に詰め寄ります。

黒木は、話題になってこそ作品は意味があるとし、偽物の「鼓動チカラ」がいてこそ、本家の千代田公輝が輝くと主張します。

公輝ファンの環には黒木と莉々亜のやり方は到底許せるものではなく、自分が「鼓動チカラ」になり原稿を書くことを申し出ます。

自身の脚本に加え、「鼓動チカラ」として原稿を書くことになった環ですが、過労がたたり倒れてしまいます。

いたたまれなくなった莉々亜はスロウハイツを出、環のピンチを知ったスロウハイツの住人は、環に代わり「鼓動チカラ」の最終回の原稿を書き上げます。

その中には本家本元の公輝の姿もありました。

莉々亜が去り、狩野の「幹永舞」自白もあり、ぎくしゃくしていた関係が修復されていきます。

環は彼氏と別れますが、公輝は最後まで環に「天使ちゃん」は環だったのだと伝えることはありません。

「ハイツオブオズ」のケーキを環に食べさせてあげたいがために、クリスマスにサンタクロースの変装をしてコンビニ前でプレゼントした過去も一人胸の中にしまっています。

数年後、スロウハイツの住人達は同居生活を解消し、それぞれの人生を歩み始めるのでした。

スロウハイツの神様 を読んだ読書感想

辻村深月さんの作品で初めて読んだのが『スロウハイツの神様』でした。

読み始めは正直、『ジャスティス(正義)と書いてまさよし』等のライトノベルのようなセリフに抵抗もありましたが、上巻を読み終わる頃には物語に引き込まれ、下巻はあっという間に読んでしまいました。

途中のミスリードや、莉々亜が登場してからの不穏な空気、結局最後まで明かされない公輝の環に対する想いにドキドキしっぱなしで、あちこちにちりばめられた伏線が最後綺麗に回収されるのが読んでいて気持ちが良かったです。

初対面のはずの公輝が環に発した『お久しぶりです』というセリフに隠された秘密や、莉々亜が環を嘘つきと罵る発端となった「ハウスオブオズ」のケーキにまつわる裏エピソード等、結末を知ったうえで読み返すとより味わい深いです。

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