【ネタバレ有り】ZOO のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:乙一 2003年6月に集英社から出版
ZOOの主要登場人物
俺(おれ)
本作の主人公。彼女を殺してしまった事実から逃れ、犯人を捜すという演技をしている。
彼女(かのじょ)
主人公の彼女。主人公に殺されてしまい、腐敗していく姿を写真に撮られ続ける。
ガソリンスタンドの店員(がそりんすたんどのてんいん)
主人公の演技につきあう。
()
()
ZOO の簡単なあらすじ
今朝もまた、人間の死体の写真が郵便受けに入っていた。この死体というのが主人公の彼女のものだった。死体は腐敗しており、生前の面影は全くなかった。しかし、この写真を撮影したのも彼女を殺したのも主人公自身であった。彼は彼女を殺してしまったという現実から逃避し、彼女を亡くしてしまった悲劇の彼氏を演じていたのである。
ZOO の起承転結
【起】ZOO のあらすじ①
今朝もまた、写真が郵便受けに入っていました。
もう百日以上が続いています。
写真には人間の死体が写っていました。
かつての彼の恋人だった女です。
どこかの地面に掘られた穴へ寝かされています。
死体の彼女の胸から上を撮影しています。
しかしもう元の姿ではありません。
腐った彼女の顔に、生前の面影はありませんでした。
彼は写真を持って自分の部屋に戻り、スキャナーでパソコンに取り込みました。
これまで投函されていた彼女の写真は、すべてパソコン内に保存してあります。
順番に番号をふって、いまや大量の画像データとして彼女は存在していたのです。
画像データとしてパソコン内に取り込んだ後、郵便受けで見つけた彼女の死体の写真を、彼は引き出しの中にしまいこみました。
有名なムービー再生ソフトを立ち上げて再生すると、彼女の腐敗していく過程がわかります。
しかし、彼は自分で自分のことを知らないふりをしているだけなのでした。
そうして、彼女を殺した犯人をつかまえると意気込んでいるのです。
決して彼にはつかまえることができません。
なぜなら彼が殺したからです。
【承】ZOO のあらすじ②
彼女を失って、ほとんど何も口にしない生活が続きました。
彼は彼女を心から愛していました。
自分がこの手で彼女を殺害したなどとは考えたくなかったのです。
だから、彼はその現実から逃避することにしたのです。
どこかに彼ではない殺人犯が存在し、そいつが彼女を殺したことにしてしまえば、彼は気が楽になりました。
自分が彼女を殺したのだという自責の念から解放されるのです。
わからないふりをして、犯人に本心から憤り、殺意を抱くという自分を演じるのです。
彼女の捜索を警察が打ち切ったのは、彼女がいなくなって一ヵ月後の、十一月に入ってすぐのことでした。
それから彼は、自力で犯人を捜査するために会社をやめたのです。
それは犯人に殺された彼女の恋人という役を演じているにすぎません。
犯人に憤り、敵をうつために立ち上がった悲劇の主人公という役柄です。
彼は早く自首して告白しろと暗示をかけますが、いつも失敗してしまいます。
そして彼女を探すふりをしながら街を徘徊します。
【転】ZOO のあらすじ③
持ち主のいないような山小屋で、彼と彼女は喧嘩をしました。
たとえば「ZOO」という看板を見つけてとっさに動物園へ向かうことを決めたように、彼女の行動には発作的なものがありました。
ドライブ中に何年も車が通っていないようなわき道を発見して、そこを曲がってみて、という唐突な提案を彼女がしたのです。
道の先には、山小屋がありました。
彼と彼女は車を停めて中に入りました。
彼は彼女の様子をポラロイドカメラで写真に撮りました。
彼女はフラッシュに顔をゆがめました。
まぶしいわね。
強い口調でそう言うと、ポラロイドカメラから出てきた写真を彼の手から取り上げて握りつぶしました。
こういうのは嫌いだわ。
それから彼女は、私のことは忘れてちょうだい、と言いました。
どういう意味かと尋ねると、彼に対して今は愛情など抱いていないのだという意味の話をし始めました。
世間において彼女が行方不明になったのはその日からでした。
長く意味のない演技のはじまりです。
死に物狂いで彼女の行方を追い求める俺、という嘘の自分を作り上げたのです。
【結】ZOO のあらすじ④
彼はエンジンをかけると、車を発進させました。
行先はあの小屋です。
彼は運転席を出て、小屋に入ります。
小屋の地面は土がむき出しでした。
そこに穴が掘られています。
カメラのレンズは穴へと向けられていました。
穴の縁に近づき、上から彼女を見下ろします。
穴の奥の、もはや人間の姿をしていない彼女は、砂埃に覆われ、半ば地中に埋もれています。
ポラロイドカメラに近づき、シャッターを押しました。
穴の奥の腐敗した彼女が、一瞬、閃光に照らされて暗闇の中に浮かび上がります。
音をたててカメラが写真を吐き出しました。
写真を持って、彼は小屋から離れ、車を発進させます。
俺は告白する。
警察へ向かう。
自分の罪を認める。
俺は逃げない。
彼はそのような台詞を言いながら、自分が警察になど行かないことを知っています。
これは、毎日、毎晩、繰り返していることだからです。
結局何も変わらないのです。
いつまでも同じ一日を繰り返します。
彼はしばらく惰性で車を走らせ、道の真ん中で停止させます。
そして車内から出て暗闇を振り返ると、静かに祈りを捧げました。
俺は罪を告白するだろう、と彼の心の中に安らぎだけが満ちていたのです。
ZOO を読んだ読書感想
乙一氏には大きくわけてブラック乙一とホワイト乙一の二つの作風がありますが、この作品は前者のブラック乙一ですね。
ちなみにブラック乙一はダークな暗い作風で、ホワイト乙一はハッピーだったり、切ない作風になっています。
ZOOはなんとも薄気味悪いというか、ほの暗い感じの小説になっています。
主人公は彼女を殺してしまったという事実から逃避し、腐敗していく彼女を写真に撮り続けるという常軌を逸したような主人公です。
しかし、このダークな感じが好奇心となって読んでしまいます。
ラストにどんでん返しとかはありませんが、ダークで薄気味悪い感じがクセになる小説です。
コメント